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ニチアサの話がしたい vol,215
■今週のガヴ
・ニチアサの無い一週間
薄々勘づいていたが、ニチアサの無い一週間は長い。とてつもなく長い。会社に行き、仕事をこなし、酒を飲み、休日はイベントに参加し、さあそろそろニチアサかな!と思うと「まだ火曜日!?」てな具合だ。先週金曜日に「劇場版 風都探偵 スカルの肖像」が公開されていなければ深刻なライダー不足で行き倒れていたかもしれない。Wとおやっさんに感謝だ。
そんなこんなで「やっと観れる~!」という感慨の中で始まった今週の『ガヴ』10話(もう10話!?)「特盛り!キャンディ砲!」。ハロウィン味の強かった前回から一転して、きらりや街の子供たちを次々と攫ってはケーキ屋ごと姿をくらます不可思議なグラニュートを追うサスペンス風の1話に仕上がっており、これまで関わりの少なかったショウマと絆斗が行動を共にすることで、彼らの距離がグッと縮まる回でもあったのが特徴と言えるのだが、お互いライダーになれることは秘密にしているため、ゴチゾウを使う時や変身する前は一旦二人がそれとな~く別行動をし出し、ライダーの姿になってから再合流するという何ともややこしい過程を踏んでいるのが『ガヴ』らしい一捻りで面白い。
・“出来損ない”じゃない
ニエルブからもらった対赤ガヴ用お菓子溶解照射機をグルキャンで突破されたシータとジープは後がなくなり焦りに焦るが「仕入れの約束だけでも守れば交渉する余地ができる」とまさにギリギリの精神状態のサラリーマンの如き思いつきで、赤ガブ撃破ではなく「質のいいヒトプレスを5ケース納品する」ことに集中すると決め、「バイトくん」に効率アップを要請する。「ランゴ兄さんに示さなきゃ……私たち、俺たちは“出来損ない”じゃないって!」そう言って怯える二人の姿は何だか痛ましさすら感じさせ、かつて眷属を生み出せないショウマを「出来損ない」として猛烈にイビリ続けたのは、本心から弟が憎かったというよりも、ショウマに「出来損ない」のレッテルを貼り続けることで、自分たちはコイツとは違うという安心感を得るためだったのだろうな、というところまで透けて見えて、そうしなければ自尊心を保てない環境で生まれていなければ、この双子にもまた違った未来があったのだろうなと同情を禁じ得ないシーンでもあった。
・何が幸せだ、外道野郎
シータとジープに効率化を要請された「バイトくん」ことグラニュート・ヤードは、ターゲットを街の子どもたちから幼稚園に変え、園内でお菓子を配り、その園の児童(と、おそらく先生たちも)全員をヒトプレスに変える作戦に出ていた。ライダーの怪人が幼稚園や児童館など、子どもが集まっている場所を襲うというのは昭和の時代から結構よくあるシチュエーションではあるのだが、ヒトプレスにされるということがいかに残酷なことかがここまでに「勘弁してくれ」と思うほど丁寧に描かれてきたのと、筆者自身にまさに幼稚園に通う年齢の甥っ子がいることから、これまで以上に恐ろしい作戦に思えてならなかった。また、これは柴崎監督のディレクションだと思うが、園児たちがいなくなった教室には食べかけのお菓子や色とりどりのプラスチックコップが円卓に残され、「きっと子どもたちは近所に越してきたケーキ屋さんがお近づきのしるしに持ってきてくれたお菓子を楽しく食べている最中だったんだろうな」と思わせる背景作りが余計にゾッとさせられる。もちろんこれはフィクションだし、最後にはライダーたちが助けてくれるとは分かっているものの、もしもこの子どもたちの中に自分が甥っ子がいたら……と思うとうっかり発狂しそうになるくらい怖かった。
聞き込みによる目撃情報や道に残された不自然な轍を追って、ヤードが凶行を働いた幼稚園を探し出したショウマと絆斗。互いに「早くあいつを倒さなきゃ。でも今は変身できない……」と逡巡している矢先に、廊下の資材を倒してしまうショウマ。物音に気付き「誰だ!」と声を上げるヤードに「(お、ま、え!何やってンだ~!!)」と顔の圧と口パクで伝える絆斗と、「ご、ごめんなさい……」と拝むように手を立てて弱々しく謝るショウマに、シリアスなシーンながら2人の関係性というか今後2人が繰り返していく匂いみたいなものがよく感じ取れる。「仕方ねえ、奴は俺は引きつける。その間に逃げろ」と、ショウマを人間だと思っている絆斗は囮を買って出るが、早く変身したいがあまり「分かった!気をつけてね!」と踵を返すショウマを見て「アッサリ逃げたな……」と拍子抜けするシーンも、二人の事情を知っている視聴者にとってはある種コントのようで微笑ましい。
大量の子どもたちのヒトプレスを握りしめ「俺の菓子で幸せにしてやったんだ。感謝してほしいねェ!」と宣うヤード。その中にきらりの姿を見つけた絆斗は大きく目を見開く。「何が幸せだ……外道野郎」そう言ってヴァレンに変身する絆斗。湧き立つ怒りを爆発させるのではなく、ヤードに向かって静かに吐き捨てるクールな姿がカッコ良い。と、そこに「ヴァレン!俺も手を貸すよ!」とガヴが合流し、「先輩!」と驚きと喜びの混じった声を上げるヴァレン。どちらかと言うと変身前は絆斗がショウマの世話を焼きがちだが、変身後は「かっこいい先輩とがんばる後輩」として二人の上下関係が入れ替わるのがたまらなくオツだ。
・グルキャン共闘!
カラフルな遊具があちこちに見える園庭でのアクションシーンでは、「宇宙船 vol,186」の特写にて「命中してもグラニュートに決定的なダメージを与えることはできない」と書かれていたゴチスピーダーに乗ったゴチゾウが、ヤードの目に直撃するというナイスアシストを決めてみせるのがまずうれしい。喜びに沸きながら落下してくるグルキャンゴチゾウを、ガヴがお腹のガヴで受け止め、グルキャンフォームになるくだりは、(今は危険なので決して推奨されていないとは思うが)アメリカの映画やアニメなどでピーナッツやポップコーンを上に投げてから口でキャッチする食べ方を彷彿とさせ、ゴチゾウ目線のカメラアングルも含めて何とも楽しい。先週に引き続き二度目の登場となるこのグルキャンフォーム。前回とは違い今度はヴァレンの隣で変身するため、その規格外のデカさがより一層分かりやすく、グルキャンになった先輩を見てヴァレンが二度見して「うぉお……!?デカくなったな……」と呟くところなどは、ヴァレン役の鍛治洸太朗さんの芝居と絆斗役 日野友輔さんのアフレコで作り上げられた絆斗の生っぽい反応がめちゃくちゃ良かった。
巨大なグルキャンとエネルギッシュなヴァレンに押されたヤードは(ヤードもかなり重量のありそうなスーツなのに、彼を掴んで投げ倒す鍛治ヴァレンさんがすごい!)背中の貝の中に幼稚園を収納。巨大化して一時退却を試みる。「させるか!」とヴァレンヴァスターを撃ちまくるも、ヤードの硬い外殻はビクともしない。「ダーーーッ!!もッ全然壊れねえ!!」とヤキモキするヴァレンに、ガヴは「これならどう?」追い菓子で出現させたブルキャンガトリングを貸す。ヴァレンも「おンも~~!」と叫ぶほど超重量だが、威力は抜群のガトリング砲でヤードの足に一撃喰らわせることに成功し、ガヴはバクキャンゴチゾウの力で作り出した二双のキャノン砲を両肩に装備。ガトリングを凌ぐ強力なキャンディ型の大砲で見事ヤードの外殻を破壊させる。そこから溢れ落ちたヒトプレスを、ヴァレンがチョコレートの足場を作り、滑りながら華麗に回収。全てのヒトプレスをヴァレンが集め終わるまで、ガヴがヤードの気を引き時間を稼ぐなど、二人の連携プレイが鮮やかだ。最後はガトリングとキャノンの合体技を放ち、ヤードを大爆発させるガヴ。ロケ地を岩船山に移して撮影した甲斐がありすぎる、大迫力の二段階ナパームがド派手に打ち上がる。考えてみれば別にガトリングだって最初からガヴだけが使えば済む話なのかもしれないが、ショウマと絆斗の距離が縮まるとの同様、ガヴとヴァレンの共闘を盛り立てるために敢えてガトリングをヴァレンに撃たせる演出が心ニクい。
・正体バレ前限定の美味しさ
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