バスの中
わたしは気がついたら人間観察をしてしまう。
そして、こういう時に、こういうこと言いそう、とか、バックグラウンドとか、その人の思考経験とか、学生時代や、好きな音楽とか、趣味、とかを想像して、勝手にその人のプロフィールを考え、架空の人間を作り上げて、ひとりで遊ぶ。
ある日、バスに乗った。
車内はいいぐらいに空いていて、バスの中の後ろ寄りの席に座ると前の方の席は見渡せる。
人もまばらなので人物像を考えるにはもってこいの環境だ。
そこで何も起こらなければ、わたしのこの上記の遊びが始まるのだが、今回は違った。
わたしが乗って、2つぐらい後のバス停から60歳頃の女性と10歳ぐらいの男の子が乗ってきた。前方の2人席に座った。
おそらく「祖母と孫」という関係性かと思う。
孫は話し好きなようでしきりに祖母に話しかけている。身振り手振りもついてる。たまにイタズラっぽい顔でわたしの方を向いたりして、なんだか楽しそうだ。
するとそれからまた2つぐらい後のバス停から60歳〜70歳頃の男性が乗ってきた。その男性はその「祖母と孫」のひとつ前の席に座り、後ろを振り返ってその快活な男の子に笑顔で挨拶した。
男の子は今までのおしゃべりが嘘かのように恥ずかしそうに黙り込んだ。
しかしながら、その男性が挨拶してくれたのが嬉しかったのか、しばらくして男の子は後ろから男性を突くなどしてチョッカイを出し始めた。
祖母は「コラっ。」と言いつつも本気では怒っていない感じ。
前の男性は少し戸惑いながらも楽しそう。
ほんの5分か10分ぐらいのことだったと思うが、「祖母と孫」がバスを降りる頃には、その男性と男の子はハイタッチをする仲になっていた。
なんかコミュ力がすごかった。うらやましい。
そしてわたし他人のこと見過ぎだろって思った。
こんなことばっかりしてるからコミュ力が磨かれなかったのか?理由はいろいろあるだろうけど、凹んだ。
でもなんだか和む光景だったので、すぐ立ち直った。