69へ
テキストが届いた。
”日曜日69へ行くよ! みんな一緒に行こうよ〜”
69とはコナ側、ワイコロア近くにあるビーチ。
ヒロ側に住むハワイアンは時々、
さんさんと輝く太陽とターコイズ色の海と白い砂を目指す。
(ヒロは雨が多く、ほとんどのビーチは溶岩と冷たい海水なので)
地図にはない、ローカル率の高いこのビーチは、白砂のすぐそばに
たくさんの木が茂っているので、日陰が多く1日遊ぶのにとてもいい。
「ヴァーナがね、まだ69に行ったことがないというのよ。
だから決めたの。
今からヴァーナがしたことないことをみんなでしようって。」
末期ガンと宣告されたヴァーナ。
まだ動けるうちに、みんなでいろんなところに行こう、
たくさん楽しい思い出を作ろう、というのがアイデアだった。
先日のルアウ同様に、ヒロからもコナからも親戚友人が集まった。
木陰に椅子を置き、簡易テーブルの上には、それぞれが持ち寄った
食べ物が並ぶ。 クーラーには飲み物もいっぱいある。
ヴァーナもニコニコしながら木陰に座っていた。
みんなが入れ替わりヴァーナの隣に座っておしゃべりした。
子供達は相変わらずどこの海も自分の海のように冒険している。
最後に全員で写真を撮った。
ターコイズ色の海をバックに、ハワイの明るい光を浴びて
弾けるような笑顔で。
人はみんないつか向こうの世界へと旅立つ。
後から行く者たちが今、旅立つ人にできることは、
笑顔で送ることかもしれない。
ハワイの人たちは生まれた瞬間から旅立つ時まで
みんなが寄り添っている。
そう、あのおきまりの言葉を掛け合って。
「Do you need anything?」
(なにか必要なものはない?)