星を語る人へ
数年前の夏のこと。わたしの初めての天体観望は梅雨真っ只中だった。
天体観望デビューだ。
ドキドキしながら自宅より少し離れた場所の科学館に申し込みをして、ワクワクしながらその日を待っていた。
どしゃ降り。。。信じられないぐらい降っている。
この科学館は、天体観望の日が雨の場合、プラネタリウムで季節の星の説明をしてくれるということだったので、どしゃ降りとはいえ、せっかく申し込んだのだから行くことにした。
天体観望っていうぐらいだから開催時間は夜だ。夜空を皆で見上げたいのだ。
失念していたが、その科学館には昼間しか行ったことがなかった。
わたしは筋金入りの方向音痴だ。
方向音痴あるあるだと思うのだが、昼に無事に到着した場所でも、夜になると、同じ道が全く知らない道になる。
スマホで地図を見ようにもなんせどしゃ降りなので、わたしの手が3つは無い限りびしょ濡れは確定。
夜の知らない道でどしゃ降りでびしょ濡れ。。。泣きそうになりながら時刻を少し過ぎて到着。
職員さんが、あたたかく出迎えてくれてホッとしたのも束の間。よかれと思ってのことだとは痛いほど分かるのだが、クーラーが効き過ぎている。。。びしょ濡れのわたしには今が7月だということを忘れるくらいの極寒の寒さになってしまっている。
気のいいおじさん、といった感じの職員さんがジョークを交えながら淡々とゆるりと星の説明をしてくれる。好みな説明の仕方だ。
好みはそれぞれだと思うが、わたしは星の説明をするのにあまり情緒的な言葉を入れて欲しくないタイプだ。
しかしだ、だんだんおじさんがジョークを入れる頻度が多くなってきた、誰もジョークに笑わず、焦ったおじさんはさらにジョークを重ねとんでもない空気になっている。。。
そして心なしか元気がなくなった声で、「ま、あんまり長くなってもアレなんでこれで終わります…」という感じで星語りは終わった。
終わりかたもなんか好みだった。壮大な語りを聞きたいというよりは、あくまで日常の延長線での星語りをわたしは聞きたいのだ。
わたしは終始心地よかった。
ただ、わたしが語る立場なら、この空気には耐えられそうにない。
でもわたしのように癒されている人間がたくさんいると思う。
今日も耐えてくれ、星を語る人よ。
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