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ニチアサの話がしたい vol,218


■今週のガヴ

・地獄博覧会?

 玩具の販売に先んじて情報公開されていた、ショートケーキをモチーフにしたガヴの強化形態「仮面ライダーガヴ ケーキングフォーム」。その誕生へと繋がるエピソードの前編となるのが今週の仮面ライダーガヴ13話「約束の手作りケーキ」だ。

 物語は7話以来、ちょっとお久しぶりの登場となった大叔父デンテとショウマのシーンから始まる。人間でありながらライダーへの変身能力を得たヴァレンだが、そもそもそんなことは可能なのかとショウマが問うと、デンテはグラニュートの力を体内に宿す改造はできなくはないが、人間がそこまで思いつくとは思えない。ヴァレンを改造したのはグラニュートなのではと見立てる。しかし絆斗がグラニュートに対し強い恨みを持っていると知っているショウマは、彼がグラニュートと手を組むことは絶対にないとこの考えを一蹴。そこに間髪を容れず、絆斗の母親の写真を見たショウマに頭痛が起きた原因は、ショウマの記憶がところどころ抜け落ちているためだとも言われ、最序盤にも関わらず思わずたっぷり時間をかけて長いため息を吐いてしまった。つまり、もし本当に絆斗を改造した人物……酸賀の正体がグラニュートなら、絆斗には「グラニュートを恨んでるのに結果的にグラニュートと結果的に手を組んでしまっている」という本人すらまだ知らない地獄があり、記憶が一部損失しているショウマには、絆斗の母親に関連して本人も覚えていない行動をしてしまったかもしれない地獄があるということだ。これまでも多種多様な地獄を見せてくれてきた『ガヴ』だが、それらはほんの序の口に過ぎず、これからまだまだ各キャラクターたちから個性豊かな地獄が絞り出されてくるのかと思うと震える思いである。なに?ここ地獄博覧会?

・いつかの誕生日パーティー

 はぴぱれに戻ったショウマは、幸果が近所の子ども会のクリスマスパーティーのために作ったブッシュ・ド・ノエルを試食して大感激。ブシュエルゴチゾウをポロポロと溢しながら「そうか!これが『ケーキ』だったんだ!」と立ち上がる。グラニュート界で母・みちると幽閉されていた頃、ストマック兄妹たちがシータとジープの誕生日パーティーを行うの窓の外から眺めていたショウマ。相変わらずグラニュート界の食事は色合いも食材も不気味なものばかりだが、琥珀糖のようなデコレーションで飾られた四段重ねの黒いバースデーケーキはその中でもどこか輝きを放っており、それらを丁寧にひとかけづつ皿に取り分けてもらい、美しいラッピングを施されたプレゼントも受け取ったシータとジープは「ありがとう!兄さん、姉さん!」と無邪気に喜ぶ。回想ではあるが、初めて描かれた一家団欒の風景に「ストマック家、仲良しでいいなあ」とほっこりしつつ、この場に父親であるブーシュが居ないということは、人間であるみちるを娶った彼は、この時点ですでに自分の子どもたちの誕生日会にも招かれないレベルの「一族の爪弾き者」とされていた可能性が高く、「純血主義のランゴはこうやって『信頼できるのは一族を裏切らない家族だけ』という思想を妹や弟たちに刷り込むんだな……」とゾクッとさせられるシーンでもあった。

・なぜ、ケーキは特別なのか

 さらにこのショウマの思い出には、シータとジープへのせめてものお祝いにと摘んでいった花を忌々しげに踏みつけられ「あっち行け!」と邪険に扱われたという苦すぎる記憶も付随している。あのような生活環境の中「あの二人はあんなに祝われているのに、何で僕たちはこんなひどい目に遭わないといけないんだ!」と妬むどころか、「自分もシータ姉さんとジープ兄さんの誕生日をお祝いしてあげよう」と、二人に歩み寄ろうとしたショウマの心はどれだけ清いんだよという感じだし、シータとジープも彼を完全に無視するのではなく、近寄ってきたショウマに対し発作的に彼を傷つけるような言動を発作的に取っていることも何か意図を感じる。単に子どもみじた「意地悪」の表現かもしれないが、本編後半のバトルシーンで、ショウマ自身が二人に「なんでそんなに俺のことが憎いんだよ!」と直接問いかけた際、「お前のせいで私たちは引き離される!」と今回の結婚騒動のことも大きな原因としつつ「お前のせいで私たちがみじめになるの!」「お前なんか、最初から存在しなきゃ良かったんだ!」などとも言っているところを見ると、これまで二人が幼い頃からショウマを疎んできたのは「人間との混血だから」だけではなく、ショウマの何かが彼女たちのコンプレックスを猛烈に刺激させるからなのではないかとも思ったりするのだが……いや、これは筆者の考えすぎかもしれない……。いずれにせよ、「大切な人と分け合って食べるから『ケーキ』は特別なのだ」ということにショウマが気付くきっかけとなったのは、記憶の中のシータとジープの珍しく幸せそうな姿であり、それはシータとジープにとっても真実だったのだろうと思うと、彼女たちとの衝突の中で生まれる強化フォームのモチーフが「ケーキ」であることがより一層意味を帯びてくる気がする

 ストマック家のシーンで言うと、グロッタがランゴに「シータとジープ、家出したみたいよ。連れ戻さなくていいの?」と訊ねた時の何とも言えない厳しい口調もすごく印象的であった。それは業務や政略結婚の計画に支障が出るからというより、年の離れた下の子たちが家出をした原因を作ったランゴを若干責めるような気持ちと、何より家族としての心配ゆえの声色に聞こえたのは、筆者の「彼らの中にも本当の兄弟愛はあってほしい」という願望だけではないと思いたいし、この一言でグロッタの胸中はいかなるものなのかをここまで想起させる、グロッタ役千歳まちさんとランゴ役塚本高史さんの掛け合いのお芝居も素晴らしかった。

・岸くん、おかえりなさい!

  幸果に「ウマショーにもできる」と言われたショウマは、幸果のリクエストでショートケーキ作りに挑戦。「食べてほしい人の顔を思い浮かべながら丁寧に混ぜる」という調理過程で「幸果の顔を凝視しながらゆっくりかき混ぜるか、材料をガン見してマッハでかき混ぜるか」のどちらかしかできないショウマのシーンが、重たい回想シーンを吹き飛ばすかのごとく面白い。(それにしてもショウマ役知念英和さんは一体どうやったらあんな実家の犬みたいな顔できるんだ。可愛すぎるやろ!)初めての手作りケーキに四苦八苦しながらも、ショウマは何とかちょっと不恰好な、それでも想いをたくさん込めたいちごのショートケーキを完成させるのだった。

 一方、絆斗はこれまで得たグラニュートの情報をまとめつつ、これを記事にして世に警笛を鳴らすべきか悩んでいた。結局のところ、執筆しているカフェでもグラニュートや仮面ライダーの話題が飛び交っているのを耳にした絆斗は記事化を留まるのだが、個人的にこの「誰にも頼まれてもいないし世に出す必要があるかどうかまだ分からない記事」を絆斗が自ら書いてるシーンが、何気ない場面ではあるのだがお気に入りだ。母を失い喧嘩ばかりして荒れ果てていた頃、「金にはならないかもしれないけど、人々に真実を伝えたい」という思いでライターをやっていた塩谷師匠に出会い、彼に憧れて始めたライター業だが、絆斗はもうすっかりその魂を引き継いでおり、自分の目で見て頭で考えたことを「書き残すこと」は彼にとっての使命であり日常なんだな……と思うと、ジャンルは全く違うが彼と同じく日々文章を書いている者として何だか無性にうれしくなってしまった。

 そんな中、ネット上で可児と名乗るストリートミュージシャンの周囲で人が次々と消えているという情報を目にした絆斗は、聞き込みの末に人気のない公園でギター片手に歌う可児を発見。絆斗が自分に近づくやいなや、演奏を中断し腹の口で彼を襲う可児。(てっきり一曲聴かせて人々を幸せにしたところを襲うのだとばかり思っていたので、予想外の襲撃の素早さにちょっと笑ってしまった)これを読んでいる読者貴兄にはもはや説明不要だと思うが、可児を演じるのは『キュウレンジャー』でスティンガーを演じた岸洋佑さんだ。近年ではシンガーソングライターとしてのご活躍をよく目にするが、ニチアサへのカムバックは2019年の「4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!」以来なので実に5年ぶりだ。公式サイトいわく岸さん演じる可児のグラニュート態・ロジョーのスーツアクターは、『キュウレンジャー』で岸さん演じるスティンガーが変身するサソリオレンジ役を務めた今井靖彦さんが担当してくださっているといい、岸さんの凱旋を喜ぶ現場の空気が窺えてファンとしてもうれしいばかりだ。岸くん、おかえりなさい!!

■今週のスーアクさん

・「愛して」MV in 噴水

 今週はやはり、クライマックスのガヴvs双子の戦闘シーンが迫力もクオリティーも桁違いだったので、スーツアクターさんも含めその話をメインにしたいのだが、その前にちょっとだけグラニュート・ロジョーvsヴァレンの話をさせてもらっていいだろうか?あの噴水の中の二人のイチャイチャ映像は一体なんだったんだ?おもろすぎるだろ。このシーンのバックに流れている岸さんの楽曲「愛して」は何と今回のために岸さんが書き下ろしてくださった可児のキャラクターソングだそうで、おそらくそれをしっかりと流す目的でロジョーとヴァレンによるカラオケムービーのような映像を作成してくださってるのかなと筆者は思っているのだが、その後のストーリーとも全然関係ない、ただただヴァレン役 鍛治洸太朗さんとロジャー役今井さんが体を張って水浸しになりながらキャッキャウフフしているベリーキュートなだけの映像で最高であった。ウミガメの産卵以上に貴重なシーンを本当にありがとうございます。また、「愛して」は現在各ミュージックサイトにて配信されており、「社会への鬱憤や、変わりゆく時代への憂い、使い捨てのバイトである自分を自嘲する蟹工船的テーマのラブソング」という制作サイドからの発注を見事に昇華させた一曲となっているので、読者の皆様は是非聴いていただくと良いだろう。私もこの記事を執筆しながら初めてフルバージョンを聴いたが、マジの名曲すぎてビックリしてしまった。さすが、やるとやったらいつでも全力投球の岸くんとしか言いようがない。

・VSシータ&ジーブ!

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