ハリケーンの支度
巨大ハリケーンがやってくる。
太平洋の真ん中の、小さな小さな島ハワイ。
慣れたものとはいえ、今回のように大きいのが来る時は
支度をするのだ。
去年は隣近所の窓ガラスに”X”のテープが貼られたが、
効果なしと判断したのか、今年はやめたようだ。
わたしも車のガソリンを入れたり、ランタン用のガスを余分に買った。
うちにはオイルランタンも二つあるので、大きな明かりがこれだけあれば
大丈夫。
カセットコンロのガスもある。
バーベキューグリルの炭も。
お水も5ガロンが二つあれば、しばらくいける。
庭の飛びそうなものを片付けたり、地面にしっかり固定した。
あとは氷でも作っておこうか。
普段からよく突然の停電があるので、電気のない過ごし方には慣れている。
一番の心配といえば、隣のジャングルの大木が倒れないかどうかだ。
先日は手のひらほどもあるアボカドがたわわになっている大きな枝が、重みでポッキリ折れた。
道だってよく木が倒れていて通れないことがある。
だからしばらく電気がなくても動けなくても暮らせるような、そんな支度が必要なのだ。
でも案外こういう時間が好き。
溶岩にしても、巨大ハリケーンにしても、予期せぬ何かがやってくるのを
待っている時間だ。
到底太刀打ちできないような大いなる自然の脅威を感じる時、わたしの中で
ワクワクとする何かが呼応する。
だから太古の人々は、自然の動きを感じるように歌ったり踊ったりしたんじゃないかな。
わたし達は一つなんだ、やはりそう思う。
空が暗くなり、雨が激しくなってきた。
大きな渦がいよいよ島に迫ってくる。