あなたは、鏡
先日のこと。
私の従姉妹が子供を連れて、我が家に遊びに来た。
従姉妹の子供は5歳の男の子、笑顔がキュートなTくん。
我が家のBOYたちは、7歳と5歳。
男の子3人。
私も楽しみにしていた。
特に、繊細兄貴がわくわくしていた。
車好きだと聞いていたので、自慢のラジコンを外で走らせ見せてあげるプランが、もう彼の中に出来上がっていたのだ。
当日。
まだ来ないのか
まだ来ないのか
と、兄貴。
わくわくソワソワが止まらない様子。
プランのことで頭がいっぱいのようだ。
ピーンポーン
従姉妹のTくんが来た。
「あっ!!!来た来た!!テレビ!早くテテテテレビ消して!!」
と、弟に指示。
弟は、玄関にピューッと走ってお出迎え。
兄貴はというと、、
2階へ走って、まさかの
逃亡。
Tくんはニコニコしながら部屋に入ってきて、
すぐにおもちゃを見て回り、弟と遊び出した。
兄貴は、降りて来ず。
しばらく、従姉妹や、私の父母も来たりで、みんなでわいわいおしゃべりをしていたら、
そのうち、モジモジしながらやっと降りてきた。
あんなに、楽しみにしていたのにも関わらず、
全然近寄って行かない。
(まぁ、いつものことだ)
Tくんと弟は、すぐに打ち解けてきゃっきゃっ遊んでいる。
そこにちっとも入って行かない。
(まぁ、いつものことだ)
そのうち、兄が作った手作りの飛行機を見て、Tくんが、
「これ、すごーい!僕も作ってみたい!」
と言い出した。
工作好きらしい。
(おっ、兄貴の得意分野!Tくんと近づけるチャンス到来か?!)
と、思い、
「作り方教えてあげたら?」
と、提案してみた。
すると、
「絶対に嫌」
と、表情が強張っている。
(んんんーと、、彼の頭の中で何が起きているんだ)
私は考える。
Tくんは、作りたがっていたので、工作得意な夫にお願いした。
もしかすると、工作やっていればそのうち近寄って行くのではないかと思ったのだ。
しかし、兄の態度は、
Tくんがすごいと言ってくれた飛行機を壁に投げつけたり、
不満な顔をしながら、「暇だ!」と連呼したり、
お客さんを前に、その態度はいかがなものか、、、ということばかりするのである。
だんだんイライラしてきた。
(んんんんんんーーーとぉぉぉぉぉ、何だ、あの態度は。楽しみにしていたんじゃないのか?工作は得意分野じゃないのか?教えるの好きじゃないのか?)
私は、兄にこっそり聞いてみた。
「気持ち、言ってごらん?」
兄は、不満そうに、そして口を開いた時には涙をこらえ、こう言った。
「だって、ラジコンを見せたかったのに」
外は、雨が降っていた。
ラジコンを外で走らせることができない。
自分のプラン通りにいかない。
残念だ。
面白くない。
見せたかったのに。
すごくすごく見せたかったのに。
見せたかったのに見せたかったのに。
もう、彼の頭の中は、「のに」に支配され、
悲しい負の気持ちでいっぱいだったのだ。
この、「のに」というのは、本当に厄介だ。
私もこの「のに」を、押し付けてしまいそうになった。
せっかく、遊びに来てくれた「のに」。
私は、この「のに」に随分苦しめられてきた(いる)。
なかなか自分から動き出さない。
こんなに、毎日毎日寄り添って付き添っている「のに」
行く間際に、「やっぱり、行かない」と言い、全ての予定が狂う。
行くって、言った「のに」
楽しい時間を過ごせるはずだった「のに」
「のに」の向こうには、
眉間に皺を寄せ、負の感情に支配された自分がいるだけだ。
私は、相手、特に息子に対して「こうあってほしい」という感情が強い。
そして、自分の予定を崩されるのが大の苦手だ。
だから、それらが叶わなかったとき、
「のに」が私に、耳打ちする。
そう。
息子と私は、よく似ている。
私の鏡だ。
私に、そっくりだ。
あぁ、あの感じか。
予定を崩された時、「のに」に支配された時の、
あの感じ。
あれと、一緒か。
今、彼に必要な言葉は何か?
雨降っちゃったんだから、仕方ない
ちがう。
そうじゃない。
「そうかー」と、言って、私は彼をおんぶした。
そして、おんぶしながらキッチンに行き、頂いたお菓子を「美味しそうだねえ」って言いながら準備したり、「どれ食べたい?」と聞いてみたり、
ネガティブモード全開の息子の思考を、別の何かに切り替え大作戦を決行した。
仕方ないでしょ
雨降っちゃったんだから
って、言ってしまいがちだけど、
でも、
兄は、ラジコンで遊ぶというプランが叶わなくなり、それをなかなか受け止めらずにいた。
その彼の「悲しい気持ち」は、「仕方のないこと」で蓋はできない。
特に、息子は、ネガティブ感情になりがちで、
一度その渦の中に入ってしまうと、動けなくなる。
「思考の切り替え」がとても苦手なのだ。
だから、私は、別の何かに目線を外すお手伝いをした。
私にできることは、「お手伝い」だ。
彼の感じた気持ちを変えることじゃない。
私は、それが自分でできるけど、
彼は、まだ、サポートが必要だ。
そんな、私たちにぴったりの、
『魔法の言葉』がある。
大敵「のに」をやっつける、『魔法の言葉』。
それは、
「ま、いっか」
予定どおりいかなかったけど、
「ま、いっか」
「ま、いっか」
私はこの魔法の言葉をまだまだ使いこなせていない。
それでも、『のに』の耳打ちをかわし、
彼をおんぶできたことは、少しはこの魔法を使えるようになったのかもしれない。
私がこの魔法の言葉を使えるようになれば、
きっと、あなたも使えるようになるはず。
あなたは、私の鏡。
きっと、使えるようになる。
「ま、いっか」