彼の地へ
私たち夫婦は、結婚の際お互いに合意していたことの一つに
「持ち家はいらない」
という考えがありました。
私はもともと、一つの土地、家に縛られるのが嫌だったし、色々な土地、環境で暮らしてみたい、という願望もあったので、自宅を購入するより、毎月定額の家賃を払って家を借りる方が自分にはあってると思っていました。
夫は、自分の両親が借金をして購入した一戸建ての実家を、入居して数か月後に自分が誤って壁に穴をあけてしまった、という経験から、自分が大人になってやっと手に入れた新築の家を、いとも簡単に子供に壊されるとしたら、購入したくない!と思ったようです。
また、以前から報道番組で取り上げられている
「葬儀場建設反対!」「大型レジャー施設建設反対!」「〇〇誘致反対!」
等の住民反対運動を目にするたびに、「嫌なら引っ越せばいいのに」とも、思っていたようです。
その他にも理由はいくつかありますが、「住宅購入」はリスクが高い、という考えの方が強かったのです。
当時、私たち家族が暮らしていたのは都内にある2LDKの賃貸アパート。最寄駅から徒歩で30分。私も夫も電車通勤だったので、最寄駅までは自転車で通っていました。
結婚してからずっと、この賃貸アパートに住み続けていましたが、駅から遠いし、子供が成長すると手狭になるしで、2年ごとの更新のたびに引越しを考え、近場で物件を探していました。
ですが、家賃も安く(家賃&管理費で¥75,000/1か月)、日当たりも抜群。息子の通う小学校も徒歩5分と近いしで、結局、この家よりも気に入る物件には出会えず、「もう、このままこの家に一生暮らしてもいいかな」と、思うほどに気に入っていたのです。
しかし、転機が重なり、近場ではなく少し離れた土地へ目を向けるようになりました。(とはいえ、夫が仕事に通える範囲、という条件はありましたが・・・)
都内郊外での物件探しは、正直ワクワクしませんでした。こんなに大好きな今の家を出ていくのにふさわしいと思える土地、家は、検索範囲を多少広げたところで見つからなかったのです。
「いっそ、東京近郊ではなく地方移住でもしちゃうか?!」
おもしろ半分、現実逃避的にネットで地方の物件を探していたら、気になる地域が見つかり、
「NPOふるさと回帰支援センター」(東京都有楽町の交通会館8階にあります)
「移住セミナー開催!」
など、様々な情報が目に飛び込んできました。
そして、長野県のとある地域の「移住セミナー」が翌週開催することを知り、参加することにしたのです。
セミナーは、金曜日の18時から、有楽町で開催。
私はこの日、午後の仕事を休みにし、息子と学校が終わってから一緒に行くことにしました。
そして、普段は毎日終電まで仕事をしている夫が、その日は会社が休日のため(とはいえ、会社に出て仕事をしていましたが)、18時なら行けるとのこと。思いがけず3人そろって移住セミナーに参加することになりました。
セミナー当日、3人で参加したセミナー。
内容は割愛しますが、プレゼンでスクリーンに映し出される大自然の風景が、本当に美しくて・・・! 一度、実際にこの目でこの風景を見たいっ!と思ったのです。夫、息子も同じ思いだったようで、翌日の土曜日、家族で行ってみようか?という話になりました。
そして、移住セミナー終了後。
私はセミナーでプレゼンを担当していた移住の先輩にあたる女性に声をかけました。
私:「明日、家族で現地を訪れようと思うのですが、プレゼンで紹介されていた場所はどこですか?具体的な住所とか教えてもらえますか」
女性:「明日、行くんですか?! 私は今日はこのまま東京に1泊するので、明日は現地を案内できないのですが、友人を紹介しますので、待ち合わせしてぜひ、ゆっくりと見て来てください。」
そう言って、女性は現地の友人の方にその場で電話をし、私はその友人の方と電話でお話をして、時間と待ち合わせ場所を決めました。
そして、翌日の土曜日。
私たちは、彼の地へ初めて訪れ、充実した時間を過ごすことになったのです。
つづく