煙草を吸う女は嫌いなんだよな
こんな日々が続けばいい。
だれかと何かでつながって
あったかい気持ちで居られたら、わたしはそれでいい。
世はまだ、結婚をするかしないか だなんて討論を繰り返す。
どちらかというと、結婚願望はあるのかもしれない。
それは養われるから安定する、とでも?愛される安堵感?
「女の子は仕事の将来とか気にしなくていいだろ、どうせ家庭に入るんだから」なんていう、おじさまたちに対して
ショートヘアがよく似合う金髪の幼馴染が「古い考えやなあ」と、馬鹿にしたように笑った。彼女はバツイチで、専業主婦だったから”家庭に入る”って、簡単じゃないよ、と続ける。
わたしはふと考える。
結婚か…
あいつ、安定なんてしていないから。
安定を望むなら、わたしの結婚はわたしの大好き”だった”あいつとではないなって、思った。
少し前に失恋…お別れしたし。
引きずり続けるわたしは馬鹿だなあ。
「結婚なんて制度だから、約束じゃないのよ。紙切れだけよ」
いつものお店で、ママがそういっていた。
ありがちなセリフが、こころに刺さる。
そしてママは続ける。
「だからね、あなたは紙切れ以上の気持ちを、まだ知らないのよ」
そうなのかもなあ
夜は寒い。ベランダの煙草の香りは、しばらく前に消えていたから
わたしは無性にあいつが吸っていたたばこの匂いを嗅ぎたくなって
深夜というにはまだ早い23時、早足でコンビニに向かう。
治安のよろしくない街だから気をつけろ、この道はひとりで歩くな。
なんて言われてたっけ。
目の下が真っ黒なコンビニ店員に、銘柄に割り振られた番号を伝えて
7ツ星をソフトで買う。ハードはかさばるからって、いつもこのヘニャヘニャのパッケージを見てた。
部屋に帰ってすぐにベランダに出る。
わたしも”それ”を吸ってみる。あいつがおいてった100円のライターで、火をつけ、吸ってみればすぐにむせた。
そして思い出す。出会った頃、あいつが放った言葉
「煙草を吸う女は嫌いなんだよな」
おれは吸うけどさ、おまえはやめときなよ。身体にわるいし。
ベランダは本当に寒い。こんなことをしている自分自身が馬鹿みたいで、少し泣いた。すこしのつもりだけど目が腫れていくのがわかる。
わたしには受動喫煙くらいが丁度いい。
あいつ、銘柄とか変えたりしたのかな。
いま、小柄なあの背中をぎゅってしたらどんな香りがするんだろう。
もしかして、たばこなんて嫌われるから、とか言ってやめてたりして。
わたしは一つ、白くなるため息を吐く。