番人と番ヤギ
ヤー子の出産前日の夕方から、ミー子はけたたましく鳴いてました。発情の鳴き方にも増して、喉を潰すんじゃ無いかという程に、ほぼ夜通し鳴き、ヤー子の出産時、出産産後もずっとずっと鳴き続けました。
普段は、
「ウェー、ムウェー」
という感じが、
今回は、
「ヴェェェェェーーーーォ!、ムヴェェェェェーーーーーォ!」
という感じです。
周りに知らしめると言いますか、少し威嚇っぽいといいますか。
出産前夜から当日、1日半ミー子は鳴き続けました。そして翌日は爆睡してました。まるで役目を終えたかのような。
真実は分かりません。けれど私も母もミー子なりにヤー子と子やぎを守ろうとしてたんじゃないかな、と結論づけました。そうだとしたら、なんて健気なんでしょう。素晴らしい献身です。
母は、実家からいらなくなったCDを持参。カラスが留まりそうな木の枝、ヤギ小屋の柵、洗濯物干しなどそこらじゅうにブラブラと取り付けてくれました。キラキラ光るものを嫌うカラスに対する、できる限りの威嚇。
棟梁の心遣いで、ヤー子が出産した日は私を仕事休みにしてくれました(こういう融通を利かせてくれるところは、人間味があるなと感動します)。けれど、そう何日も仕事を休んでヤギにつきっきりなれないところ、母が見守りをしてくれました。母からするとミー子とヤー子は私の娘、つまり孫で、産まれた子やぎはひ孫なのだとか。
出産から数時間後、我那覇さんも様子を見に来てくれました。
「朝産まれたヤギは、この家に良い事をもたらすはずよ〜。」
と。
ヤー子が無事で、超可愛らしい子やぎがいるだけで、十分すぎるくらい良い事。
私自身は出産の経験がありません。命の誕生にライブで立ち会うことは初めての経験でした。理屈抜きに何だか感動します。何に感動してるのかを言葉にするよりも深いところで何かを感じてる、そんな感動。
産まれた子やぎは、数時間後にはピョンピョコ跳ねたり飛んだり。
そんな子やぎの名前は既に決まってました。
アルミ です。
いきさつは、島のどこかお家のペットが双子で、
サラン と ラップ
という名前をつけたと聞きました。
それじゃあ、うちは、ヤー子の子とミー子の子2頭で、
アルミ と ホイル
にしようと冗談のノリが本当の名前になりました。
ゆるいね〜、離島は。この緩さが好きな時も。
出産イベントというドラマを経験し、平和なミーヤー牧場に、新しい生命がもたらす賑やかさが加わりました。