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Multilingual − マルチリンガル
先日、ひさしぶりにフランス人の友人と、私の息子も一緒に3人で会った。
イギリス在住40年近く、
それでもフランス訛りが強い、フランス語教師をしている彼女。
イギリスに親戚のいない私の息子のsurrogate grandmother(代理祖母)2人のうちの1人だ。
ちなみにもう1人の代理祖母はドイツ語圏のベルギー人で英語教師。
子ども時代は全てがフランス語の学校に通っていたためフランス語とドイツ語のバイリンガルとして育った人。
のちにイギリス人と結婚しイギリスに移住して約40年。スペイン語留学もしたりと、現在はマルチリンガル。
息子は一昨年、引っ越しのために転校したが、前回の学校でもYear 3 (7歳) から少しずつ第2言語としてフランス語の授業が始まった。
Year 4(8歳)の今、週1回授業があるが、宿題やテストはない。
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学校によってはスペイン語を教えているところも多く、
ドイツ語を教えているところもあるようだ。
そして私はというと…
ずっと昔、学生時代にまだSNSが普及してなかった遠い昔、
フランス人のペンパル(もう使われない言葉?文通友達)がいた。
お互い、片言の英語でやりとりしていたけれど、
フランス語の勉強本も買って、ほんの少しだけ独学したこともあった。
そんなわけで、代理祖母たちと普段は英語で会話しているものの、
時々、フランス語やドイツ語のレッスンが始まる。
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今回は外でランチをして
息子の大好きなハトに餌をやって楽しんだ後は、
うちでフランス語を勉強しながらボードゲーム(すごろくなど)をすることに。
数字が繰り返し出てくるので簡単な数字は一応マスターできた。
でも他は…
「ヘビ」 Le serpent、ル セポ?
「さかな」 Le poisson、ル ポヮソン?
ペンギン大好きな息子なので…
「ペンギンが大好き(love)です。」J'aime le pingouin、ジェム ラ パングゥワン?
など、さまざまな言葉が出てくる。
息子はどの発音も一度で "Bravo(ブラーボー)!" "Tres bien(トレビアン)!" と言われ合格!
でも私が発音してみると…
友人と息子:「ん?なんか違うな。もう一回J'aimeって言ってみて。」
私:「ジュェム?」
友人と息子:「うーん、そうじゃなくてJ'aime。」
私:「…ジィェム?」「ジェェム?」
友人と息子:「Gemみたいな発音じゃなくてJaなんだよね。」
私:「ジェ、ジュぇ...あー!もう無理!!どこが違うのか分からんし!」
という繰り返し。
いくらゆっくり聞いてもダメ。
「あ、私は目で見て聞いて理解する人だから、ちょっと書いてみて?」
と、綴りを書いてもらい挑戦しても進歩なし。
私がテキスト片手に、綴りを見ながら集中して苦戦している横で、
フランス語の勉強よりもゲームを楽しみたい息子。
遊びに集中していて、ながら聞きなのに、
一発で "トレビア〜ン!"。
自分の語学センスのなさにやる気が失せる。
移民の多いイギリス。
もともと母国でも2か国語以上習って育ったり、
若い時に家族で移住してバイリンガルやマルチリンガルとなった人も少なくない。
私の周りをみても、
子供の時から2か国語以上使って育った人たちはやはり耳がいいと思う。
言葉の理解、吸収も早い。
むかし、"絶対音感のあるミュージシャンは耳がいいので言語習得にも長けている"と聞いたことがある。
私は3歳から12歳までピアノを習っていた。
息子にも一応4歳からピアノを習わせているが、
パンデミックや家庭の問題で最初からとぎれとぎれでしかレッスンできていない。
絶対音感はない息子くん。そして自信満々の本人には言えないがひどい音痴だ…。
マルチリンガルの、
ベルギー人代理祖母も別の友人達も音楽は学校で習った程度。
特別音楽に秀でた人は知らない。
昔、東日本大震災の直後にイギリスのニュース番組に某日本人音楽家の方が出ていた。チャリティーイベントの紹介と募金を呼びかけていた。
ロンドン在住の、少なくとも日本では有名な音楽家だが
英語は流暢とは言えなかったのが記憶に残っている。
奥さんが通訳のように主に話していたと思う。
というわけで、
絶対音感=語学に長ける説は間違いかもしれない。
とにかく、語学のセンスは持っているらしい息子。
大好きなドラえもんからも自然と日本語を学び、
時々、息子にしては高度な日本語を突然話してきて
びっくりさせられる。
「どこでそんな日本語習ったの?」と聞くと、
「ドラえもんが言ってたよ。」との返事。
ドラえもんのアイテムはほとんど名前を完璧に覚えている。
言語の習得はその文化や言語を使う人々を理解することでもあると思う。
息子は、正反対のような日本とイギリスの2重国籍をもつ。
多国籍なイギリスでもまだまだ人種差別はある。
個人的には黒人差別よりもアジア人差別のほうが強いと感じる。
息子はそんな2つのバックグラウンドをもつ人間としてこれから悩むこともあるだろう。
両方の言語を、そして文化を学びながら
自分のアイデンティティを見つけてほしい。
いろいろな文化や人に触れ、borderlessな世界で自由に生きてほしい。
きっとこれからは更に息子のような人も増え、グローバルな社会になっていくはず。
そうすれば人種差別もなくなるのではないだろうか。
自由に羽ばたけ息子くん!!