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会えるうちに会っておこう やれるうちにやっておこう


「先生!読んでください」


と、恩師に私が書いた脚本を手渡した。


ある「きっかけ」が過去から届き、



私は恩師に会いに行った。




私が17年前に書いた「きみが生まれるとき」という作品を、先生に演出してもらいたいのだ。もう一度あの作品を舞台で観たい。

先生は読んでくれただろうか。
多忙につき忘れていないだろうか。
まぁ、気長に待つか・・・と自分に言い聞かせつつも内心は返事が気になって仕方がなかった。


そして、年が明けて2日が経った22時過ぎ。


スマホにポップアップ通知が届いた。


『あけましておめでとうございます
 読んだよぉ!!』


先生からだった。


!!!!!!!!!!!!!!!!!!


きた!きた!きた!きた!
どうしようどうしようどうしよう!
「読んだよぉ!!」の続きは?続きはなんだ?
「!!」ってビックリマークがついてるってことは、、、期待していいのか?
ああ!怖い!開けるのが怖い!!!!

どうしようどうしようどうしよう!


私はこのドキドキを自分で処理することができず、ポップアップ通知画面をスクショして数人に送りつけた。

そのうち、みんな大好き米粉ちゃんと、みんな大好きnoterラディからすぐに返事がきた。


米粉ちゃん


ラディ


こんな感じで、私はドキドキしながら眠りについたのであった。


翌朝6時半。
息子たちはすでに起きていてリビングでテレビを見ている模様。
私は布団に入ったまま、先生から昨夜届いたメッセージを開けた。


ドキドキドキ
「読んだよぉ」に続く言葉は何なのか。
ドキドキドキ


ドキドキドキ


先生からの返事は、、


『あけましておめでとうございます
 読んだよぉ!!』



で、終わっていた。



ズコーーーーーーーーーーッ


布団の中でズコーッてなった。ズコーッて。


届いたメッセージは、まさかの「読んだよ報告」であった。



先生!その後!その後のお返事があちきは知りたかですよ!


私は先生に読んでくれたことへの感謝と、「実現できますか?」とメッセージを送り、再び返事をドキドキしながら待つことになった。

しかし、今回はすぐに返事がきた。

『リライトは必要になってくるけど面白い内容なので、かなりいけそうですよ』

とのことだった。


嬉しい。
嬉しくてたまらない。

先生が脚本を読み、「面白い」と言ってくれたことが。
あの作品をもう一度舞台でできるかもしれないということが。


『先生ともう一度芝居を創りたいです』


と、私は送った。


数日後、先生と会うことになった。
2人だと緊張するので、この作品でカエデという役を演じた仲間にも同席をお願いした。
考えてみれば、プライベートで先生と向かい合って芝居の話をするのは初めてかもしれない。


ファミレスに入った。
先生は上着を脱ぐと赤いセーターを着ていた。
相変わらずお洒落だ。
先生は、ミートスパゲッティを注文した。
私たちは先生と会う前に五右衛門でパスタを食べてきたばかりだったのでドリンクバーを注文した。


「お前の作品もさ、いいんだけどね、「死」を描いている部分が多いからさ。今の世の中は悲しいことばかりで。本当に、、変わっちゃったよね、、、。こんな世の中になるなんて僕たちは誰もが想像していなかった」


先生はスパゲッティを食べながら、悲しそうにそう話した。
私たちは真剣に聞いていた。


「だから、せめて演劇の中だけは「生きる希望」みたいなさ、明るいものにしたい」


乗り越えなければならない壁。

リライト

「きみが生まれるとき」の軸となる部分に「死」を描いている。
なぜなら「死」を描かなければ、「生」を伝えることはできないと当時思ったからだ。

しかし、それは17年前の話。


先生のあの目を見たら、私は「今」としっかり向き合わなければならないと思った。


私にとって、かなりの挑戦になりそうだ。

でもやりたい。
やってみたい。

最近、もう「人生」折り返しているよな、とふと思う。
私はどのくらい生きるのだろう。


明日が必ずくるともわからない。


だから

会いたい人には
会えるうちに
会っておこう


やりたいことは
やれるうちに
やっておこう

そう強く思う。


お正月に芝居の同期2人と会った。
1人は数年前に東京から京都の田舎に移住し、2人の女の子を育てながら看護師として働いている。
そしてもう1人は、みんな大好き米粉ちゃん。


看護師として働く彼女の話を聞いた。
1年前は普通に働いていた方が、今、目の前で最期の時を迎えようとしている。元気な姿を知っているから弱っていく姿を見るのが辛い、と。

私たちと同世代だそうだ。


彼女は笑っていた。
でも、横にいた私は彼女の目が潤んでいることに気がついた。
もう随分長い付き合いになるけれど、彼女が泣いているところを私は初めて見た。

生と死に向き合う彼女。

その涙の向こうに、彼女が日々見ている景色がどんなに過酷で尊いものなのかを感じとれた。


家族、友達、大切な仲間、、
会えるうちに会っておこう

一度きりの自分の人生
やれるうちにやっておこう


息子のことで抱えている問題もたくさんあるけれど、私にも私の人生がある。
母が挑戦する姿、自分の人生を楽しんでいる姿は、きっと息子の背中を押すことにも繋がるはずだ。


まぁ、気負わずのんびりいこうと先生は言ってくれたので、少しずつ、舞台「きみが生まれるとき」の再演に向けて進んでいこうと思う。


作品に出てくる子供たち!
もう一度君たちに命吹き込むから、その時まで雲の上で遊んで待ってておくれ!

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