愛おしいからこそ
小さいってだけでとにかく可愛いと感じる。
ヤギの子どもも例に漏れず、めちゃくちゃ愛おしい。
とにかく、跳ぶ。そこ、跳ぶ要らんやん、ってとこでも跳ぶ。普通に駆け足の途中で跳ぶ。トランポリンみたいに跳んで空中でひねりを入れてみたり、ヤギの子どもはとにかくアクロバティック。
島の大先輩によれば、
「子やぎは自分の頭の上を飛び越えていきよったよ、2メートルは跳ぶさーねー。」
という体験談。
1週間経つかたたないかぐらいで、木の葉も食べ出します。もちろん母ヤギのお乳も飲みながらも、いっちょ前に反芻します、ただし、早送りで!?
最初は触られると、パッと逃げていたアルミ。そのうち撫でてをさりげなくおねだり。私がミー子をヨシヨシしていると、アルミは直ぐそばに来てちょこんと座ります。『私も撫でて。』という感じ。そして撫でてあげるとじっとしています。
そんな愛おしい子やぎアルミだからこそ、除角と向き合うと決めました。除角には様々な見解があるかと思います。
島の在来種のヤギは、雄•雌関係なく角があります。島の多頭飼いの小屋で、何かの拍子に角がワイヤーメッシュで作った壁に食い込み、パニックになった雌ヤギは角の付け根から血を流して動けずにいました。幸い大怪我には至らなかったようですが。
時にヤギの角の生え方によっては、頭突きごっこがヒートアップすると、流血沙汰になる事もあるという情報も。
そんな訳で、除角決行。
我那覇さん曰く、
「鉄板をバーナーで赤くなるくらい熱して角の芽を焼いたらいーさー。」
だそうです。
『いーさー。』ではなく、やっていただけないでしょうか、、、?と心の中に浮かんでも何故か口に出せない不思議。
SNSの動画情報によれば、沖縄では除角のプロらしき方がいて、表彰をいただいているそうです。それぐらい自分でするには色んな意味でしんどくて誰かにやってもらいたいことなんですよね。でも、何故かやってもらえませんか?の一言が言えないこの不思議。
自分でやるとなれば、インターネット先生が頼りです。我那覇さんの方法はかなりワイルドに感じました。ですが、インターネット先生の方法もほぼ同じ原理。ケアすべき事、身近なものでやれる工夫、そして具体的な手順を発信してくれていて本当にありがたい(ただし閲覧注意で、ヤギに除角を施す必要がある方だけご覧くださいという配慮があります)。
ただ1人ではどうしてもできません。除角を施す人と、子やぎを抱いて保定する人、2人がかりです。
「何でそんな事するの!?」
棟梁は除角に大反対。
私だってアルミに苦痛を与える事なんてしたくない。けれど除角は生後1週間程には施さないとしっかりと骨芽が取れず、除角をしても角が生えてきてしまって失敗確率が上がってしまうそうです。アルミはすでに生後2週間は経ってしまってるので既に遅い。やるなら躊躇している時間はありません。
棟梁のお友達の島ンチュ、中田さん(仮名)にお願いしました。中田さん申し込みを受けてくれました。本当にありがたい。
中田さんと除角の手順の動画を共に確認。中田さんが抑える係、私がアルミの角の箇所に熱した鉄道具を充てる係。
アルミを抱いて連れ出そうする時に、親であるヤー子は何かを察したのでしょう、アルミを庇うようにして立ちはだかり、「ヴェー!」と鳴きます。アルミを捕まえるのに一苦労。私はヤー子を抑え、その隙に中田さんがアルミを捕まえてくれました。
いざ、除角。
「メメー!」
アルミが苦痛の鳴き声をあげます。
「そんなまでしてする必要あるの!?」
棟梁がたまらず怒ります。
けれど、ここまできたら中途半端はアルミに申し訳ない。
私と中田さんなりにやりました。が、成功とは言い難い感じ、、、
中田さんも辛いからか、終わったら直ぐに帰られました。申し訳ないやら、お礼に中田さんのお好きなお酒を届けました。
「絶対に避けられると思ってたのに、なんて事は無い、逃げもせずに寄って来てくれた。」
次の日、中田さんがアルミの様子を見に来てくれました。ホットされたようです。
そう、アルミはいつものように飛んだり跳ねたり、『撫でて』アピール。動物のこういうあっさりした感じ、心底尊敬します。どうであれ飼い主達の愛からの行動だったと動物なりに感じとってくれてる、私はそう信じてます。