「インク水彩の技法書(仮)」の企画草案です
「文具で絵を描く」ことは敷居が低く、馴染みの道具で描ける分だけ気楽で楽しいものです。『万年筆ラクガキ講座』は、僕自身が描けない時期に万年筆という筆記具と出会い、描く楽しみを思い出したエピソードから生まれた本でした。
『万年筆ラクガキ講座』を書いていたのが2017年で、発売が2018年。もう5年たつのですね。5年前は万年筆インクで絵を描いている人は少数で、市場にあるインクの数はその後爆発的に増えて、今も空前のインクブームとなっています。
さて、僕は画家ですので、ラクガキにとどまらず絵画も描いています。
ラクガキで始めた万年筆インクでの描き方も、今は本格的な作品を描くための手法として確立してきました。2021年、22年と個展も2回開催し、現在は日本橋三越STATIONERY STATION内でも原画の常設展示販売をいただいております。
絵画となると、使用する技法も増え、道具やインクの使い方・考え方も変わってきます。それらは枚数を重ねていくほどに、僕の中で整理され、より速く、より直感的に使いこなせるよう効率化されていきました。技法のレベルが上がることで「万年筆ラクガキ」は「インク水彩」となり、絵画の手法として活用しています。そこで…
そろそろこの蓄積された技法を、まとまった形で発表したい。
というのがこの記事の主題です。万年筆ラクガキから5年経過し、インクのユーザーも描き手も増えて「ラクガキの次のステップへ」と思われている方も増えていることでしょう。ラクガキ本を書いた人間として、その次の世界もあるんだよ、ということをお伝えしたいのです。
この記事は、『インク水彩の技法書(仮)』の書籍企画草案です。
出版社の皆様へ>これから成熟期に入ろうとしている万年筆インクブームに、骨太な「インク水彩の技法集を作りませんか?」という提案をさせていただきます。
ご興味を持っていただけたら、お気軽にご連絡・ご相談ください。
未来の読者の皆様へ>この記事をお読みになられて、「読みたい!」と思ってくださいましたら、♡を是非。それとSNSなどで拡散いただけると嬉しいです。よろしくお願いします!
『インク水彩の技法書(仮)』の書籍企画 概要
【2022.11.23 update】
以下、ほぼ企画書です。原価計算や類書・競合書などの各書店さまの売上などはわからないので記載していません。社内でご検討される際はそのあたりを補っていただけましたら幸いです。こうして公開しているので、今後、内容がアップデートされることもあります。
企画趣旨
万年筆インクを使用した作画方法をまとめた技法書。作画の初級者から中級者を対象に、インクを使用して本格的な絵画を描くための基本技法とそれらを組み合わせた応用技法を紹介する。自著『万年筆ラクガキ講座』エイ出版社(現ヘリテージ 2018)を含めて初心者向け・道具紹介の技法書は多数存在するが、本格的な作画のための技法書はまだない。現在のインクブームが成熟期を迎えつつある中、筆記具としてだけではなく「インクで本格的な絵も描ける」という、ひとつの文化を作る一冊を目指し、本企画を提案する。
読者対象
<コア読者層>
万年筆ユーザーで既に万年筆・インクで絵を描いている方
万年筆やインクのファンで、まだ絵は描いていない方
SNSで「#インク沼」になんらかの関わりを持つ方
透明水彩やマーカーで絵に挫折を感じたことがある方
『万年筆ラクガキ講座』読者
サトウヒロシのワークショップ受講経験者
サトウヒロシのSNSフォロワーのみなさま
<周辺読者層>
透明水彩やマーカー、水彩色鉛筆で絵を描かれる方
文具店や文具メーカーのスタッフさま
雑誌『趣味の文具箱』ヘリテージ 読者
文具系イベント参加者
書籍仕様
判型:A5
ページ数:150〜200頁
色数:フルカラー
価格:2000円〜2300円くらいで収めたいです。
著者プロフィール
サトウヒロシ 画家(絵本作家・万年筆画家・装丁家)
福島生まれ、京都で育つ。神戸大学卒。イラストレーターとして活動後、会社員を経て、2015年に独立。絵本作家・万年筆画家・装丁家としての活動を始める。万年筆インクを使った新しい作画方法を追求し、ワークショップやSNSを通してその魅力を広める。2018年NHK Eテレ『美の壺』出演。著書に『万年筆ラクガキ講座』(エイ出版社)、『明日死ぬかもしれないから今お伝えします』(KADOKAWA)など。
経歴と実績の詳細はコチラをご覧ください。
概要・本書の魅力
本来絵画は、作画の基本理論と技術の上に応用的な表現が加わるので、教科書的な読み物としての解説書が必要となる。しかし「インク水彩」においては、少しその順序が変わるところがポイントだ。
「絵を描きたい」という人の多くは、先に「描きたい絵」があり、それを描くためにはどうすれば良いのか?というのが動機で技法書を探すだろう。一方で「インク水彩」を始めよう、という読者の多くは先にインクやペンなどの道具を持っていて、「これで絵も描けるのではないか?」と考えるのだ。つまり、目的が後からついてくる。
本書はその動線から、できる限り自然に読者の目的を達成できる順番を考慮した。「何かできないか」→「この技法を試してみよう」→「できた」→「応用編も挑戦してみるか」という流れだ。それぞれほんの数分で体験できる基本技法と、その成功体験。そこから応用編へ挑戦すると、なんとなくコツがわかり、他のテーマでも描ける気持ちになる。そこがこの本の読者のゴールとなる。
実践してみた方は「なぜ自分がその絵を描けたのか」と、理由が知りたくなるはずだ。それは全編に散りばめたコラムで読むことで解決する。道具の性質、手順や考え方がそこには記載されている。既に実践をした読者は、その内容がよく理解できるだろう。
本書が「インクで絵を描きたい」と願う、多様な読者にとって、「絵画を描く入口」となるよう、心から願う。
目次構成について
本書は前半が基本技法、後半が応用技法としてまとめている。ざっくり言うなら、基本技法を組み合わせると応用の表現ができますよ、という流れである。基本技法のひとつひとつはごくごく短時間ですぐに描けるものであり、初心者がどの順番でも試せる内容となっている。リアルでのワークショップを行うのであれば、基本技法を2、3個拾い、応用編のひとつを主題にすれば、90分のイベントとして成立する程度のボリュームとなる。
応用編は、食べ物、植物、人物、風景、雨や水辺などのシーンなど、使用する技法を分散させつつも、読者が今後描きたいと考えるテーマを色々実現できるようにした。それぞれの作例は作画時間の上限を30分程度に収まるようにする。こちらも読者がどの順番で挑戦しても良い構成になっている。
基本技法はそれぞれ見開きで2頁、応用技法はそれぞれ見開きで4頁を想定。各項目が簡潔に解説されていることが、この本では大切にしたい部分である。
4章では反復することで上達ができる練習方法も記載する。筆使い、水加減、インクで陰影を考えられるようになるコツがそこで修得できる。基本デッサンなどについては、本書では割愛した。
(以下は現在サトウが用意できる掲載原稿です。全てを掲載した場合、ボリュームを大幅にオーバーしてしまうので、企画段階でコンテンツの取捨選択が必要となります。)
目次構成
インクの特徴を知る
1.水溶性インクと顔料インク
2.他の画材との違い
透明水彩/アルコールマーカー/水溶性色鉛筆
3 描く道具選び
・万年筆
・つけペン
万年筆型つけペン
ガラスペン
漫画用つけペン
ドリログ
インクマスカラ
・水筆/刷毛/平筆/ガラス棒
・紙:普通紙/グラフィーロ/水彩用紙
・パレット基本技法:(インクならではの表現、他の画材との違いにも触れる)
<コラム>インク水彩の基本は「水加減」(比較:透明水彩)
(1)狭いグラデーション・水筆[1分]
(2)広いグラデーション・色流し/平筆[5分]
(3)複数色のグラデーション[5分]
(4)色抜きと輪染み[3分]
<コラム>マスキングテープを活用する(種類・カッター)
(5)スパッタリングとスプレー[3分]
(6)ベタ塗り・水筆(小さいエリア)[1分]
(7)ベタ塗り・色流し/平筆(広いエリア)[10分]
<コラム>重ね塗りの順番(染料・顔料・希釈・色)
(8)線・道具別 濃淡(万年筆・ガラスペン)[1分]
(9)線・道具別 利便性(hocoro・水筆)[1分]
(10)線・道具別 均一(ドリログ)[1分]
(11)線・道具別 ランダム(ガラス棒)[1分]
(12)線・道具別 幅広(インクマスカラ)[2分]応用技法(表現に合わせた技法選びと手順)
<コラム>作画手順の組み立て方(下書き→下地→着彩→仕上げ)
(1)ロールパンを描く[15分]焼き目、柔らかさ
(ベタ塗り/グラデーション)
(2)フランスパンを描く[20分]表面の硬さ、エッジ
(ベタ塗り/グラデーション/スパッタリング)
(3)浜辺を描く[30分]奥行きを感じる水面
(ベタ塗り/グラデーション/重ね塗り/色抜き)
<コラム>ホワイトの活用方法(相性の良いホワイト、ハイライト、半調)
(4)雨を描く[20分]奥行きを感じる雨
(ベタ塗り/グラデーション/色抜き/線画)
(5)顔を描く[30分]輪郭線と肌の陰影
(線画/ベタ塗り/グラデーション/重ね塗り)
(6)髪の毛を描く[20分]一本一本まで描いているかのような繊細な表現
(ベタ塗り/グラデーション/色抜き/重ね塗り)
<コラム>絵を描くためのインクの選び方
(7)バラを描く[30分]しっかりとした発色の花びら
(ベタ塗り/グラデーション/色抜き)
(8)猫を描く[30分]もふもふ毛並み
(ベタ塗り/グラデーション/線/色抜き)
(9)1色で風景を描く[30分]作画手順
(下書き/線画/グラデーション/重ね塗り/色抜き)
<コラム>作品のスキャニングと撮影方法
(10)模様を描く[30分]ラメインク・古典インク
(ベタ塗り/重ね塗り/線画)練習方法(繰り返すことで上手になります)
1. 反復練習で上手くなる課題
<コラム>筆とつけペンは両方使えると良い
・三角形 細い線から太い線まで
・葉っぱ 水加減を覚える
2. インクでデッサン
<コラム>鉛筆デッサンとの違いとメリット
・基礎形態(立体の捉え方)
・基礎形態の応用描き下ろし絵本(本書の導入に)
作品見本
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まえがき
あとがき
類書・競合書
現在、万年筆インクで絵を描く本は初心者向けが基本であるため、厳密には類書、競合書はありません。ただ、読者層は重複するので同ジャンルに入る書籍をいくつか記載します。
販売上の留意点、発売前後のロードマップなど
「初心者〜中級者向け」の読者層を想定しているため、普通に出版・販売した場合は「初心者向け」に特化した書籍と比較した場合、それを超える部数を想定しにくいところが課題である。
一方で、本書の特徴である「技法集」としての側面は購買層を広げる可能性を持っている。基本技法は原則として各数分で実践できるため、万年筆インクファンの大多数を占める「文字」を書く層にも需要を期待したい。一般書店に加えて、全国の文具店にも配本できるような施策も有効と考えられる。
また、中級者向けに踏み込むことで、透明水彩や色鉛筆などの絵画の技法書読者層も視野に入れることができるだろう。その場合、装丁を含めた造本は「インクで本格的な絵画が描ける」と印象付けられるようなイメージが望ましい。
類書がないため、発売前のプロモーションの段階で本書のコンセプトが購買層にある程度の理解が浸透していることが望ましい。この企画概要が「公開」されている理由はそこにある。可能であれば、発売の前段階で文具関係のインフルエンサーや文具店、メーカーからの期待値が上がっていることが理想である。
また、発売後の受け皿も必要である。本書のページ数は技法を懇切丁寧に解説や作例を加えていくには限界がある。本書を軸として、関連する道具や補足の動画、作例などがSNSやnote、Youtubeなどのメディアを通して紹介されていくことで相乗効果が期待できる。本記事が掲載されているnoteは、今後それらのハブとして機能させていくことを想定している。
発売後は文具店、画材店、メーカーとの協力関係を作りつつ、リアル・オンラインどちらも視野にいれたワークショップなどのイベントも販促活動としては有効であり筆者は対応可能である。
出版社さまへのお願い
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
本来、こうした企画書であれば原価計算や売上部数、類書の売上データなど数字も加えて作成しなければいけないのですが、そうした情報は今入手できないので、ご興味を持ってくださった場合、各担当者様に各自加えていただく必要があります。よろしくお願い申し上げます。
サトウのTwitterで、本企画のアイデアを投稿したところ、多くの反響をいただいております。それだけ現在の文具市場、インクファンの方々が「インクで絵を描く」ことに興味を抱きつつ、さらに次のステップ(ラクガキの先)に対する期待感が高い証拠なのではないか?と受け止めております。
こちらが発端となったツイートで、想定していたよりもリアクションがあったので、その詳細をその後追加していきました。
応援してくださる方々をリストに手動で追加しています。約2日で178名もの方(11/24時点)が応援してくださっています。
せっかく作るのであれば、本格的なものでありたい。さらに、これが文具だけでなくその外側の世界にも興味関心を持ってもらえるような本になればと考えております。
この企画概要はまだ草案です。もっと良いアイデアもこれから出てくるでしょう。随時アップデートをしつつ、一冊の本になるまで育てていくつもりです。
また、この記事にはまだ入っておりませんが、追って見本ページのサンプルや、作例のサンプルなども投稿していく予定です。ご興味を持っていただけましたら、どうかそちらもご確認の上で、ご検討いただけることを願っております。
本書出版に向けて応援してくださっている皆様へ
大量の文字をお読みくださり、誠にありがとうございます。
もちろん、企画書とは違い、本は絵と写真がメインの読みやすいものになります。そこをご留意いただいた上で、♡のリアクションやSNS上での記事拡散にご協力いただけましたら幸いです。また、「こんなことも本で描いて欲しい」といったご意見などもいただけると嬉しいです。
企画書を公開している以上、皆様のご意見を取り入れながらこの本は成長していくものだと考えております。何らかの形で実現させていければと思います。
どうか、よろしくお願い申し上げます。
よろしければサポートをお願いします!記事充実のため、画材の購入費や取材費にあてさせていただきます。