喫茶店、奥の席。ついてすぐに注文。
アイス…えっと、ブラックでお願いします。
すっきりと、苦い。少しだけ酸味があって、そして奥が深い味。
この琥珀色の飲みものはいつも、アイスの無糖と決めている。
と、彼は言う。
「苦いな」
「なら飲まなきゃいいじゃん」
「いや、いいんだ」
「じゃあ文句言わないでよ」
「文句じゃねえよ」
わたしのは、お砂糖たっぷりで、ミルクもたっぷりだ。
この男のいう、奥の深さはずっとわからないと思う。
…それでいいんだけど。
ひといき、間をおいて。息を吸って、深く。
深呼吸に混じるのは、香ばしい香り。
コーヒーのにおいだ。