「ジェンダー・クィア」日本語版出版に向けて (06) 自分のヴァギナに向き合う
マイア・コベイブさんは、女性の身体を持って生まれ育ち、現在はノンバイナリー・ジェンダーとしての自認を持ち、生活をするに至っています。
『ジェンダー・クィア』の中でも、特に強い印象を残すのは、20代に入ってパップテスト(子宮頸がん細胞診)のために婦人科受診をして、ヴァギナを持つ身体であることを思い知らされて打ちひしがれる経験を描いたところです。
今年公開された映画「バービー」の終盤で、人間の世界で生きることを決断したバービーが婦人科を受診する場面が描かれていますが、身体的女性であることを他者の視線から確認される場所として婦人科が設定されています。
シス女性でも婦人科受診(内診)は結構心理的なハードルが高いものだと思いますが、身体的性と自分の意識のあり方との間に食い違い、ずれを抱いている人にとっては、医療行為がある種の境界侵略的な経験になるものとして描かれています。