40代の女が沿道で派手に転けたら何思ふ
何十年かぶりに、転けました。
いや
転けた、とかゆーレベルじゃないな。
ズッコケました。
転けるって、あんなに痛かったけ・・・
そして
あんなにも恥ずかしかったっけ。
毎朝、次男のバスのお見送りの後、私は猛スピードで走って帰る。
なぜなら、夫の通勤電車の時間に間に合わせるためだ。
学校に行っていない長男は、次男のバスのお見送りについてきてくれない。お留守番もできない。だから、私が帰宅するまで夫は出発せずに待っていなくてはならない。
8:30が限度らしい。
会社に遅刻するわけにはいかないので、雨の日も風の日も酷暑の日も、私は次男が乗ったバスを笑顔で見送った後、クルッと振り向き、アスリートの如く沿道をダッシュして帰る。
先日。
いつも通り笑顔でバスに手を振った後、クルッと振り向き、、
GO!
時刻は8:20頃。
私は風になる。
愛する夫のために。
今日も私は風になる。
ものっすごいスピードで足を運ばせていたら
なんか足がもつれてこんがらがって
バランスを崩し
私は見事に前方へ倒れていった。
あぁ!!!!
私、このまま転けてしーまーうーのーーーーー
あああああああああああ!!!
ずりずりずりずりぃぃぃぃ
ド派手に前方に倒れ、右肘をアスファルトで擦りむき、右腰と左膝をガツンと強打した。
この道路はかなり交通量が多く、朝は特に混んでいる。
私はまるで自分がスポットライトを浴びているかのように、皆んなの視線を感じた。
超恥ずかしい。
恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい。
私は、「40代の女が沿道でズッコケている」という事実を、気のせいよ?あんたたち!と、かき消すように瞬時に自らを立て直し、涼しい顔で再び走り出したのだった。
我ながらすごい速さだった。
40代の女が転けると、頭の中は「痛い」ということよりも、「羞恥心」が上回るらしい。
駄菓子菓子、、、
痛い。痛いぞ。
結構痛いぞ。
だんだん痛くなってきた。
でもでも、ここで走るのをやめるわけにはいかない。
家では愛する夫が、私の帰りを待っている。
私は負傷した肘、強打した腰と膝をズキズキさせながらも家路を急いだ。
沿道で派手に転けた40代の女が次に思うこと。
履いているジーンズの膝は破けていないだろうか。
私はよりによって一番お気に入りのジーンズを履いていた。
夫婦で大好きなブランドがある。
「BLUE BLUE」
もうそこのジーンズ履いちゃったら、他のジーンズ履けないくらい履き心地が良い。
そして、結構高い。
そのジーンズが破けてないか気になった。
私は夫の顔がよぎったが、一瞬立ち止まり確認した。
破けとるやないかい
うそーん。
ショックショックメガショック!!!!
ほんのちょっとだけど、破けていた。
あゝ、なぜ!なぜ!このジーンズを選んじまったんだ!
バカバカバカmikaのバカ!
・・・ってゆーか、なんで、転けたんだmika!!!
この時、なんとなく、肘を見た。
え、めっちゃ血出てる
アスファルトでズリっとやっちまったところからダラダラ血が流れていた。
結構ズリっとやっちゃったようで、傷口は見るからに痛々しく、ぐちょぐちょしていた。
沿道で派手に転けた40代の女は、羞恥心と履いていたジーンズのことばかりに気をとられ、自ら血をダラダラと垂らしていることに全く気が付かなかったのだ。
血を見たら、なんか、さっきよりも痛みが増してきた。
痛ぁぁぁぁぁーーーーーい
でもでも、家では愛する夫が待っている。
走るのよmika!!!
私は、再び走り出した。
肘から血を流した女が、沿道を猛スピードで走る。
はぁ、はぁ、はぁ、痛い。めっちゃ痛い。
垂れてる血がジーンズにつくわけにはいかないと、自分の身体からできるだけ腕を離しながら走る。
なんだ、この走り方は!
滑稽だ。実に滑稽だ。
沿道で派手に転けた40代の女が次に思うこと。
これ、noteのネタになるな。
あゝ、自分が怖い。
こんな血を流しながら、noteで綴ることを考えている。
冒頭は「何十年かぶりに、転けました」でいこう。
とか考えっちゃってる。
あゝ、自分が怖い。。ブルブル。。
怖いけど、、仕方ない。
noteをやっている以上、これは、仕方ない。
やっとの思いで家にたどり着いた。
「ただ、、、い、、、ま、、、。ティッシュ、、、ティッシュ持ってきてーーー」
何も知らない夫がティッシュを持って玄関にやって来た。
「どどどどどどうしたの?!?!」
ビビる夫。
そりゃそうだ。
肘からダラダラ血を流した妻が玄関にいるんだから。
驚く夫の声に、ゲームをやっていた息子も飛んできた。
「ズッコケた・・・」
「えっ?!どこで?」
「帰り道、沿道で」
息子も、血だらけの母を心配して、
「お母さん、痛そうーーーー大丈夫?」
と言ってくれたものの、すぐさまその場を立ち去り、マイクラワールドへ戻って行った。
・・・。
介護してくれる優しい我が夫。
しかし、電車の時間が迫っている。
もう行っておくんなまし!
私は早く行くように促した。
「ごめんね、じゃあ、行くね・・・」
後ろ髪引かれながら、夫は出かけて行った。
私は、血だらけの肘を水道水で流した。
「イッターーーーーーーーーーーーーーーー」
めっちゃ痛い。
「大丈夫ー??」
真剣な眼差しでゲームしながら心配してくれる息子。
強打した右腰と左膝も確認してみると、そこからも血が出ていた。
え、そこらじゅう血だらけやん。
私は思った以上に負傷していた。
とりあえず消毒をして、絆創膏を貼った。
はぁ。
頭では、軽やかに足を運ばせているつもりだったのになぁ。
足がついていってないってことなのか?
それが、40代なのか?
え?
揺らいじゃってる40代の洗礼的な?
いやいやいやいや、認めたくない。
認めたら終わりだぞmika!!
「・・・さん!お母さん!!!」
ハッ
私は、我に返った。
いつの間にかゲーム時間を終えた長男が、心配そうに私を見ていた。
そして、傷だらけの母に向かって彼はこう言った。
「お母さん、いつもありがとう」
え、何、その優しい微笑み。
「あ、はい」
と私は返した。
きっと、自分がバスのお見送りについて行かなかったことに、ちょっと後ろめたさを感じたんだろう。
結論
40代の女がド派手にズッコケると、傷の痛みよりも、メンタルにきます。
結構なチョップを喰らったみたいに。
しかし、私はあの言葉を知っている。
愛と希望に溢れたあの魔法の言葉を。
なんのはなしですか。