見出し画像

メールやチャットにすぐ反応することがシゴデキなのか?

アウトプット作成の阻害要因

近年、企業のIT環境にSlackやGoogle Workspace、Office365等が導入されることで、メールやチャットのやり取り、オンライン会議がシームレスに行われるようになった。組織内外のコミュニケーションは効率化され、情報にリーチできるスピードも昔と比べてはるかに上がっている。

クライアントからの問い合わせメール、後輩からの相談チャット、上司からの進捗確認チャットなど、1日に受信するメール・チャットは100件をくだらない。いずれも期限が明記されていることは稀で、その重要度や緊急度に関わらず、送信者はASAPの雰囲気をいつも醸し出す。

私も当然のことながらメールやチャットを一日に何通も送っているが、相手から返ってくる速度を勘案すると、人々がどういう基準で返信を行っているか、一定透けて見えてくる。

  1. とにかく早く返すことが大事。メールやチャットの通知は常にONにして、会議中だろうが作業中だろうがとにかくすぐに返す。

  2. 重要なクライアントや上司、つまり自分の評価に関わる人への返信は何よりも大切。可能な限りタイムリーに返す。

  3. 自分の目の前にある課題・タスクに係るものは返す。少しでも期限が先のものには反応しない。

  4. 対面での会話を重視しているため、メールやチャットには反応しない。暇な時に緊急かつ重要なものだけ返す。もしくは、督促された時にだけ返す。通知もOFF。

正解はないし、私の推奨もない。これは個人のワークスタイルの問題なので。ただ、私は1の基準を採用し、「全ての仕事をマルチタスクで行い、高速かつ同時進行させることがシゴデキな人だ」と思って仕事をしていたが、そのうち躓いた。

人間の脳はマルチタスクに向いていない

何かのタスクを同時にこなそうとする時、人の脳はタスクを並行処理をするわけではなく、集中する対象をその都度切り替えて処理しているという。つまり、並行処理をしているように見えて、実は直列処理しか行っていない。

私の例でいうと、会議中にメールを返信する場合、会話を耳で聞きながらも意識は声に向いておらず、文章を考えることに向いている。誰かから声を掛けられたら、耳が記憶しているキーワードを拾いつつ、あたかも会話を聞いていたかのようにそれらしく回答する。ただし、あまりにも作文に没頭している場合は、直前の会話を脳内で再現することもままらないので、振られている話の内容を聞き返すしかない。

そういう時、私は「すみません、ちょっと取り込んでて聞いていませんでした。もう一回いいですか?」と開けっ広げに言ってしまうが、中には「音声の調子が悪くて聞こえませんでした」とか「(職場で)クライアントに声かけられていました」とかいった理由を用意している人もある。(もしかすると言い訳ではなく、本当にそうなのかもしれないが)

結局のところ、重要な会議をしながら重要なメールやチャットを返すというマルチタスクは、人間の脳には向いていないのだ。(もちろん、自分に取って重要じゃないアジェンダが議論されている間、メール・チャットに専念することはできる)

目の前の仕事に集中することの大切さ

私がメール・チャット、会議、作業を高速回転・推進させようとして努力をし続けた結果起きたことは、頭を使う作業を先送りにするという事象だった。一日中、髪の毛を振り乱す勢いで仕事に没頭したにもかかわらず、重要な課題や資料作成は一向に前に進まない。メールやチャット、会議が落ち着く頃、すなわち皆が仕事を切り上げる頃にようやく自分の時間が持てるようになるが、その頃には精魂尽き果てていて、仕事に頭を使うどころではない。(若い頃はそれでも頭を使えていた。エネルギーが漲っていた若かりし頃は・・・)

対策としてまず実施したことは、始業時間前に頭を使う仕事をすること。朝早く起きて1時間から1時間半くらい確保すれば、そこそこのアウトプット(パワポなら2~3枚)を出すことができる。朝に頭がフル回転していることが前提なので、夜早く寝ることはもちろんのこと、酒も飲まないようにしている。

その上で実施したのはメール・チャットの通知OFF。そして、メール・チャットの返信時間を決めること。正確には、作業の時間をカレンダーに入れて確保し、作業や会議の重要アジェンダ以外の時間を使ってメール・チャットの返信をするようにした。作業の集中力が切れて気晴らしをしたい時も、返信の時間に当てている。

そのようなワークスタイルに変えてから、何か問題が起きたか?

実は、何の問題も生じていない。

返信が遅いとクライアントや上司に怒られたことはないし、何かやらなければならないタスクが止まってしまったということもない。(私が気づいていないだけなのかもしれないが)
むしろ、課題検討や資料作成のスピードが上がり、仕事が進んでいるという充実感が増えたし、クライアントから褒められることも増えた。(上司はなかなか褒めない。自分の方ができると思っているから)

問題が起きていない理由は様々だ(一部推測)。

  1. 期限に猶予のあるものだったので、ゆっくり返信して間に合った

  2. 私以外の人でも回答できるため、他の人に返信してもらって解決した

  3. 時間が経つ内に問題が解決した

  4. 会議の場でメール・チャットと同じ内容を聞かれた(会議の場で即答)

  5. そもそも返信を期待されていなかった(返ってきたら儲けもの)

問題が起きず、充実感が得られるなら、このワークスタイルを手放す理由がない。今後もこのスタイルを継続しようと思う。


いいなと思ったら応援しよう!