彼女が決めた事なのだから……。
だからこそ、置いて行かないでと、ただ縋る事しか出来なかった。
背を覆う銀色の髪を揺らす彼女は、私達の方を振り返らない。
彼女を追った所で、足手まといなのは分かっている。
彼女自身は、『私がこの中で一番弱いからね』と頭を掻きながらいつも言っていた。
そうは言うものの、私達には無い、今までに踏んだ場数と経験値で、私達では危なげな場面を幾度となく抜けて来た。
そんな彼女だからだろう。
今の状況がどれ程絶望的なのか、一番に分かっており、彼女の中での最善なのだろう。
彼女自身に出来る事と、私達が取れる選択肢とを天秤にかけ、出した結論なのだ。
蹲ってしまった私を立たせようと、彼方が腕を引っ張る。
しっかりと立ち上がれずによろけてしまい、支えられながら何とか立ち上がる。
「まあ、そういう訳だから、後はよろしくね? 彼方」
確認するように彼女が言う。
それが合図なのだろう。
彼方は何かを言おうと口を開け――結局、噤んでしまう。
何も言葉を発さずに、一つ頷くと、私を支えていた腕に力が籠もる。
私はずっと濡らしていた瞳を見開き、彼女の名前を呼ぶ事しか出来なかった。
「マツリねぇ……っ!!」