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ニチアサの話がしたい vol,207


■今週のガヴ

・出会いと別れのロードムービー

 前回、その鮮烈すぎる初回放送で一気に話題をさらった『仮面ライダーガヴ』。現在、筆者は現在夏休みで海外にいるため、その2話となる今週の「幸せザクザクチップス」は、リアルタイムではなくVPN経由によるTTFC配信にて視聴したのだが……エッ!!ショウマ、幸果のとこからも去るんかい!!前回の始とのエピソードは、ショウマがいかに人間界のお菓子を以て「仮面ライダーガヴ」に変身するに至ったかを語る「エピソード0」的な「食感」を強めるために、敢えて置き手紙による切ない別れが用意されたのだとばかり思っていたが、まさか2話でもこの「行き倒れのイケメンが拾われる→拾い主の善意にショウマが触れる→人間の幸せを守るためにショウマは仮面ライダーとなって戦うが人間にはバケモノ扱いされる→置き手紙を残して新天地へ去る」というフォーマットがまんま踏襲されるとは思っておらず、いい意味でかなり予想を裏切られた。無論、幸果役の宮部のぞみさんはTTFCで配信中の「スタートアップ!!仮面ライダーガヴ キャストボイス」にて「一年間がんばります」と言っているし、今回初オンエアされたOP映像(キャストによる歌詞のリップシンクやダンスが新鮮!)でも彼女は仮面ライダーヴァレンに変身する辛木田絆斗と並んでメインキャラとして映されているので今回で出番が終了ということはないだろうが、後に彼女と再会するにしても、一度巡り会った拠点となる場所やキーパーソンと一度離れるというのはシリーズの中でも初の展開なのではないだろうか。

 その上で驚きだったのは、ここまで1話と同様のフォーマットを用いながらもまったく二番煎じ感がなく、むしろ同じだからこそ始とは全く違うタイプの「ショウマの拾い主」である幸果の個性が際立ち、お菓子と「人の幸福」を巡るショウマのロードムービーとして成立しているのが素晴らしかった。前回ショウマと別れた始も、母の仇であるグラニュートを追う絆斗の聞き込み調査の相手役として母親と再び登場するなど、(未だガヴをグラニュートと同じバケモノ扱いする母親に対し「違うよ!一人は僕を助けてくれたんだ!」とショウマを庇いつつ、詳しく調べを進めようとする絆斗には「よく分かんない」と一転して子どもっぽい返答をし、正体を隠して人間界に馴染もうとしていたショウマを追跡から守ってやるところに、始の賢さとショウマを思うやさしさが感じられて泣ける)ショウマの軌跡を辿るように絆斗が動くことで、一話完結型風のフォーマットの中にも縦軸が通り、2話ラストでついにガブを目撃した絆斗とショウマの出会いを予感させるところにも話運びの上手さをひしひしと感じる。

・みんな幸せなのがいい

 前回同様、お腹を空かせて倒れていたところを甘根幸果に拾われたショウマは、彼女が経営する何でも屋「はぴぱれ」でシャワーとお弁当、そしてお菓子を恵んでもらう。甘い柔軟剤の香りがするふわふわのタオルを綿飴と勘違いして顔を突っ込んでタオルをくわえる、まさに「子犬系」なショウマの仕草が可愛らしく、ポテトチップをつまむごとにお腹のガヴから生まれてはズボンの裾から出てきてしまうザクザクチップスゴチゾウを幸果にバレないように隠すくだりも楽しい。ちなみに我が家の3歳の甥っ子的にはこのショウマがお菓子を食べるとお腹からゴチゾウがボロボロと出てきてしまうのが無性に楽しいらしく、何度もそのシーンを見返しては「また出ちゃった〜」と爆笑している。「予期せぬ生理現象」にツボる3歳ならではの反応が見ていて楽しい。

 ショウマは「不審者」の自分に親切にしてくれた幸果へのお礼として、彼女の友人である田中梨瑚「りっつん」から依頼された引越しを手伝うことに。人並外れた怪力を持つグラニュートであるショウマは引越し現場で大活躍。あっという間に完成した新居にりっつんと抱き合って喜ぶ幸果の笑顔を見て、ショウマは誰かの幸せのために働く幸果に「かっこいい」と憧れと尊敬の眼差しを向けるのだった。「みんな幸せなのがいいと思うんだよね」と、結構壮大なことをあっけらかんと言って笑う懐の広さと明るさが魅力の幸果だが、お菓子の話をしてくれた最愛の母を喪い、ポテトチップも満足に食べられない厳しい家庭から家出をしてきたのではとショウマの事情を察したり、一冊のノートとペンを渡して食べたいものや食べたものの記録をつけることを提案するなど、ショウマの中にある寂しさや孤独にいち早く気付き、ほとんど無意識に彼が幸せになるための手を差し伸べる幸果の繊細な感性や懐の深い優しさもとてもいい。かと言っていわゆる「聖母」のようなキャラ造型ではなく、むしろ真逆のギャルというのが捻りが利いていて面白く、特にりっつんと「引越しといえば引越しそば!」と言いながら「海鮮スンドゥプそば」なる超変わりダネのカップ麺をすするシーンは、意外と礼儀やしきたりを重んじつつ、しかしそのやり方はあくまで自分流という「ギャル」の解像度がめちゃくちゃ高くて笑ってしまった。公式サイトでは「敵を倒していくこと以外に、ショウマがこの世界で暮らしていく上での目標、道しるべようなもの」としてこのノートが考案されたと書いてあったが、「後で読み返した時、なんとまた幸せになれる」という幸果の言葉と共にこのノートが『ガヴ』物語に加えられることにより「食べても栄養にならず、その場限りの愉悦だけで儚く消えていく」という刹那的な印象のお菓子に「幸せなお菓子の記憶は一生の思い出になり、その豊かな記憶は心の栄養になる」という恒久性を与えることになっているのが本当に素敵だ。

・登場!ストマック一族

 そして2話で忘れてはいけないのは敵組織となるストマック家の登場だ。仕入れ統括を担う双子の姉弟のシータとジープ。技術開発の次男ニエルブ。(演者の滝澤諒さんは『Dancing☆Starプリキュア』The Stageのキュアロック役でお見かけしていたので今回の登板にはビックリだった。滝澤さんおめでとうございます!)菓子製造担当の長女グロッタ。そしてストマック者の現社長である長男ランゴ。『キングオージャー』で活用されたリアルタイム合成を使って描かれる美しく退廃的なゴシックな世界でそれぞれの「仕事」に人間の姿で勤しむ兄妹たち。擬態が面倒だったのかニエルブは最初から怪人態で登場していたが、時折ガラスや鏡に彼らの「本当の姿」が映り込む演出にもドキッとさせられる。

 彼らの会話から得られる情報は断片的だが、要するに彼らの父親でありストマック社の先代の社長は、かつて人間である井上みちると結婚。みちるはショウマを産むが、みちるはヒトプレスにされ、ショウマはグラニュート界を追われる身に。先代社長も命を落とし、長男のランゴが後を継いだのだろう。シータが「あの女」と呼んでいるのを見るに、兄妹は人間であるみちるを疎み、裏切り者である父親を殺害して企業統一を図ったように思えるが、ショウマが人間界で生き延びていることや、ゴチゾウを得て仮面ライダーに変身できるようになっていることまでは知らないようだ。ここ近年、「変身するアイテムや力は元を辿れば敵と同じ」くらいの関連性だった仮面ライダーと敵組織の関係だが、『ガヴ』の場合は主人公がそもそも敵家族の血族であり、人間たちを闇菓子の原材料として捕らえていく兄妹たちを討ちにいくという形で、初代仮面ライダー並みにがっつりと「同族殺し」を描く気マンマンなのがすごい。

 ではストマック家のメンバーは全員が冷酷なロボットのような人物なのかといえばそんなこともなく、兄妹で軽口を叩き合ったり「ストマック家を盛り立てていこう」と一致団結していたりと、わりと仲良さげなのが面白い。シータを演じる川﨑帆々花さんいわく、「悪役も含めキャラみんな、かわいいな、愛おしいなと思うところがある」(「スタートアップ!!仮面ライダーガヴ キャストボイス」より)とのことなので、飯もクソマズそうだったグラニュート界で(おそらく)唯一の嗜好品である闇菓子を製造し、一族繁栄を目指すストマック家の今後の兄妹愛(?)にも注目していきたい。

・幸果さんみたいに人を幸せに

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