新しい家族
ヤギは群れで生活するそうです。独りぼっちは嫌みたいです。寂しがり屋です。インターネット先生によれば、猫などと一緒に飼った方が良いらしいです。確かにミー子は島のネコを見つけては、鼻を近づけてお友達になろうと試みます。けれど体格の差がありすぎて、猫は大抵逃げ出します。
私がお仕事などで出かける時、ジーーっと見つめてます。鳴き続けている時もよくあります。帰って来ると垂れ耳を上下にパタパタさせながらリードの許す限り走って駆け寄って来ます。可愛いなぁと思いつつ、切なくなります。
外の草を食べさせる為に、リードを何処かに縛って、しばらく見守ってる間はよく食べます。けれども用事を済ませる為に離れようとした途端に、『ムウェーーーー』って鳴き出します。
ヤギって、人間が鳴き真似する、いわゆる『メェーー』と鳴く子もいます。
ウチのミー子は色んなパターンを持ちます。『ンンンン』とか、『ムウェーーーー』とか、『ンンンンワァ』とか『ヴェーーーン』とか『ンンンンメッ!』とか。話しかけてる感じとか、餌くれとか、寂しさをこらえてる感じとか、寂しさ猛アピールの感じとか。独りぼっちにされると分かった時は、寂しさ猛アピール鳴きをします。棟梁もこの寂しさ猛アピール鳴きは気がかりなようです。
とにかく独りぼっちだと鳴くなぁ、、そもそも群れる生き物だからそばに仲間がいる事が自然なんだよなぁ、、と。そんな事が頭の片隅にある日々を過ごしていました。
「ヤギもらわない?」
島のヤギ飼いのお1人宮里さん(仮名)に声をかけられました。
「いじめられてるヤギがいてね、雌なんだけど、みんなから突かれるんだ。もらわない?餌にもろくにありつけないから痩せちゃって。隅っこの方にじっとしてあまり動かなくなっちゃってね。」
ヤギが2頭になるという事は、餌も倍、うんこも倍。ドーンと頭に浮かんだけれど、一度棟梁に相談してみる事にしました。
「直ぐ連れてきて!」
棟梁、おそらくミー子の鳴き声にまいっていたのでしょうね。
宮里さんの小屋に向かいました。宮里さんのヤギ小屋には所狭しと20頭程のヤギがいます。このヤギ達に突かれ続ける生活は相当のストレスなはずです。
いじめられっこのヤギ、痩せてるのはもちろん、驚いたのは前足の蹄が15センチくらいに伸びててピエロの靴みたいに反り上がってます。ペタペタ歩いてます、といいますか相当歩きにくそう、、
ヤギを軽トラックの荷台に乗せます。本業が大工の私達の軽トラックはヤギを乗せる仕様になっていません。ヤギの大好きな桑の葉でおびきよせて捕まえて荷台に乗せたら、おさえつけます。棟梁が運転手、私は荷台でヤギをおさえる役割。大好きな桑の葉を咥えているのに食べません。固まってます。切なくなります。
家に着いたら、棟梁が真っ先にしてくれたのは、連れてきたヤギのピエロの靴みたいな爪の削蹄。私はヤギの角を掴んで体を固定して、棟梁は剪定バサミでバツンっと切ってくれました。こーいうとこ、いい奴だよな。と、また上司に対して、つい、上から目線(汗)
「棟梁、この子の名前どうする?」
「ヤー子。宮里の ミ と ヤ で、ミー子とヤー子」
という訳で、新メンバー ヤー子が家族の仲間入りです。