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ニチアサの話がしたい vol,228


■今週のゴジュウジャー

・「マカロニ」な新戦隊

 新戦隊「ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー」!1975年に誕生した『秘密戦隊ゴレンジャー』から半世紀。記念すべき50周年というアニバーサリーイヤーを盛り立てる本作を、読者貴兄はどう観ただろうか!ちなみに私は爆笑しながら観ました。なんだこの番組??

 もちろん私だって最初から笑おうと思って観ていたわけではない。むしろ前情報として明かされていた「願いを叶える指輪を巡るバトルロワイヤルもの」「5人の戦隊メンバーは仲間でありライバルでもある」という要素や、『アギト』『龍騎』『ディケイド』を愛好する松浦大悟氏がメインプロデューサーであること、また、平成ライダーの父・田﨑竜太氏をメイン監督に据えていることなどから「最近戦隊はずっと明るい感じだったし、もしかしたら今年はグッとシリアスになって、何ならちょっと平成1期ライダーっぽい雰囲気なのかも!心して観なければ……!」とかなり前のめりになってリアタイ視聴に臨んだわけだが、開始1分で起こるコンビニ強盗、それをジャンボフランクの肉汁で退治する主人公……あたりで早くも思わず口走ってしまった。「ドンブラザーズ2期か???」いや、筆者も『ドンブラ』を愛する者として、トンチキだけが『ドンブラ』ではないことは重々承知なのだが、それにしてもこの治安の悪さ、(なんせこのコンビニ強盗のシーンの直後にも、役名が「ゴロツキ」のゴロツキたちが早速ケンカをおっ始めるレベルである)にぎやかでハジけていてジェットコースターのような超展開なわりに、なぜか登場人物はところどころハードボイルド。そして最後はクールなエンディングテーマでシメるというハレーション高めの世界観には『ドンブラ』の後継と言いたくなるものを感じずにはいられない。第1話のオーディオコメンタリーで田﨑監督は脚本の初稿を読んだあたりから主人公の吠にマカロニ・ウエスタン的なものを感じていたらしいのだが、そもそもマカロニ・ウエスタンとは本場アメリカではなくヨーロッパで作られた、教科書的なルールは一切無用の「面白ければそれでいい」がモットーの西部劇のこと。そう考えると娯楽至上主義の「マカロニ精神」は確かに『ゴジュウジャー』の肝と言えるのかもしれない。

・破壊神から救世神へ

 そんな『ゴジュウジャー』1話には大小様々なサプライズが数多く用意されていた。まず放送前の特報で流され話題となった、「ロボ墓場」の頂上に巨神テガソードが君臨するシーン。SNS等を見ていた限り「栄光の過去作ロボを全滅させ、足蹴にした上にナンワーバンを語るとは何事だ」と結構本気のお怒りの方もいらっしゃったような気もするが、蓋を開けてみればテガソードは過去ロボを全滅させたわけではなく、逆に世界に破滅をもたらした「厄災」の前に打ち倒された戦隊たちを救いにやってきた存在であり、厄災を跳ね除けた彼は自らを墓標としてロボ墓場の守り人となったというストーリーであった。つい先週、『ブンブンジャー』最終回で死の淵から甦ったばかりのブンブンことブンブンジャーロボが再度ボロボロになっているのを観た時はさすがに「血も涙もないんかワレ!!」という気持ちにならないではなかったが、特報で見た「傍若無人で傲慢な破壊神」というテガソードのイメージが、アバンで一気に「光と共に降臨する救世神」に反転するのが心地よかった。

・堤なつめ(演:井内悠陽)

 第二のサプライズは……これが第一話の最も大きなサプライズと言っていいのかもしれないが……吠が働いていたコンビニの元同僚、堤なつめ役に、前作『ブンブンジャー』で主人公 範動大也役を務めた井内悠陽さんが出演されたことだ。筆者は前髪がちょっと変わっただけで誰だか分からなくなるほどイケメン俳優の見分けをつけるのが苦手なため(余談だが、これに関して私の姉は私より重症で、『エグゼイド』視聴中は花家大我と檀黎斗の見分けがかなり終盤になるまでつかなかったという。マジで!?)コンビニ強盗のシーンでは全く気付かず、吠にハンバーガーを奢りながら「バンド界ナンバーワンを目指す」という夢を語るシーンで「この人どこかで……井内くんだ!!!」とようやく気付いたのだが、放送終了後に周囲の人に聞いたところ、わりと「自分も最初は分からなかった」という人も多く、そういったファンの驚きの声こそがレッドという大役を務め上げた井内さんが一年間で俳優としていかに大きく成長したかの証といえるだろう。

 さらに物語の中盤では、井内さん演じる堤が吠よりも先にテガソードと指輪の契約を交わしたユニバース戦士としてクワガタオージャーに変身するのも大きなサプライズだった。キャストブログで吠役の冬野心央さんが「ただただかっこよかった」と感動をしたためていたとおり、ブンブンチェンジャーとは全く異なる変身アイテムにも関わらず、井内さんの変身ポーズはキレッキレで「さすが!」と思う一方、この井内さんの特撮俳優としての円熟度に自作でフリーライドする松浦さんの無法者っぷりにちょっと笑ってしまった。初変身を井内くんにさすな!!また、堤くんがブンレッドではなくクワガタオージャーに変身するのは松浦さん曰く「例えるならスーパーマンがバットマンになる驚き」を味わってほしいからだと公式サイトに記載があったが、(そもそもクラーク・ケントがバットマンになったことは歴史上無いんだから例えになってないだろ!というツッコミは置いといて)範動大也と堤なつめは別人物だとしても、主人公になりえるヒーローの善性を持ちながら「願いもないくせに」と急に吠に食ってかかるところなどは、どこか彼自身の中の歪みや不安定さが見えるようで、そんな「自分で自分のハンドルを握れていない」ところこそが、彼がブンブンジャーのセンタイリングを持っていない理由なのではないかという風に、(合っているかどうかはさておき)妙に理屈を繋げることもできたりして、変身者本人がレンジャーキーを持っていた『ゴーカイジャー』と明らかに違う部分でもあり、面白い試みであると思う。ちなみに放送から約1週間経つが大也と同じ顔を持つ全く違う属性の堤なつめにやられた視聴者によるファンアートは日々増えていっており、井内悠陽、色んな意味で罪深い男である。第1話はクワガタオージャーとゴジュウウルフのバトルが始まったところで終了したが、これから堤はどのような動きを見せるのか。そして彼が持つキングオージャーリングの行方は?2話以降も引き続き、「2年目の井内さん」に注目していきたい。

・250円のハンバーガーに懸ける命

 ここで本作の主人公である吠について話しておこう。この遠野吠という男がまた実に「イイ」奴なのである。まず何と言ってもその生真面目さ。横暴なコンビニ強盗をその場でブチのめせるほど強いが、履歴書の自己PR欄にデカデカと「つまらない人間です」と書くほど自己肯定感が低く、家では豆苗を育てたり牛乳パックや缶詰など小物入れにリメイクしていたりと倹約家で几帳面な一面を覗かせ、ゴロツキたちに「おとなしくしてねえとあそこの管理人とガキぶっ飛ばすぞ」と下宿先の喫茶「半世紀」のオーナー佐織とその息子の碧が危険に晒されれば、迷わず彼らにボコボコにされる方を選ぶなど、基本無表情でぶっきらぼうな態度とは反対に、その心根は優しく、意外にも情熱的な魂を持った正義漢であることが窺える。

 この吠のキャラクターが最も魅力的に描かれているのが第1話の一番の盛り上がりでもあるテカソードとの契約シーンだろう。人々を襲い、街を破壊するブライダン特攻隊長のファイヤキャンドル専用のドレスガード(ロボ)キングキャンデラーと戦闘員アーイーたちの凶行に黙っていられなくなった吠は生身でキングキャンデラーに突進するが、敢えなく空中で放り出されたところを「ナンバーワン……!」という不思議な声と共に現れた不思議な「円」に吸い込まれ、番組冒頭に登場したロボ墓場に辿り着く。そこで吠は、ブライダンテクニカル隊長のブーケが「破滅の指輪」と呼ぶ赤い宝石の指輪を拾うことになる。「二つの世界を守るため、どうかそれをお渡しください」と丁寧な、しかし有無を言わせぬ口調で吠に語りかけるブーケだが、こうしている今も尚たった一人で戦い続ける堤の姿を見た吠は、彼に買ってもらった250円のハンバーガーのレシートをグシャリと握りしめ「世界も破滅もどうでもいい。だがな、俺はまだアイツに250円返してねえんだよ!」と指輪をはめ、テガソードと「指輪がもたらす戦いでナンバーワンを目指し、叶えるべき真の願いを探す」という契約を結ぶことになる。世界の危機も破滅も何のことだかサッパリ分からない。ただ分かるのは、腹が減った自分のためにハンバーガーを買ってくれたアイツが戦っているということ。「一宿一飯の恩義」ならぬ「一食250円のハンバーガーの恩義」。たったそれだけで自分の命を張る吠のことを、もう視聴者の誰もが嫌いになれなくなっているはずだ。仕事が無くても、金が無くても、50年の歴史を背負うことになっても、たった250円のハンバーガーをきっかけに「つまらない人間」は生まれ変われる。そう、人はいつだって生まれ直すことができるのだ。吠の勇姿からはそんな熱いエネルギーを感じ、なぜか分からないが途端に泣きそうになる。吠役の冬野さんは連ドラのメインキャラクターとしては初の出演であり、1話の演技では端々に硬さや初々しさが見られるものの(それも「THEスーパー戦隊の1話」という感じがして良い)遠野吠という一風変わったレッドを引き受けられる度量の深さはしっかりと感じられ、彼が演じるからこそ、吠はこれからもっともっと面白いキャラクターになっていくのだろうなという期待が高まる。

 また、制作発表イベントの時点で衣裳の可愛さ、俳優さんたちのポテンシャル、更にはイベント終了後、『ギンガマン』を一生トレンド入りさせる軽妙なオタクトークと色んな意味で話題をかっさらっていったファイヤキャンドル役の(一富士二鷹!)三本木大輔さんとブーケ役まるぴさんお二方の既に役としての完成度が高すぎるお芝居も魅力だった。お二人ともご自身の役を心から愛し、楽しんで演じられているのが観ているこちらにも伝わってきて、もっともっと二人を見たい!という気分にさせてくれた。

・神輿は出ない。応援団は出る。

 物語はここからバトルシークエンスへと投入するが、ここで第三のサプライズ「ロボに素面で乗る」がお披露目となる。前作『ブンブンジャー』の調さんのように、素面キャラがロボに乗るという展開は皆無ではないが、基本的に変身後のヒーローが乗るのがお約束だったスーパー戦隊のロボ戦の歴史がガラリと変わった瞬間である。元来変身後のヒーローが好きな桐沢姉妹は「スーツアクターさんの出番が減るやんけ!」とつい口をついて言ってしまったのだが、逆に考えればこれまで素面俳優さんのドラマパートだけ見て、バトルシーンにはさほど興味が無かった層のファンの方々にもロボ戦をしっかり観てもらえる新たなチャンスと言えるのかもしれない。

 そして何と言ってもこのロボ戦で見逃せないのが、対決する搭乗者同士がプロレスリングに入り、突如現れた謎の応援団の声援を背に名乗り合いをするシーンである!!何!?応援団って何!?!?公式にツーンと「さすがに戦う時に神輿なんて出しませんよ。ドンブラザーズじゃないんですから」と言われて「そうですよね……」と引き下がろうとしたのに今度は「でも応援団は出るに決まってるじゃないですか!ゴジュウジャーなんですから!!」といきなりビンタをくらった感じだ。もうなんなんだよ!!公式サイトを開くと「いきなり、この応援団の人達って何なんだ!!!と思われた方多いと思います(笑)」とあるので、オッ!これはコンセプトを説明してくれるやつか?と思いきや「【中央大学の応援団】の方々に演じていただきました!」違う。そうじゃない。でもここで応援団とリング内での名乗り上げがあるのと無いのとでは、どう考えてもあったほうが盛り上がるし面白いのでアリ。アリ寄りのアリなのだ。これも先述したゴジュウジャーの「マカロニ精神」のひとつだろうか。また、これは放送後に冷静になって気付いたことだが、対決のステージがプロレスなのは「リングイン!」という搭乗時の合言葉よろしく、プロレス「リング」とセンタイ「リング」を掛けてるからだろう。東映特撮は予算の関係で派手な演出は序盤だけということも多いが、このワケのわからないプロレスリングの名乗りは是非続けていってほしい。

・「ちゃんと不安」という楽しさ

 頭からシッポまで色とりどりのサプライズと新情報がギューギューに詰まった『ゴジュウジャー』第1話。冒頭でも書いた通り、私も4歳になる甥っ子もゲラゲラ笑いながら初回視聴を終えたが、個人的にはバカウケしながらも1話を観て「ちゃんと不安になった」というのもすごく嬉しかったことのひとつだ。前作『ブンブンジャー』もお隣の『仮面ライダーガヴ』も、どちらも非常に丁寧に作られた、いわば安心して身を任せて観ていられる良作だからこそ、松浦さんも公式サイトコメントの最後に「みなさん、振り落とされないようにご注意を!」と書いていたが、全く座席が安定していない乗り物で爆走されて、半ば吹き飛ばされそうになりながら「この番組、ホントに大丈夫か!?」と轟音の車体にしがみついている感じが、私は楽しくて楽しくて仕方がない。

 この番組には『マジンガーZ』『ボルテスV』『あしたのジョー』『トランスフォーマー/ONE』『Gガンダム』『ストリートファイター』『ウルトラマン』『龍騎』『ディケイド』を始めとする書き切れないどのインスパイア元があり、それらを知っている人は更に笑えるポイントが増えると思うが、何も知らない人は全然そのままでいいと思う。私自身も知らないものも多いが、その「元ネタ探し」に必死になるより、爆走する車窓から見えたとんでもない景色、道中で拾った美しいものや珍しいもの、何度見返しても笑えるシーン、そう言ったものを拾い集めてファンのみなさんと共有しつつ、この『ゴジュウジャー』という見たこともないスリリングな乗り物で、スーパー戦隊の50年に思いを馳せつつ、吠の「バイトと願い」を探す旅を一年間共に楽しみ尽くしたい思う。なってやるよ!ナンバーワン!!

■今週のスーアクさん

・オープンセットの衝撃

 今週はもちろん!もちろん!ゴジュウウルフのスーツアクターを務める浅井宏輔さんの話をしたいのだが、その前にロボ戦の話もさせていただいていいだろうか。番組冒頭、ロボ墓場にテガソードが降臨するシーンがめちゃめちゃにカッコ良かったのだ。観ているこちらにまで熱が伝わってきそうな生々しい爆破の炎、舞い上がる火の粉、風にたなびく黒煙の中で振り返るテガソード……その威厳に溢れた姿は軽く身震いするほどで、なるほどこれは「テガソード様」と呼ぶにふさわしいと思わせられる。これはただごとではないと公式サイトを観てみるとこのシーンはオープンセットでの撮影であり、制作にのべ2週間以上がかけられているという。オーディオコメンタリーで田﨑監督自身も「これはバリューカットだ」とおっしゃっていたように、時間も予算もふんだんに使われたオープンセットでなければこの迫力や圧倒されるような美しさは出せなかっただろう。
 
また、番組中盤に登場したキングキャンデラーが放つ炎もなんと一部火炎放射器を使っての本物の炎で撮影がされており、こちらもめちゃくちゃにカッコいい。この火炎を華麗に(そして安全に)操るスーツアクターの方の技術も物凄いし、これらの撮影の指揮する名匠・佛田洋監督の素晴らしい手腕に改めて拍手を送りたい。

・ゴジュウウルフ役、浅井宏輔さん!

 そしてゴジュウウルフのスーツアクター役の浅井宏輔さん。まず何はなくともこの一言は言わせてほしい。浅井さん、スーパー戦隊50周年という記念碑的な作品でのレッド御登板、心よりお祝いいたします!本当におめでとうございます!しかし、「わ~~~い!!うれしい!!うれしすぎる!!早く変身しないかな!!」とワクワクしながら観ていたのだが、Aパートが終わってもBパートが終わっても吠がゴジュウウルフにならない……気づけばもう時計は9:25。えっちょっと待って!そろそろ浅井さんにならないと1話終わっちゃうんだけど!?と筆者がヤキモキし始め、浅井さんファンの姉が「うおおおお!早く出してくれ~~~!!」と身に覚えのない罪で投獄された囚人の如き叫びを発したその瞬間!巨神の腕から滑り降りてきた吠が「エンゲージ!」の台詞と共に右手のテガソードを叩き、ついにその姿をゴジュウウルフへと変えるのである!

 『ゴジュウウルフ!』その名が宣されると同時に、爪を剥き出しにした左手で顔全体を掴み、全身の細胞を震えさせるように「アオオオーーン!!」と遠吠えを放つウルフ。そしてBGMに流れる本作のOP主題歌、Winnersの歌う『WINNER! ゴジュウジャー!」と共に浅井ウルフさんが駆け出し、トップスピードのままアーイーの腹部に飛びかかり、足払いをし、腕にしがみついて一回転し、両足で蹴りを入れ、「うりゃあ!」とブン投げる。この間、わずか10秒たらず。しかもほぼワンカット。己が持つ全ての力、それを一切を出し惜しみしない、しかもこれまで観たどの役とも違う、まったく新しい浅井さんの全力のアクションに圧倒されて観ているうちに、なぜだか涙があふれてくる。カッコいい。すごい。それももちろんあるが、「浅井さんがレッドだ。浅井さんが、ゴジュウウルフなんだ!」という実感が湧き上がってきたら、それがどうしようもなくうれしくてうれしくて、たまらない。アーイーのシャンパンボトル型の武器が横っ面に直撃しても「効かねえなァ……」と睨みをきかせて武器を素手で奪い取り強烈なキックを喰らわす。そこにこの番組が目指す「一人一人が仮面ライダー並みに強い」戦隊のあり方も垣間見え、「最強(ナンバーワン)は5人もいらねぇ!」という本作のキャッチコピーが脳裏によぎる。印象深いのは、ウルフの着ける指輪を「破滅の指輪」と呼ぶアーイーたちに「破滅の指輪?違えな!今からこいつは救世主の指輪だ!」と返してコンボを決めるシーンで、敵に攻撃が当たった瞬間にウルフの動きが一瞬止まる、格闘ゲーム(というか『ストリートファイター』)のような演出が入ることだ。最後の一撃が決まり、ウルフが勝利すると「俺こそが、救世主ナンバーワン!」という決め台詞と共に画面に「WINNER GOZYU WOLF」の文字が入るところも「格ゲー」風で目に楽しい。

 本作の制作発表と同日にご本人からSNSを通して発表があったが、浅井さんは『ゴジュウジャー』を最後に現在所属しているJAEを退所されるご予定だ。筆者の推しの岡田和也さんもそうだが、スーパー戦隊や仮面ライダーを愛し「ヒーローになりたい」という並々ならぬ思いでJAEの門戸をくぐった方が退所の道を選ばれるというのは本当に色々な事情や、ご本人にしか分からない葛藤があるのだと思う。浅井さんがいないニチアサを想像することはまだ気持ち的に難しいが、それでも私は、それが浅井さんの人生にとってベストな選択なのだと信じているし、浅井さんの決断をファンとして大切に受け止めたい。「これが最後」と思うと演る方も観る方もやたら肩に力が入ってしまいそうなので、一旦終わりの日のことは考えず、とにかくこの一年、浅井さんが怪我なく悔いなく楽しくゴジュウウルフを全うできるよう、心の底から応援している。浅井さん、頑張ってください!!

・スーツアクターさん、役名表記!

 最後に、スーツアクターファンとして何よりも嬉しいサプライズがあったことを記しておきたい。なんとエンディングクレジットで、ゴジュウウルフの浅井さんとテカソードの藤田洋平さんが、役名付きでクレジットされたのである!!うれしい!うれしすぎる!!苦節何年、この時を待っただろうか。『ゼンカイジャー』の最終回でもキカイノイドのスーツアクターさんと声優さんとが並べてクレジットされたが、それはあくまで最終回だけの特別演出であり、通常放送で役名表記がされるなんて、大げさではなくスーパー戦隊50年目の大革命だと思う。体を張り、命を懸けて一年間同じ役を演じながら、「ヒーローに中の人などいない」という矜持を盾にされ、役名と並べて名前をクレジットされることが許されなかったスーツアクターさんが、ようやく自らの役としてヒーローの名前を掲げられるようになったのかと思うと「ようやく」の感慨で胸がいっぱいになる。「中の人などいない」という「黒子の美学」は確かにあるだろう。しかし、そういった美学や矜持だけでこの先の50年を見据えた時に果たしてスーツアクターという職業を守っていけるのだろうか。変身前の俳優さんと同様、誰が何の役を担当しているのかという責任の所在を明らかにし、制作サイドからの彼らへのリスペクトをしっかりと形にしてスーツを着てキャラクターを演じる職業の知名度と社会的地位を向上させる。その上で「影の者」として長らく薄給だった演者たちの給与を上げ、保障や待遇を更に改善することで離職率を下げ、番組を観ている子どもたちの目指す職業の選択肢に「スーツアクター」を入れてもらえる環境を整えることで後継育成に繋げていく。そういったことこそが歌舞伎や文楽の影響を受けながら誕生し、今もなお受け継がれている「仮面芝居」という国宝級の伝統芸能を後世に残すために今最も必要なことなのではないだろうか。近年のスーツアクターさんへの注目度や人気を鑑みると、もはや遅すぎる感もあるくらいだが、もう是非ここから指針を一新し、これからの50年は役名とスーツアクターさんのお名前の並記が当たり前という時代になってほしい。その一歩として、今回のクレジットには心から感動したし、この表記にしたいと提案を出し、実現まで漕ぎ着けてくださった全てのスタッフさんにお礼が言いたい。本当にありがとうございました!これで2話からこれまで通りに戻ってたら大横転でオチがついてしまうのだが……そんなことはないと心から信じている。

▲身内の話で恐縮ですが、『ゴジュウジャー』OP主題歌「WINNER! ゴジュウジャー!」のCDジャケットデザインに、本文にも登場した浅井さん推しの姉が携わっています。3/19に店頭にCDが並びますので、よろしければお手に取ってご覧ください!

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桐沢たえ
いつも読んでくださってありがとうございます!!もしよろしければサポートよろしくお願いします……!!