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「思考は地図である」

大学での研究を通じて「思考の仕組み」に没頭し、現在はその研究を基盤に、AIと人間の協働がもたらす未来について発信しています。私の興味は、単なるテクノロジーの進化だけでなく、それが私たち自身、つまり人間の本質にどのような影響を与えるかという点にあります。

私は「思考は地図である」と考えています。この地図は、私たちが世界をどのように理解し、どのように自分の道を切り拓いていくかを決定づけます。そして、AIが急速に進化している今こそ、この「思考の地図」を再発見する重要な時期だと感じています。

AIの進化は目覚ましく、特に生成型AI、例えばChatGPTやBardのような言語モデルは、これまで人間が苦労してきた問題解決や情報処理を次々とこなしています。しかし、「人間がAIにすべてを奪われる」という悲観論には違和感があります。私たち人間には、AIには真似できない独自の「思考の地図」があるのです。

この地図の特徴は「重ね合わせ」や「同時的な結合」にあります。たとえば、私たちが新しいアイデアを思いつく瞬間、それは過去の経験や知識、感情が一斉にリンクし、新たな意味を形成する瞬間です。AIのアルゴリズムが直線的なプロセスをたどるのに対し、人間の思考は「同時的」かつ「非線形的」に働くのです。

これを具体的に説明するために、私は「透明なシートの重なり」を比喩として使っています。透明な紙にそれぞれ異なる絵を描き、それを重ねたとき、上から見ると新しい絵が浮かび上がるように、私たちの脳も異なる記憶や知識を一気に結びつけ、新たな洞察を得ます。このプロセスが可能なのは、人間特有の「量子的な思考」のおかげです。

量子的な思考とは、要するに物事を「同時に見る」能力です。たとえば、科学者が新しい理論を構築する際、過去の研究やデータ、さらに直感的なアイデアが瞬時に結びつき、新たな発見が生まれる瞬間があります。これがAIには再現できない領域です。AIはデータを直線的に処理しますが、私たちは時間と空間を越えて考えることができるのです。

この思考の力を活用することで、人間とAIが真に協働する未来が実現すると信じています。AIが提供する膨大なデータと論理的な分析を基に、人間がそれを再構築し、新しい価値を生み出す。このプロセスを「創造的共生」と呼びたいと思います。

ただし、この未来を実現するためには、私たち自身が「人間の特質」をもっと深く理解する必要があります。教育、キャリア選択、さらには日々の生活の中で、私たちは自分たちの「思考の地図」を意識的に鍛えていくべきです。それが、AI時代においても「人間らしさ」を保ち続けるための鍵だと信じています。

最後に、私が常に伝えたいこと。それは、才能があるとかないとか、そういうことではなく、「生きているだけで素晴らしい」という事実です。思考も才能も、ただの手段にすぎません。それをどう使い、どんな地図を描いていくかが、私たちの人生を決定づけるのです。

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