桑田卓郎キュレーション「PLAIN」展。膨大なリソースと対話できる作家の強みを見た。
2024年10月12日 京都新聞掲載
荒々しく隆起した塊に覆われた陶オブジェは、桑田卓郎の作品。釉薬が縮れた「梅花皮(かいらぎ)」や、土の中で石が発泡した「土はぜ」という、茶人や好事家が愛好してきたやきものの景色を誇張することで、抽象彫刻のようなフォルムを生み出した。驚くべき形象は、コンテンポラリーアート、ファッションの世界にも刺激を与えている。その桑田が、自身と一脈通じる作家5人を選んだ。
田中陽子は、ガラスと磁器を融合させる手法を編み出し、白と透明な層の重なりから、清冽な眺めをあらわした。志野焼をモダンに解釈するのは林友加。国産の白いやきものを目指して生まれた志野を黒く焼いた。愛らしさのある形は、桃山陶のマッチョなイメージも翻す。村上雄一は、細やかな編み込みなど、白磁の成形の繊細な技を見せる。手びねりの軽妙なオブジェを出品するのは加藤委。追求してきた青白磁釉には、署名ともいえるオリジナルな美しさがある。木村達哉は、中世の山茶碗や古信楽の写しと共に、焼成時に破損したり重なったりした「失敗」も展示して、火が生み出す即興的な面白さを観客と共有する。
作風は5人5様。共通するのは、産地に蓄積された古作の履歴、素材や技法の情報と経験値という膨大なリソースに取材しながら、見る人を驚かせる現代のアートの姿を探るスタンスだ。
(MtK=左京区岡崎南御所町 22日まで、日休)
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