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うちの子発達障害かも?①~自閉症スペクトラムと診断されるまで~

不安にかられて検索しまくっているあなたへ

うちの子発達障害かも?

そんな疑いが頭をよぎった時、親なら当然、うろたえ、不安に思い、あるいは悲しみに暮れるかもしれません。

そのように感じるには、何か、我が子に心配な行動や発達の遅れがあるに違いないし、自分の子が「障害者(であるかもしれない)」ということを受け入れるには、心の準備が必要でしょう。

そういう状態の親が最初に取る行動は、まず、ネットで検索しまくることだと思います。

「うちの子発達障害かも?」と思い始めた当時の私も、そうでした。

そんな親御さんに読んでもらいたいと思い、今回の記事を書きます。

ひとつの体験談、我が家のケースとして、ご参考にしていただければと思います。

執筆時6歳6か月の長女みるく(仮名)が、3歳0ヶ月で自閉症スペクトラムの診断を受けるまでのお話です。

保育園で「トトロ見せすぎ」と注意される

我が家の長女、みるくが2歳9ヶ月のこと。

通っている保育園での保育参観で、次のようなプリントが配られました。

『テレビやスマホの見すぎに注意!』

テレビやスマホに子守をさせていませんか? 見せすぎは子どもに悪影響を与えます、というもの。

これを見た私は、「あ、これは、うちへ向けての注意だな」と思いました。

当時のみるくは、「となりのトトロ」のDVDを、毎日毎日1~2回ずつ、繰り返し見ていたからです。

さらには、寝る前に、トトロの冒頭からラストのシーンまで、自分で演じて再現してから寝る、というルーティンがありました。

そのために、DVDの視聴時間は一日2~5時間程度、寝室に入ってから寝るまで1~2時間程度を要していました。

そのことを、園のおたより帳に「ちょっと困っています」と書いたことがあったのです。

保育園の先生は、「これは、トトロの見せすぎでは?」「トトロの見せすぎで、セリフしかしゃべらないのでは?」と心配になり、直接我が家に注意するのではなく、保育参観の機会に、全保護者に注意喚起するというかたちを取ったのではないか?と、内心、グサリときていました。

セリフしかしゃべらないみるく

そう言われれば、みるくがしゃべる言葉のほとんどが、トトロや好きなCMのセリフなのは気になっていました。

ほかのママさんたちに「おしゃべりが上手ですね」と言われるくらい、わりとペラペラと流暢にしゃべるのですが、その内容は、どこかで聞いた何かのセリフの再現なのです。

「今日は保育園で何して遊んだの?」などと質問をしても、少し困ったように黙り込んで、自分の言葉で伝えるということはほとんどありませんでした。

保育園の先生が言うように、毎日DVDばかり見せていたから、みるくの言語能力に影響を与えてしまったんだろうか……。

だとしたら、劇的に脳が発達していくこの2年という貴重な時間に、取り返しのつかないことをしてしまったのではないか……。

自分の育児が間違っていたのではないかと、私は青ざめました。

最初の歩行が1歳10ヶ月

みるくには、しゃべる言葉がセリフのみで会話が成り立たないことのほかに、発達がゆっくりで心配になることがほかにもありました。

まず、1歳半検診時に歩行ができなかったこと。

検診会場で、ほかのお子さんが元気に走り回っている中、みるくはハイハイ移動で、何となく恥ずかしく、不安な思いをしていました。

結局、再検診が予定されていた1歳10ヶ月に歩き始め、再検診の時には普通に歩いていたため、問題なしと判断されていたのです。

ついでに、1歳半の検診時に、指差しもできていなかったのですが、当時の私は、そのことをさほど重要視していませんでした。

今思えば、1歳半で指差しと歩行ができていなかったことは、発達障害であることを見極める最初のサインであったと思うのですが……。

みるくが初めての子ども、初めての子育てで、定型発達の子どもの“普通”の成長過程がわからなかったし、こんなものかなーと思い、「人より慎重でのんびり屋さんなのかな」くらいに受け止めていました。

この受け止め方自体は間違いではないのですが、その程度が「障害」の状態であるとは、この時点では気づいていませんでした(あるいは、この時点では「障害」の状態ではなかった)。

慎重でのんびり屋さんなみるく

改めて振り返ると、みるくの「人より慎重でのんびり屋さん」な性質は、歩行や指差しに限りませんでした。

例えば、アンパンマンやしまじろうのイベントに連れて行った時のこと。

周囲の同年代のお子さんたちは、ステージ上のキャラクターと一緒に体を動かしたり、歌を歌ったり、お返事したり、楽しそうにしていますが、みるくはまず、会場に入れない。

怖がっているのか、驚いているのか……、なだめてすかして、やっと会場に入るというのが常でした。

そして、イベント中は微動だにしない。

終わってからやっと緊張が解けるのか、小さい声で「楽しかった」と無表情につぶやくだけ。

そのわりに、帰ってからは、そのイベントの再現を何度も何度も繰り返すのです。

そんな子だったので、「初めての場所や場面には警戒心が強いのだろう」「感情表現は乏しいけど、楽しんでくれているのかな」と思っていました。

ほかにも、運動能力が人より劣っていることは明らかで、公園遊びは苦手で遊具ではほとんど遊ばなかったし、ジャンプができなかったり、階段の上り下りも人より遅かった。

でもこれは、私たち両親ともが、筋金入りの運動音痴のため、血筋と諦めていました。

発達がゆっくりで、凸凹

このように「慎重でのんびり屋さん」なみるくでしたが、これはつまり、「発達がゆっくり」という言葉に置き換えることができるのではないか、という思いに至ります。

「発達がゆっくり」。

つまり、「発達障害」という言葉が頭をよぎりました。

そこからは、「発達障害」というワードで、検索しまくる私。

発達障害に気づくきっかけとか、発達障害にはどういう症状があるのかとか、発達障害の区分(自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD))についての情報を集めたり、2~3歳児の正常な発達は?などなど。

そうやって検索していると、みるくの行動と発達障害(主に自閉症スペクトラム)の共通点が多いことに気づきました。

まず、みるくがトトロのセリフを繰り返し再現するのは、自閉症児に多く見られる特徴の「遅延エコラリア」に該当するのでは?と思えました。

また、発達障害の子を指して、「発達が凸凹」と表現することも多いですが、みるくの場合も、これに該当するように思えました。

みるくは、運動能力や会話に関しては、人より遅れている(凹の部分)と思わざるを得ませんが、トトロのセリフを冒頭からラストのシーンまで、ほぼすべてを(一字一句完璧ではないものの)暗記しているほど、記憶力が良かったりします。

このような能力については、人より優れていて(凸の部分)、「発達に凸凹がある」と言えるでしょう。

繰り返し繰り返し同じDVDを見ていることも、興味が限定的で強いこだわりを示す自閉症の特徴に当てはまると思いました。

また、“普通”の2歳9ヶ月の子は、どのくらいの発達なのかも気になり、検索しまくりました。

3歳児検診も控えていたので、試しに、3歳児検診ではどんなことをするのかも検索しました。

まず、眼科の検診で、Cの空いている方向を指で指さないといけないという定番の課題がありますが、試しにみるくに「輪っかみたいな、Cみたいなのがあるよね?これの、空いているほう、空いているってわかるかな?黒じゃなくて、白くなってるほうの方向を、こっちって指でやってみて?」と伝えてみますが、ポカーンとしていて、案の定伝わっていません。

また、リンゴや傘の絵を見せて、「赤くて丸い果物はどれ?」とか、「さすものはどれ?」と言って、指差しさせる課題がありますが、それも、「リンゴはどれ?」や「傘はどれ?」はわかっても、「赤くて丸い」=「リンゴ」の結びつきはできていませんでした。

この時点では2歳9ヶ月ですので、3歳児検診が実施される3歳半までは半年以上あるわけですが、あと約半年で、これらの課題ができるようになっているとは、到底思えませんでした。

これは、まず自閉症で間違いないな、と思いました。

意外に冷静な私

自分の子が発達障害だとわかり、泣き暮らす親御さんも多いと思いますが、みるくが発達障害だと確信した私は、この時点でも、診断確定した時点でも、不思議と冷静でした。

発達障害であることの苦労や不安が、この時点では具体的にイメージできていなかったことがその理由かもしれませんが、発達障害に対して、それほどネガティブなイメージを持っていなかったことも影響していると思います。

知人・友人にアスペルガーの人がいたし、発達障害を含め、精神障害のコミュニティーに入っていたこともあるので、発達障害に対し、まったくの無知というわけでもありませんでした。

それに、今までのみるくの育児で、何となく違和感を感じていたこと……初めての育児だからよくわからないけど、こんなものなのかな、でも、ほかの子と比べたら、いろんなことが、人より遅かったり違っていたり、なんでかなと思っていたことの原因・理由が、「発達障害だから」ということで、ほとんど説明がつくな、と思ったら、逆に、スッキリというか、納得できる気持ちでした。

最初に、保育園の先生が「テレビの見せすぎで言葉の発達が遅れているのでは?」と、暗に疑問を呈してきた時のように、「私の子育てが間違っていたのかな」「関わり方が希薄だったのだろうか」と悩む必要はなくなりました。

発達障害だとわかれば、その障害に合った適切な対応をしていけばいい。

この時点で、自分の自治体で発達に不安のある子を持つ親が相談すべき機関がどこであるかも知っていました。

自分の中で「みるくは自閉症なのでは?」との思いを固めた翌日、夫に意見を求めました。

夫の反応は、「自分はそこまで心配していないが、相談するだけならやってみていいんじゃない?」といったようなものでした。

私はさっそく、市の相談機関に予約を取りました。

診断

予約を取った、と言っても、すぐに日程が組めたわけではありません。

この時点で、約1ヶ月後の相談になるとのことでした。

そして、最初に「発達障害かもしれない?」と思い始めてから2ヶ月後の、みるく2歳11ヶ月に、最初の相談を行いました。

その時には、確か、私ひとりで相談機関に出向き、みるくの出生時からの生育過程や、相談に至ったきっかけをお話したと思います。

1時間ほどお話をしてから、児童発達支援を受けることができることや、その申請の方法を教えてもらい、みるくの発達検査や医師による診断を希望するかをきかれました。

私は、発達検査と診断を希望すると伝えました。

このあたりは、相談員から、かなり慎重に確認されたのを覚えています。

ほかの親御さんの中には、発達障害であることを確定的に診断を受けることに抵抗を感じる人がいるためではないかと思いました。

私は、先ほど述べたように、みるくが発達障害なのかどうかをを知ることで、むしろ今後の成長の助けになると感じていたので、ぜひはっきりさせたいと思いました。

初回の相談からまた1ヶ月後、みるくの発達検査と、医師による診断が行われました。

発達検査は、新版K式発達検査でした。

検査結果は、次回の相談時(また1ヶ月後)になるとのことでした。

医師による診断は、医師が待機する部屋に入り、簡単に挨拶した後、医師とみるくがコミュニケーションを取りながら、部屋にあるおもちゃで10分ほど遊ぶというものでした。

その後、医師から説明があり、これは(短時間の観察のみであるため)簡易的な診断になるとの前置きがありましたが、自閉症スペクトラムで間違いないだろうということと、自閉症スペクトラムを含めた、発達障害全般の概要のお話がありました。

「あーー、やっぱりなー」と、あらかじめ自分で確信を持っていたこともあり、特に動揺することはありませんでした。

そして1ヶ月後、発達検査の結果を受け取ることになっていましたが、ちょうどその頃熊本地震があり(被災地在住です)、さらに1ヶ月後のみるく3歳2ヶ月の時に、検査結果を受け取りました。

発達検査からも、発達の凸凹が顕著に見られ、発達障害の傾向を示していました。

知的にもDQ85で、やや遅れが認められました。

”普通”でなくてもいい、”その子らしさ”を受け止めて

「うちの子発達障害かも?」と不安にかられている親御さんがこれをお読みなら、恐れずに、まずはお住まいの地域の相談機関に相談されることを、ぜひともお勧めします。

私の居住地では、予約の電話をかけてから、実際に相談を受けるまで約1ヶ月でしたが、数ヶ月単位で、もっと待たなければいけない地域はザラにあると聞きます。

子どもの成長において、この待ち時間の数ヶ月は、相当長いと感じます。

ちょっとでも「あれ?」と感じたら、すぐに電話をするくらいの気持ちでいたほうがいいと思っています。

もし本当に発達障害だったら?ということは、後で考えればいいのです。

そして、仮に発達障害であったとしても、必要以上に悲しまなくても大丈夫です。

発達障害であるということは、“その子らしさ”の一部であるにすぎません。

もちろん、発達障害であるということで、生きる上での困難な壁にいくつもぶち当たることになると思いますが、トトロを繰り返し見ることも、セリフを丸暗記することも、未だに階段が上手く下りられないことも、”みるくらしさ”のひとつです。

それを否定してしまったら、我が子自身を否定しまうことにもなってしまいます。

発達障害のことを考える時、”普通”とは何かを考えざるを得ません。

発達障害児の親であると自覚してまだ数年の私ですが、発達障害の人たちが”普通”に生きられる社会とは何なのか、発達障害児であるみるくが生きやすい社会とは何なのか、”普通”にする必要があるのか……と、いつも考えています。

みるくがみるくらしく、その「障害」と呼ばれる部分も含めて、生きやすい社会を作っていけるように、私たち自身が”普通”の感覚を捨てていくことも必要だと考えています。

その話は、また別の機会に。

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