
変化
今年もコロナ禍の影響を受けて、公演、特に自分のライフワークとも言える演歌のコンサートは、決まっていた九割以上が中止もしくは日程未定の延期という散々な一年でありました。
昨年から続くこの状況下、コンサートが再開する日に備えコンディションを万全に整え、モチベーションを保つことは正直、とても難しいと痛感しています。
いくら自宅で声を出して練習を重ねても、とどの詰まり私たち歌手というものはお客様の前、舞台の上で初めて生かされ、成長できるものなのです。
ギアをニュートラルにしたまま、走るでも停まるでもない状態で二年近くの歳月を過ごしていることは、歌手の「生命」に於いて大きな大きな痛手と感じずにいられません。
どんなに性能の良い車であっても、その状態では走る車として劣化すると同じく、歌手としての劣化も早いものだと色々な場面で感じています。
本能で感じて動けていたステージ勘、日々やっていたからこそパフォーマンスできる体力、日々良い緊張感の中で温まっていたからこそ歌える声帯、毎日着ていたからこそ皮膚と変わらない感覚にまでフィットしている衣装。
すべてが自分の体から離れて行ってしまうような虚しさを覚えます。
世の中に起こることには、人間の力ではどうもしようのないことがあるわけですが、この二年近くの出来ごとは私たちにとって先々どんな意味を持つことなのでしょうか。
当初感じた、未知のウイルスに対する「とてつもない恐怖」から様々な心情の変化を経て、今度は自分の将来、子や孫たちの未来に対して「とてつもない恐怖」を感じながら暮らしているのではないでしょうか。
まったく混沌とした時代です。
そんな今――。
私の心を癒やし、熱いエネルギーを注いでくれた歌があります。これまで何気なく聴いていた歌なのに、その歌詞のひと言ひと言が響いてきます。
彼は言った
「随分長い時間がかかっているが、私は変化が訪れることを知っている」
以前は考えたこともあった。
「続けていくことは出来ないだろう」と…
けど何故か今は信じている 私はやり続けていけるだろうと
困難はつきまとう 長い道のりを越えていくすべての段階に
でも私は信じている 今夜、私に変化が起こると
私に変化が訪れると
♫ A Change Is Gonna Come
大好きなアレサ・フランクリンも歌った歌です。
そう! 変化が起こるのです。
こうして想像すらできない世の中に陥ったように、今度はまた私たちが信じられない変化を遂げる番です。
アレサの声が、そう信じさせてくれます。
神野美伽 MFC198(2021/12)