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【毒を君に】1:0:0

私はとある高校で教師をしている。
友人には女子高生と過ごせて羨ましいと言われるが、生徒なんて子供すぎる。女性としては見ることができない。

彼女を除いては。

容姿が特別に良い訳ではない。
成績がずば抜けて良い訳ではない。

ただ、歳には似つかわしくない気高さと、それに見合う優しさを持っている。

猫のようにコロコロ変わる表情。
綺麗な仕草。
鈴を転がすような声。

気高さと幼さの不安定なバランス。

そのどれもが私を惹き付ける。

「君は本当に笑顔が素敵ですね。
 思わず見とれてしまいます。」

最近気が付いたこと。
彼女の癖。
照れると声が低くなること。
それが聞きたくて、私はわざと本音を一滴たらす。

彼女の顔は赤くなり、鈴の音が低くなる。
それだけで、たまらなく愛おしい。

ただその気持ちを伝えることはない。
私は教師で、彼女は生徒。

それなのに私は彼女を誰にも渡したくなくて、本音の雫で彼女を繋ぎ止める。

そんな狡さを彼女は知らない。
私の狡さを気付かせない。

そして今日も本音という名の毒を一滴たらす。

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