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ポケモンSVの推しを一人に絞れない理由


ポケモン世界における人間

ポケモンシリーズの魅力のひとつとして挙げられるのがトレーナー、広義では人間キャラであることは間違いない。長期的にシリーズを追っている人であれば各作品で一番好きなキャラは誰?という質問はそう難しくないだろう。私もそのうちの一人だった……

はずだった。

どうしようみんな好き!

スカーレット・バイオレット(以下SV)の発売と共にパルデア地方での冒険を始めた私は非常にワクワクしながら広大な土地をミライドンに乗って駆け巡り、学校の内外で様々な人に出会った。
やがて本作の柱となる3つのストーリーをクリアし、 想像を絶するクライマックスを迎え、エド・シーランによるテーマ曲「Celestial」に合わせて流れるエンドロールに大泣きした後も冒険は続いていたが、ふとあることに気づく。

「今作の推しって誰だ?」

前述の通り私は大体各作品に推し、または推しとまでは行かなくても好きな人間キャラがいるタイプだ。見た目が好みとか性格に好感を持てるとか発言に心を動かされたとか理由は色々あるし作品によって複数いることもある。
だがしかし、SVにおいてはそれを答えられない。
厳密には全員に何かしらの愛着や共感といった感情を持っているというのが正しいのだが、特に好きなキャラと言われると悩んでしまう。ましてや一人選ぶなんて無理だ。

そこで、他作品やポケモンの過去作における推し達の特徴を考えてみたら妙に納得した。

完璧じゃない君が好き

前作ソード・シールドの推しの一人は、追加コンテンツ「鎧の孤島」においてソード版にだけ登場するクララ。
可愛らしいビジュアルとは裏腹に毒のある物言いをする彼女だが、アイドル時代は日の目を見ることができずジムリーダーに転向を試みるも、再び現実に打ちのめされた過去を持っている。そのせいか自分の弱さと向き合うこと、努力することから逃げてきた。

ポケモンで言うとメタモンが一番好きだ。どんなポケモンでも姿や能力をコピーできるという唯一無二の能力を持っているが、どこかにメタモンの要素が残ってしまったり、何かの拍子に変身が解除されてしまったりと決して万能ではない。わかりやすく言えば強くてかっこいいポケモンに変身しても顔だけメタモンといった感じだ。そのビジュアルの愛らしさ含めて好きだが、完璧じゃないところにも何だか愛着が持てる。

どうも私は彼女やメタモンのように欠点があるとか、どうも人生あんまり上手く行ってないキャラに心惹かれるらしい。他作品で言うと夫に先立たれて女手一つで子供達を育て上げた裏で自分を押し殺していた彼女達とか、どうも地元のコミュニティに馴染めない彼女とか。
SVはそんなキャラが非常に多いと気づいた。

完璧じゃないのは私だけじゃない

メインストーリーで関わる同級生や先輩は何やら訳ありな雰囲気を醸し出しており、家族との確執や過去の過ちを精算するために主人公に協力を依頼する。才能・環境……全てにおいて恵まれているはずだった生徒会長だってそれ故の息苦しさを感じていたから、対等なライバルとして主人公を選んだ。一見自由奔放にやっているように見える不良集団も彼らなりのやり方で守るべきものを守っていただけだ。

大人達だって同じだ。アカデミーの先生だって挫折を経験したとか周囲からの見られ方で悩むこともあるし、バトル以外の分野でも活躍していたり地域住民から慕われたりと一見成功を収めているジムリーダー達も厳しい現実に晒されて不安になったりする。博士も色々なことをたくさん悩みながら進もうとした結果、悪い意味で予想外の事態を招いてしまったのだろう。

きっと、そういうところをみんな多少なりとも持っているから愛着を持てる……というか嫌いになりようがないと考えた。彼らは紛れもないフィクションの世界の住民だけれど、ものすごく遠い存在には感じないしそれが良い方向に作用している。少なくとも私にとってはそうだったし、ある意味勇気をもらえた。

締まりのない締めくくり

この文章をしたためている時、ふとある曲の一節を思い出した。

「こんな自分のままじゃいけないって頭を抱えてるそんな自分のままで行けよ」

これだけでピンときたそこの貴方とはいい酒が飲めそうな気がする。
某保険会社のCMにも起用された竹原ピストルの「よー、そこの若いの」だ。

人生迷子状態になった現実の私も元気をもらっている曲だが、改めて聴くと決して完璧じゃないし、持っているのは夢と希望だけじゃない、それでも何とか生きているSVの登場人物達に非常に合っているように思う。これだからイメソンを探したがるオタクは……
こんな自分のままじゃいけないって頭を抱えている私だけど、パルデアで出会った彼らのようにそんな自分のまま行きたいものだ。

……ところでゲーフリさん、ホーム解禁まだですか?


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