唇がをかんだから唇がいたい
食事中にうっかり唇を噛んでしまった。
「いたっ」
と思ったその時はもちろん痛かったが、それからもずっと唇が痛い。
何かを食べたり、飲んだりで口に入れると常に痛いし、そうじゃなくてもずっと気になる。
いつもよりイライラしやすく、疲れやすくなった気もする。
もしかして病気だろうか? そう考えてネット検索してみると、唇の痛みは『口唇ヘルペス』という病名だった。
ウイルス性で人から人へ感染するらしい。
しかも症状が治まっても再発しやすいらしく、私はすぐに病院に行った。
医者からは2週間ほど薬を塗っておけば治ると言われたのでホッとした。
でも、その薬というのがちょっと厄介だ。
塗ったあとしばらく経たないと効果がないらしいのだ。
だから1日2回、朝と夜に塗り直す必要がある。
面倒くさいなと思いながらも、とりあえず言われたとおりに薬を塗ることにした。そして次の日の朝、鏡の前で自分の唇を見ると……なんと! 唇の右端が腫れているではないか!
どうやら私が思っていた以上に私の唇は弱かったようだ。
そういえば子供の頃からよく唇の皮を剥いていたっけ。
大人になってからはさすがにそこまで頻繁に皮を剥くことはなくなったけど、それでも時々はやっていたかもしれない。
それが今になってこんな形で出てくるとは……。
それにしてもこの状態はかなり恥ずかしい。
まるでキスマークをつけてしまってそれを隠そうとしているみたいだ。
別に彼氏がいるわけでもないのに。
まあ、とにかく今は早く治すことが先決だ。
そう思って薬を塗り直そうと鏡の前に座ると、また問題が発生した。
今度は左の端っこが赤くなっているではないか! まさか……と思ってもう一度鏡で確認すると、やはり同じ場所が赤く変色している。
これはもしや……。
慌てて洗面所に行き、洗面台の蛇口をひねって水を出し、そこに顔を近づけて鏡で確認した。
やっぱりそうだ。
私は唇を強く噛みすぎて血が出ていたんだ。
それで唇が荒れていたのか……。
そう思ったらなんだか急に恥ずかしくなり、顔が真っ赤になった。