どうして、「自分ばかりが大変」って思えるんだろう
時々「私ばっかり大変」という人がいるけど、その思考回路が不思議で仕方がない。
どうして、他の人も大変なんだって気が付かないんだろう。
どうして、自分ばかり特別だと思うんだろう。どうして、自分は他と違うと思うんだろう。
どうして、自分が特別な存在じゃないって気付かないんだろう。
私には理解できない。
私は今まで、自分の境遇を恨んだことなんか一度も無い。
だって、それは私にとって当たり前の事だから。
私の家は貧乏だ。
お父さんとお母さんは毎日朝早くから夜遅くまで働いている。お祖父ちゃんは昔ながらの職人さんで、今でもまだ現役でお仕事をしている。
おじいちゃんは頑固な人で、私達家族にお金を使うことを嫌った。だから、私達には物心ついた時から玩具とかゲームといったものは何一つ無かったし、外で遊ぶことも許されなかった。
テレビなんて以ての外だ。あんな薄っぺらい箱の中に閉じ込められた人間が、一体何をするっていうのだろう? きっと、アニメや漫画を見たり、ゲームをしたりするに違いない。そんなのおかしいよ! だから、私は家にある本を読んだ。図書館に行って本を借りてきて読んだ。そして思ったのだ。こんなつまらない世界に生まれなくて良かったと。
小学校でも同じような事があった。私が読む本は全て絵本で、友達はみんな漫画雑誌だった。だけど、そんな生活の中で、私だけが彼等と同じ事をしなかった。それがどんなに凄いことか、きっと誰もわからないだろう。
しかし、いくら本が面白くても、それを教えてくれる人もいないし、読んでくれる人もいなかった。
学校の図書室にあった本の貸し出しカードを見ると、いつも同じ名前があって、その人は頻繁に借りていた。私もそれに負けじと借りたけれど、どうしても最後まで読み切ることができなかった。
今思えば、あれは本当に勿体無いことをしたと思う。
あの本を読んでいれば、もっとたくさんの知識を得ることができて、もっと面白い物語を知ることができたはずだ。
小学校の卒業文集に書いた将来の夢は「作家になる」だった。
別に誰かに強制された訳じゃない。ただ、漠然とそう思っただけだ。
だけど、実際に作家になってみると、思っていたよりも大変だった。
まず、小説を書いているということを誰にも知られてはいけない。もし知られたら最後、学校に通報されて、親に連絡されてしまうからだ。そうなったら終わりだ。
次に、締め切りがあるということ。それも、いつ終わるのか全く分からないような厳しいものだ。それでも書き続けなければならない。一日でも休むと読者が離れてしまうらしい。
それから、作品が評価されることが無いという事。
でも、自分ばかりが大変だとは思わない。だって、これは私にしかできない仕事なんだから。