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ヤン・ファン・エイクから目が離せない
15世紀にフランドルで活躍し、油彩技法を確立したと言われるヤン・ファン・エイクの作品って、ずっと見てられます。細部の描写がすごすぎて、見ていて飽きない。
先日、訪れたアントワープ王立美術館でも、多くの時間をファン・エイクの鑑賞時間を割きました。
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この作品は高さが19センチ横幅が12センチで、およそB6サイズしかない、小さな作品なんですが、見どころが多すぎる。
聖母マリアとキリストの繊細で穏やかな表情を見て、背後の織物に目が移ると詳細に描かれる刺繍糸に驚愕し、後ろの天使の翼の柔らかさ色鮮やかさに目を奪われ、目が画面上まで行って一息ついたところで手前の噴水の硬質な金属の輝きとちょろちょろと滴る水と水面を跳ねる水滴表現に目を見張る。そして、聖母子の背後の精緻な植物の名前を思い出しながら聖母子の姿に目をやってほっこりしたあと背後の織物を見て……と、画面上を無限ループのように見てしまいます。
そして、しばらくたって、絵から離れて「ほうっ」とため息をついて鑑賞を終えます。
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こちらはアントワープ王立美術館が所蔵するもうひとつのヤン・ファン・エイクの作品です。
これはファン・エイクが完成前に作業を放棄し、後世のだれかが背景の青と黄土色を加えたとされているのですが、ファン・エイクのサインがあることから、ファン・エイク自身はグリザイユ(モノクロームの作品)として完成させていたのではないかとも考えられています。
私が見る限りでは、中央の聖バルバラと背景の塔の描写は完成しているように見えますが、塔の左奥に位置するバベルの塔のような建築物や右奥の樹木が滲んでいるので、厳しい描写をするファン・エイクならもっと描き込みそうだなという感想をもちました。
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ヤン・ファン・エイクといえば、2012年に始まった《ヘントの祭壇画》の修復作業が第三フェーズに入っていて、完成は2026年の予定だそうです。 早くこの絵のようにヘントの聖バーフ教会内で見たいです。
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