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“有罪”コミック作家、マイク・ダイアナさんは、心優しきヒューマニストだった

4月にアメリカのコミック作家、マイク・ダイアナさんが京都に来られ、pop pizza にて、自主制作映画の上映会とファンミーティングを持たれた。

ワタシ存じ上げなかったのですが、マイクさんの作品というのが、スプラッター、エログロ、暴力、残酷で、まあ酷い。
だが、なんかちょっと親しみ感じるなあ、とおもったら、根本敬ワールドに近似なんであった。

こちらマイクさん
こちら根本さん


アメリカで初めて猥褻で有罪判決を受けた漫画家に会う


日本で根本さんは表社会から平和的にスルーされてるのに比べて、同じような作品を描いていても、さすが自由の国アメリカといいますか、マイクさんはなんと、作品の猥褻さで有罪判決を受けている。

その発端が、連続殺人事件の捜査中に、マイクさんのエログロ作風がFBIに注目されて容疑者とされたんだという。
おいおい大丈夫なのか、FBI(笑)。で1992年、フロリダ州でわいせつ罪で起訴された。
その顛末は、ドキュメンタリー映画にもなっている(監督は、「バスケット・ケース」のへネンロッター!!!!)

そんな大物来日イベントとは。しかし、初めマイクさんは日本に旅行に来る予定だったそうだ。なかなか日本に来てもらえる機会もないからって、イベント企画するとは。
それ、マイクさんの作風よりも凶悪やがな(笑)。

pop pizza。イベントじゃない日に行ったら、トッド・ソロンズの映画から出てきたみたいな外国人常連客がたむろっていた。何やってる人なのかな、、まだ京都にはそういう隙間があるね。


捨てたナメクジが、ケガしてないか心配する「凶悪作家」


上映されたのは、マイクさんが11歳の頃に撮影した自主制作ムービーで、子供(自分の友達が総出演)が暴力、殺し、薬物三昧というエッグい展開で、凶悪な作風がすでにフルに発揮されている。
ダメと言われていることに興味しんしん丸な男の子の妄想・実写版という感じで、臓物や胎児など、スプラッタ要素の小道具も手作り感いっぱい。出演してる家族もノリノリだ。
このまんま妄想全部出しで、スクスクと作家として育たれたのだとしたら、挫折のないご立派なキャリアではないか。

マイクさん、スキンヘッドであったこともあり、物静かで雰囲気はお坊さんみたい。はじめちょっと険しい表情だったが、言葉を交わすうちにみるみるお顔が柔和になってきたのをみて、ああ緊張されてたんだ、と思った。
おそらく、ワタシが「凶悪」に見えてたんだろう。

熱狂的なファンの来場に、ご満悦だったマイク・ダイアナ画伯

コミック冊子[ Super fly ]に、マイクさんが、「道のナメクジも踏めない」善良で、繊細で、やさしい人だというインタビュー記事があった。
世の中や他人の凶悪さに、ご自身なりの向き合い方をされてきた方なのかな。降りかかってきた災厄も甘んじて。それって、やっぱりお坊さんかも。

[ Super fly ]のインタビューがなかなかいいので、ザツですが訳して貼っておきます。

マイク・ダイアナは、フロリダ州ラルゴにある父親のコンビニエンス ストアで働いていて、大好きなホラー映画に出て来るゾンビのような酔っぱらいやクラック常習者にタバコやビールを売っている。

最近まで弟と一緒に住んでいたトレーラーハウスに帰っては、毎晩漫画を描いていた。 しかし、彼の起訴のニュースが新聞に掲載されて、警察が来たりして面倒が起きるため、地元の人が彼に退去を要求した。
マイクは 24 歳のアーティストで、厄介者だった。少なくともフロリダ州では。我々も、彼をそうみていた。

1989 年にニューヨークで zine の見本市をキュレーションし、メールで彼につながって以来、我々は彼の雑誌に作品を寄稿してきた。 展示会には何百もの出版物が出品されていて、おおかた性的に逸脱したテーマを扱っていたが、なんといってもマイクのコミック『エンジェルファック』(タイトルのF-ワードをめぐって郵便局とトラブルになったため、『ボイルドエンジェル』に改名)は、我々が記憶する限り、最強だった。
単純に、超エクストリームだったからだ。

まるで ロリー・ヘイズや S. クレイ・ウィルソンのような 60 年代のアンダーグラウンドの Id モンスターによって吐き出された、あらゆる邪悪で厄介なイメージが凝縮され、現代のゴア映画のポップな暴力とハードコア パンク ミュージックのミニマルな歌詞と組み合わされたような。  
描写はこぎれいな高校の落書きみたいな、プリミティブなスタイルだ。

マイクの作品には強迫的な切迫感があって、それがシニカルでフラットなユーモアを緩和していた。 当然、我々はマイク・ダイアナがどんな人なのか気になった。

去年の夏、マイクがニューヨークを訪れたとき、ついに会うことができた。我々は彼と知り合い、話らい、ブルックリンのスティーブが住んでいる場所の周りを歩いた。

そしたら、歩道のそこここに巨大なナメクジがいた。

人間やネズミ以外のリアルな生き物がそこにいるのがちょっと驚きだったので、好奇心をそそられて見に行ったら、マイクは、誰かが誤ってそれを踏むのではないかと心配し始めた。それで、私たちの1人が足でそれをすくい上げて、雑草の生い茂った近くの裏庭に蹴り飛ばした。

ナメクジを救って、ほっと一安心。
しかし、その後、マイクは完全に沈黙してしまい、数ブロック歩いた後、私は「具合でも悪いの?」と尋ねた。

マイクは「ナメクジのことを考えていたんだ」と言う。
「僕ら、ナメクジを助けたと思ってるよね? でもさ、ナメクジを茂みに投げた時、棘か何かに突き刺さっちゃいないかって考えたんだ。話の結末って、そんなんばっかりだと思わない?」

この話を、マイクのコミックを読んでいる間、心に留めておいてほしいと思う。

あなたは、我々が彼に会う前そうだったみたいに、マイクを悪魔だと思うかもしれない。近所の猫を火炙りにして灰の中で転がるのを見て喜ぶ悪魔崇拝のサイコ野郎とか、 高校の保健の授業で使う人工呼吸の練習用の人形をレイプして追放されるような奴とか。

でも今や、我々はマイクの小さな秘密を知ってしまった。あまりに善良で、繊細で、やさしいことを。
私たちは知っている...そして忘れはしない。

[ Super fly ]収録 Scott Cunningham and Steven Cerio (1993)のインタビューのザツ訳。


superfly by Mike Diana


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