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エリザベス・ペイトン:daystar 白露@両足院で感じた、「現代アーティストをおもてなしできる職人がいる京都」の誇らしさ


Installation view, Elizabeth Peyton: daystar hakuro, Ryosokuin Temple, Kyoto, Japan, September 8—24, 2024  Photos by Takeru Koroda Courtesy David Zwirner

「外国人アーティストが寺で展示」の“見せ物感”よ、さようなら


まるで白日夢のよう。

京都がやっと国際的で現代的な美術都市になってきた。いや、そうであった時期もあったのだが、昭和の長い眠りから醒めて、時代の変わり目がやってきたことを、酷暑のなか感じた展覧会だった。

エリザベス・ペイトンというと、今さらご紹介の必要のない人気アーティストであるが、その約7年ぶりの個展が、京都の禅寺・両足院で開催された。
数々のコンテンポラリーアートの展示をおこなってきた両足院だが、柱に釘が打てないなど、通常の展示空間にはない制約が多い。それを巧みに乗り越える技術や工夫が、空間構成の経験値として積み上げられてきた感がある。畳の上に広げたり、不恰好なパーテーションの上に放置されるような悲しい作品展示は見なくなった。

Installation view, Elizabeth Peyton: daystar hakuro, Ryosokuin Temple, Kyoto, Japan, September 8—24, 2024  Photos by Takeru Koroda Courtesy David Zwirner

新世代の職人のユニバーサルな感覚が見どころ

今回感銘したのもその点で、禅寺に心底惚れ込んで、その世界観と一つになろうとして新境地をみせたペイトンの気持ちを、Autique &Aart Masaが古材を用いて構築した支持体とフレーム、襖の作品を仕立てた藤田幸生、唐紙の嘉戸浩(かみ添)が、的確に受け止め、形にした。

さらに、茶室では中山福太朗が、酷暑と作品世界のクールさのダブルパンチに朦朧としている客を、作品のイメージに寄せた目の覚めるような色彩の菓子と、見たことのない道具組で涼やかに鎮静させた。

Installation view, Elizabeth Peyton: daystar hakuro, Ryosokuin Temple, Kyoto, Japan, September 8—24, 2024  Photos by Takeru Koroda Courtesy David Zwirner


「ユニバーサル」であることと、海外経験は関係ない


この京都で、「寺イベント」がいつのまにか見慣れた光景になり、「外国人アーティスト」が「寺で展示」、という水と油ぶりを不協和音に終わらせる展示や催しを数限りなく見てきたが、そんな悪夢はもう見なくていいのだと、心の底からホッとした。

国際的、ということは、何も外国語に堪能であることでも、海外経験が豊富なことでもない。その人が、ユニバーサルなバランス感覚を持ち、国を超えてクリエイターたちと美意識を共有するコンテンポラリーな作り手であることをいう。そこには、家が背負っている伝統の重さも、工芸家としての権威も関係ない。

エリザベス・ペイトン:daystar 白露@両足院 2024年9月24日まで
https://www.davidzwirner.com/exhibitions/2024/elizabeth-peyton-daystar-hakuro https://www.instagram.com/davidzwirner/

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