夕姫ちゃん誕。(10月4日)
日曜日の昼下がり、彼女に買い物に行く事を提案すると、小首を傾げ無言で問い返してくる。
私自身、こうして誘う事自体が稀なのは承知しているが、彼女は少し考える素振りを見せた後、了承を伝えてくる。
今思えば、この時に既に私"達"の意図に気付いていたのだろう。
好きな所に行こうとは提案するも、辿り着いたのは案の定本屋であった。
クラブにも彼女や栞莉が買い込んだ本が所狭しと並んでいるが、この様にして日々増えて行くのだろう。
共有スペースでは他に怜奈や茉莉を見かける事もあるが、二人程の頻度では出入りしていないし、それ以外のメンバーは殆ど見かける事も無い。
そんな事を思案していると、気に入った本を数冊見つけたのか、私に手渡してくる。
ここで初めて気づいたのだが、彼女自身へのプレゼントを買いに来ている事に、完全に気付かれていた。
私は頭を掻きながら、気付いている事を指摘すると、彼女は"してやったり"といった風に目を細めてくる。
クラブに来た当初は笑う事も無く、栞莉の後ろや物陰に隠れていたが、今では美悠や飛鳥などの一部のメンバーとも仲良くしている様だ。
昔を思い返すと、今の様に微笑む様になったのはとても嬉しい事だ。
最近うちにやって来た、フィアともこの前話していたようだし、少しずつ今の環境へと慣れて来ているのだろう。
これからクラブへと帰れば、和泉やラキアを中心に誕生会の準備が進んでいるだろう。
暫くイベント続きの日々を夢想しながら、二人――夕姫と共に帰路につくのだった。
クラブを預かる、あるオーナーの日記より