「コンテンツとテクノロジー、どちらに価値があるべきか」ArtBlocksの創設者インタビューより
ジェネラティブアート専門のNFTマーケットプレイス「ArtBlocks」
数あるNFTのジャンルの中でも一角を担う存在感となっています。素敵なエピソード記事が公開されていたので紹介していきます。
まずはArtBlocksの説明から。
ArtBlocksとは
ジェネラティブアート(generative art)のプラットフォームです。各国のジェネラティブアーティストの新作がNFTとして毎週販売されています。1点ものではなく100~10,000点のコレクションであり、仕組みはフルオンチェーンの作品や、出力にMINTする際の関数が使われたりするものなど作品によりそれぞれとなります。販売方法は何度かアップデートされており、いまはダッチオークションを採用。数億円で二次流通された作品もあります。
ジェネラティブアートとは
プログラムで制御され生成された画像/動画となり、アルゴリズム(プログラム)を使用して作成されたアート作品という特色がありなります。
「ジェネラティブ」という言葉は、日本ではパーツのイラストをもとに1000~10,000体を生成されたプロフィール画像用のNFTコレクションを思い浮かべる方が多いかと思います。ArtBlocksでは「ジェネラティブアート」を取り扱っています。以下の図でざっくり説明します。
ArtBlocksができるまで
創設者(ファウンダー)はErick Calderon氏(アーティスト名はSnowfro)、彼は意外にもタイル会社で10 年間働いていました。ずっとアーティストになりたいと思っていましたが、筆ではなくキーボードをとりました。ビジュアルを出力するプログラミングでの表現、ジェネラティブアートの研究を進めました。
アーティストとして作品を発表する一方で、ジェネラティブアーティストたちが作品をInstagramなどに投稿して終わり、ということに苛立ちを覚えました。物理的な絵と異なりジェネラティブアートを販売する方法がほとんどなかったのです。
オリヂナルがデジタルデータとなり、さらに生成するためのアルゴリズムも作品の一部とあるものをコピーでなく移動するにはどうしたらいいのか。
悩む中でSnowfro氏はイーサリアムとスマートコントラクトについて知りました。「脳が爆発したような衝撃を受けた」と語っています。2017年、当時フリーミントだったクリプトパンクスを購入し「はじめてデジタル画像を所有することができた!これは革命的なことだ!」と実感。そしてSnowfro氏が最初にスマートコントラクトで作成したものは、友人の赤ちゃんが18歳になったときにのみ開封することができる時限付きのギフトでした。
そして2018年にArtBlocksのプロトタイプとなるプラットフォームを公開。しかし、リリース当初からうまくいった訳ではありません。
ジェネラティブ アーティストがアルゴリズムをアップロードし、MINTされると異なる作品が出力される仕組み、画期的ではありましたがNFT自体がまだメジャーなものではなく盛り上がりに欠けました。それでも彼はアップデートや、アーティストやコレクターへ参加の声掛けを続けました。徐々に市場は拡大し、ついに21年春にはbeepleやNBA TOP ShotなどNFTが世界的に注目を集めました。ArtBlocksへの注目も高まり取引が増えたことで、4月にやっと法人化とフルタイムのスタッフを雇うことができました。盛り上がりがピークとなった8月、 12,000 人以上が参加し51,000 件の取引が発生、1.9億ETH(当時価格で約7億円) の売り上げを記録しました。
しかし「Art Blocksが、こんなに巨大なマーケットになるとは考えてもいませんでした」と彼は語ります。当時は早押しでの販売方法となり、一瞬で売り切れる作品も多数、MINTできれば二次流通で高額で転売できたため、ガスを多く積む戦いになりました。GAS WAR/ガス戦争と呼ばれる状態となり、BOTも増加、通常のコレクターがMINTできる状況ではなくなりました。結果的に売上は増えましたが、「これはArtBlocksが望む未来ではない」と販売方法をダッチオークションに切り替えました。
「ホルダーやアーティストが多くのお金を稼ぐことができるのは嬉しいこと、でも、多くのお金を失う可能性をもつの悲しすぎる」そんな思いがあります。重視したのは、この世界が持続していくことです。
Snowfro氏は、昨年のNFTの価値形成には歪みがあったと感じています。
「NFTアートにおいて 60%~70%が NFT という新しいテクノロジーへの興味に基づいている。コンテンツの価値が30%程度というのはおかしい。本来であればテクノロジーの価値は5%を超えるべきではない」と語ります。
彼はまた「NFT」という言葉を使うべきではないかもしれないとも考えています。アートイベントに参加する際は、NFTという単語を極力使わずに『ブロックチェーンを利用したアート』または単に『アート』として説明するようにしています。
最近の仮想通貨の暴落により、やっと穏やかな状況がもたらされアートについて建設的な会話ができるようになりました。ArtBlocksでは、あたらしいアーティストを支援するため、教育やメンタルヘルスのプログラムもスタートしました。
Snowfro氏の思い描く未来
一度プログラムを書けば、100 万通りの画像を出力できるというのはジェネラティブアートならではのこと。アーティストが数千から数万体の作品をリリースできることにより、アートを軸としたコミュニティが形成される。そうなると、手が届きやすい作品も生まれ、アートが一般化されていく。
ArtBlocksというマーケットから、よりデジタルアートに触れやすい世界が広がっていくこと。いまやコレクティブNFTやブロックチェーンゲームが主流となり、ユーティリティ至上主義にもなっているNFTマーケット。
もちろん、NFTの活用法が模索されている中ではありますが、ArtBlocksのようにNFTによって活性化したアートのジャンルがある、という側面も忘れてはならないと思いました。
■参考
ArtBlocks:https://www.artblocks.io/
参考記事:
●セラミックタイルからジェネラティブNFTへ。ArtBlocks創始者の歴史
https://decrypt.co/106659/from-ceramic-tiles-to-generative-nfts-art-blocks-founders-origin-story
●ArtBlocksの急速な成長は「理不尽に感じた」
https://decrypt.co/105959/erick-calderon-nft-platform-art-blocks-rapid-growth-felt-unreasonable
●ArtBlocksの売上が爆発的に増加したため、熱狂を冷やす方法を探した
https://www.artnews.com/art-news/news/erick-calderon-art-blocks-1234604108/
■書いた人
miin l NFT情報コレクター(@NFTPInuts)
NFTについての情報を日々ツイート、フォローしたあなたのタイムラインに最新のNFT情報を流し込みます。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?