「えいごリアン」について割と真面目に考える

人生がうまく行っていない時は、何故か子供の頃に好きだったコンテンツを見たくなる。
PCを立ち上げ、ブラウザの検索窓に入れたワードがこれだ。

「えいごリアン」

かつてNHK教育テレビ(現Eテレ)で放送されていた小学生向けの英語番組である。
キノコの形をした謎の生き物「えいごリアン」──こいつがトラウマだという方もいらっしゃるだろう。あるいは、レギュラーメンバーの衣装のある種毒々しいカラーリングが印象に残っている方もいらっしゃるだろうか。
放送開始幼児だった私は、どういうわけかこの番組に魅了されていた。小学校にすら行っていないような年齢の子供には難しい言葉や漢字が使われているにも関わらず親に番組テキストをねだっていたらしい。そして暇な時に読んだり、余白に何かを書き込んだりしていたという。

そんな幼い私にとってのキラーコンテンツだった番組をNHK for Schoolで見ていた時、ある疑問が浮上した。

「えいごリアンって何なの?」

第二シーズン?(通称えいごリアン2)の最終回で放送されたエピソードを見た時、ふとそんなことを考えてしまった。なお、ここで言うえいごリアンは番組名や上述したキノコ風のキャラクターではなく、人間に対して使う名詞を指す。

そして、その問題の回がこちら。
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/clip.cgi?das_id=D0005350426_00000

レギュラーメンバーのユージ、ジャニカ、マイケル、準レギュラーのマンスール+αでのど自慢大会を開催している。出場者が次々と鐘1つや2つで退場していく中、ユージはガチガチに緊張してまともに話すことすらできない。そんな状態で順番が回ってきてしまうも当然歌えるわけがなく万事休すかと思いきや、ここで鐘1つで早々に退場させられたジャニカとマイケルが待ったをかける。第一シーズンの時からずっと一緒にやって来た二人がユージを励ますという熱い展開だったはずが……

マイケル「ユージ、お前はえいごリアンだ!」

どことなく某プロテニスプレイヤーを彷彿とさせるこの一言により奮起したユージは二人を交えて見事に歌い終え、合格の鐘が鳴り響き三人は優勝、最後は全員で歌って大団円。ちなみにユージも「そう、俺はえいごリアンだ」と言うし、三人揃って「俺たちえいごリアン!」と高らかに宣言した上で歌い始める。おまけに全員で歌った曲のタイトルは「Eigorian March」だし、締めくくりはカメラに向かって「そう、俺たちえいごリアン!」と叫ぶ。

──そういえば「俺たちえいごリアン!」はオープニングのタイトルコールで必ず聞くフレーズだった。であれば恐らく「俺たち」はあの世界の住人だけでなく我々視聴者も含むのだろう。「俺たち」は第一シーズンの第一回から第二シーズンの最終回に至るまで英語で自己紹介をして、数を数えて、ゲームやクイズをして、互いの好きなものを知って、何かを探してきた。
きっとえいごリアンってのはそうやって「英語を通じて誰かを、何かを知ろうとする人」を指すのかもしれない。であれば番組内で英語で紹介される知らない国のことに興味津々だった幼い私も、ドハマりしたディズニー映画を英語で見て台詞の本来のニュアンスを読み取ろうとしている大人の私もえいごリアンだ。

……とここまで真面目風な語り口で綴ってきたが、本編の世界観はかなり謎なので制作陣はあまり深く考えていない可能性もある。とは言え、私がこの謎の世界観の中でなされるやり取りを通じて「なんとなく分かる」という外国語を学ぶにあたって大切な第一歩を踏み出せたのは間違いない。と思いたい。


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