道端に落ちていた手袋と出会い
道端に落ちてた手袋を拾った。
誰かが忘れたのかな。
踏まれてしまうといけないので、街路樹の枝に引っ掛けておいた。次の日。
「ねえ」
声をかけられて振り向くと、昨日の手袋の持ち主だった。
「それ私の!」
「あ、すみません! 昨日、たまたま見つけて……」
「ありがとう!」
彼女は笑顔で言った。
「私、美月っていうの。あなたの名前は?」
「えと……みつきです」
「そう。みつきちゃんね。お礼がしたいから、今から時間ある? お茶でもどう?」
「いえ、そんな大したことしてないんで……」
「いいからいいから。私が行きたいの。いいでしょ?」
断ろうとしたけど、彼女の勢いに負けてしまった。
喫茶店に入って紅茶を頼んだ。
「はい、どうぞ」
「ありがとうございます」
彼女がカップに口をつけるのを見てから私も飲む。
おいしい。
「それで、何かお礼をしなくちゃね。何がいいかな」
「あの……じゃあ、友達になってくれませんか?」
「……え?」
「いや、その、私と仲良くなってくれたら嬉しいなーって。だめですか?」
美月さんはきょとんとしていたけど、すぐに笑顔になった。
「いいよ。よろしくね、みつきちゃん」
それからは毎日一緒に遊んだり勉強したりした。
楽しい日々だった。
高校も一緒だった。
そしてある日、彼女に告白された。
「好きです。付き合ってください」
「えっと……ごめんなさい」
「どうして? 他に好きな人がいるとか?」
「そうじゃないんだけど……」
「もしかして……男?」
「うん」
「誰よそいつ! 言ってごらんなさい!」
すごい剣幕で詰め寄られた。
「いや、幼馴染なんだけどさ」
「幼馴染?」
「そう。家が隣同士で仲良かったんだ。でも今は疎遠になっちゃってて……」
「そうなんだ……」
「だからごめんね」
「……分かったわ。変なこと聞いてごめんね」
「ううん。こっちこそごめん」
その後、美月さんとはあまり話さなくなった。