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Photo by
yuta0842
【よみもの】夜を超えろ
シングルの薄っぺらい布団に残った香り。
夜遅く、毛布を被って思いっきり息を吸う。むせるくらいに腹にちからをこめて。
鼻をくすぐるのはもちろん自分の匂いではなく、連泊していった想い人のものだ。
朝が苦手だから、日がよく入る窓辺に頭を向けられるように枕を配置する。今日も月明かりがこの部屋を照らしている。きのうはふたつの影が重なっていたけれど、今日は自分の影ひとつ。
起き上がって窓辺に寄り添う。昨日までの香りはいまの自分には毒でしかないから、避けるようにして窓の外、月の香りを嗅いでみよう。布団の残り香は寂しさを呼ぶ毒だ。
正直な話、奥の奥で心に触れたいという肉欲というよりは
愛情を持ち寄るだけのふれあいが好きなのかもしれない。だから余計に、湿っぽい思いになるのだ。その軟らかい頬に触れて
軽く触れるだけのキスだけで、夜を越せる気がするから。
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