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1年も気づかなかったなんて

そろそろなことは、わかっていた。頭のなかに、画像のまま記憶しているそのページの、数字がそろそろなことは。

パスポートの 有効期限が切れていた。
しかもちょうど1年前。

全然、そろそろ、じゃなかった。

◇◇◇

2011年の2月。東日本大震災が起こる前の月、わたしは友人のウェディングのためにバリにいた。

(ちなみに、インドネシア入国の際はパスポートの有効期限が6ヶ月以上なければならず、ギリギリ6ヶ月を切っていることに出発直前に気づいたわたしは、あらゆる手を使って新しいパスポートを手にしていた。てか、10年前も同じようなことしてる)

その年の秋には短期留学でNYへ。IDがわりにあらゆる酒場、あらゆるクラブでこのパスポートを見せたっけ。

ポートランドに行ったのは、2013年か4年だったかな。当時、街づくり系のひとたちのあいだでポートランドが流行っていて、帰国後いろいろ聞かれたなぁ。

義理の弟の結婚式で初めてグアムに行ったときは、「VISAがあるならESTAいらないのに」って言われって初めて自分の学生VISAがまだ生きてることに気づいたんだった。

初めてヨーロッパに行ったときは、フランスの入国スタンプを押されて嬉しかったな。その後、EU内を色々まわったけど、ホテルに泊まるときはどこでも必ずパスポートを提示してくれと言われたのに、フランスだけは何も言われなかった。パリのテロ前のことだ。

子どもが4か月のとき、彼女自身のパスポートも取った。「この先、必ず子連れでも海外に行く!」ための、願掛けのような気持ちで。自分以外のパスポートも、無くさないようにと心を配る必要がでてきた人生になった。

◇◇◇

また申請して、取ればいいだけの話なのだけど。

30代をともに過ごしたパスポートをパラパラとめくり、色とりどりのスタンプを眺めていたら、なんだかずっと仲のよかった親友と、道が分かれるような錯覚に陥った。 

ここまでは、ありがとう。
わたしは、こっちに行くね。
あなたは、そっちに行くんだね。

がんばってね。
応援してる。
また10年後、お互いどんな景色を見てきたか、色々話そう。

–そんな会話を交わすような。

◇◇◇

「コロナがなければなー、気づいてたと思うんだけど」

メソメソしているわたしに夫が言う。

「◯ちゃん(次女)のパスポート取るとき、一緒に取ればいいやん」

そうだそうだ。また保管すべきパスポートが増えるのだ。
新しい10年を手にするわたしは、これからどこでどんな思い出をつくるのだろう。

#365日の気づき #エッセイ #海外



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Mika Sudo
Thank you for reading!