小説/シャッターの向こう側で 【U'z】#4 せーので、答え合わせの宝探しへ
【あらすじ】
凪と蘭は3月24日に三重県へ友達の墓参りに行く約束をする。
命人と羅希、冷央は三重県の杜樫山へ宝探しを始めるため、電車に乗り込む。
上水流命人 3月23日 木曜日 午前9時20分
愛知県 冬雫町 冬雫駅
冬雫の駅は暗くて、静かで、にぎわっていなかった。
それとは対照的に俺の心はなんだか弾んでいる。とても楽しみだと全身が叫んでいる。
「早く来ないかなあ、、、」
駅前でうろうろしていたとき、「おーい!」と声がした。
「みこちゃん、おはよう!」
「らーくん!れおくんも、おはよう!」
「おはよう!みこちゃん早いね」
「だって楽しみじゃん!宝探し!」
「そうだね!」
僕らは切符を買いに券売機へ行く。
ここまで行くからこの切符だよね、と言い、いやここまで行って乗り換えるからここまでだよ、と言い、それより何時間乗るの、と訊かれ、6時間くらいかなと返し、のんびりとした会話を繰り広げ、15分くらい時間をかけて切符を買った。
後ろを見ると何人かの人が並んでいて、すみませんと頭を下げながら改札を抜けた。
鴨ノ端羅希 3月23日 木曜日 午後0時41分
愛知県 粉野駅(こなの)
「わーい、粉野だー!」
「ごはん食べよ!」
「どこがいいかな?」
今日の移動時間はなんと6時間。その内の3時間が終わった今、僕たちは昼食をとろうとしている。
冷央くんがここまで連れてきてくれた。JR本線新快速とか、JR東海道本線とかまあ僕には到底分からないんだけど、それでもなんとかついていって、その道中もわざわざ電車の中で立って体幹勝負したり、車窓から海だの田んぼだのを眺めたり、とにかく楽しかった。本当に3時間なのかな?っていうくらいに。
「ここにしようよ!」
みこちゃんは看板を指差す。
そこには「まったりや」と書かれていて、どうやら親子丼の店らしい。
「親子丼!美味しそう!」
「ちょうど食べたかったんだよね」
僕とれおくんはもちろん賛成。
「やった!じゃ、入ろっか」
僕らは店内へ向かった。
東雲冷央 3月23日 木曜日 午後1時
愛知県 粉野駅
「「「いただきます!」」」
俺はできたての親子丼を口に入れると、口いっぱい優しい味が広がった。
「んー、おいしいっ!」
「あ、あつっ、あついっ!」
「みこちゃん、気をつけてねっ」
熱いものに強いらーくんに対して、猫舌なのに熱いものをみこちゃんは頬張る。この対比ぶりはとてもかわいい。
なのに、彼らを見ると少し悲しくなってしまう。本当は幸せなはずなのに、心の奥どこかが、幸せの気持ちを邪魔する。
2人は両親たちの友人関係もあって、人生で一番最初の友達で、生まれてすぐに顔を合わせていたらしい。小学校時代も、ずっと仲良しで、奇跡的に6年間同じクラスで。
その6年目に俺が引っ越してきたのだ。もう一人のお兄ちゃんが中学校に上がったからと言って、宮崎から愛知に移動して。
クラスになかなか馴染めないときに2人と会ったから、もしかしたら、俺と仲良くして、二人組から三人組になって、嫌だと思っているかもしれない。
もしも嫌なら俺は2人と離れる。だって、あの幸せな笑顔が2人から消えるのは─。
顔をあげると、2人と目があった。
「箸、止まってるよ?大丈夫?」
「うん。大丈夫」
にっこり笑うと、2人も微笑み返した。
─幸せな笑顔が2人から消えるのは、絶対に嫌だから。
鴨ノ端羅希 3月23日 木曜日 午後6時45分
三重県 電車内
─れおくん、大丈夫かな?
さっきは、暗い顔で箸を止めていたし、なんだか浮かない様子。体調が悪くないならいいんだけどなあ。
三重県に入ってだいぶ経つから、目的地まではもうすぐだ。これから、みこちゃんと一緒に宝探しが始まる。
楽しみだな。僕の友達と、みこちゃんとれおくんと居ると、すごくわくわくしてくる。何よりキャンプって!やっぱり僕ら、ベストフレンドだ!
今から作っていく思い出が、僕らだけの秘密の物語が、忘れられない素敵なものとなりますように。
もっともっと、仲良くなれますように。
そう願っている僕の隣で、みこちゃんは真剣に目の前を見つめていた。
上水流命人 3月23日 木曜日 午後6時48分
三重県 電車内
あと何駅か行けば、明日駅(みょうにち)に着く。
大丈夫だね、覚えてる!俺の記憶力の良さを誰かに誇りたい気分になる。
だんだんと目的地が近づくにつれて、俺の心臓は加速していく。どくどくと、派手な音を立てる。
何か、得られるものが必ずある。
何か、思い出せることが絶対にある。
杜樫山と三重県。これらのワードを聞くのはなぜか初めてではない気もするが。
その答えは、今から分かる。
この電車を降りたら、答え合わせが始まるのだ。
まもなく、明日、明日です、とアナウンスが言う。
「よし、降りよっか!」
「楽しみだね!」
「なんか、緊張してくるなあ」
停車し、ドアが開く。
僕らは顔を合わせて、頷く。
─さあ、行こう、と。
「「「せーのっ!」」」
僕らは同時に、駅のホームの床を踏んだ。
続
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
次回もお楽しみに!
最近 小説の投稿頻度やそもそもここに来る回数が
少ないですが 創作をがんばります!
気長に待っていただけると嬉しいです(*´ー`*)
それじゃあ
またね!
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