【インタビュー】32歳でホジキンリンパ腫。AYA世代がんサバイバー/血液がんグループ瞳さん
ホジキンリンパ腫とは、血液がんの1つです。
白血球の中のリンパ球が「がん化」する悪性リンパ腫であり、リンパ節にしこりを作ります。
日本人におけるホジキンリンパ腫の割合は少なく、悪性リンパ腫のうちの約95%が非ホジキンリンパ腫です。そのため情報が集まりにくく、同じ病気の患者さんとの出会いもあまりありません。
ミライクで「血液がん」グループを運営する瞳さんも、同じ境遇の方が見つからず苦労されました。
今回は、瞳さん(ホジキンリンパ腫の患者さん)に、病気の経験やSNSでの関わり方についてお伺いしました!
ホジキンリンパ腫とは
診断までの日々。コロナ禍による診断の遅れや苦労
ーー簡単な自己紹介をお願いします。
瞳と言います。福岡県出身で夫と2人暮らしです。
32歳の時に体調が悪くなり、悪性リンパ腫のホジキンリンパ腫という病気になりました。
趣味は、ミラーレス一眼カメラでの写真撮影です。
仕事をしていたときは、疲れて休みも出かけたりしなかったんですが…
今は仕事を辞めて自分の時間があるので、公園で写真を撮るのが楽しみになっています。
仕事はずっと事務職をしていて、忙しすぎて毎日朝8時半から夜の8時まで働いていました。
ーー発症から診断までの経緯を教えていただけますか。
体調が悪くなったのは2020年の春くらいですが、仕事が大変すぎるせいだと思ってロキソニンを飲んでやり過ごしていました。
残業も続いて辛かったんですが、上司に相談しても「キツいのは皆同じだから」と。
部署の異動はしてもらえたんですが、その2週間後の2020年10月には咳が止まらなくなりました。
2週間経っても咳が治まらないので病院の近くの内科を受診したんですが、コロナ禍だったのでパーテーション越しで先生が話を聞いてくれるだけ。「喘息かもね」と薬が出たんですが、やっぱり咳が止まらない。
自分から詳しい検査をお願いしてレントゲンを撮ったら、肺が真っ白でひどい肺炎になってると。
それで肺炎の薬を飲んだんですが、それでも治らず…
大きな病院に紹介されて検査したら縦隔炎(※)と診断されて、そこから入退院を繰り返しました。
※縦隔(胸部の空間)で起きる炎症
コロナ禍で満員電車に乗るのも怖いし、咳をすると周りの目も気になるので大変でした。
ーー入院中に診断がついたのですか?
いいえ。そこでは原因がわからず、大学病院に転院となりました。
そこでも全然良くならなくて、体を開かないとわからないと言われて手術になりました。
結果、悪性リンパ腫ということがわかりました。
それが2021年5月なので、半年くらいは原因不明の状態でした。
病院で治療を受けたら良くなると思って、嫌いな点滴にも耐えて大きな薬も頑張って飲んでいたんですが…
全然良くならないし原因もわからなくて、「どうして?」という気持ちでした。
ーー診断がついたときの気持ちを、お聞かせいただけますか?
すぐ血液内科の先生に話を聞くように言われたんですが、そこから4時間待ちました。
その間に旦那さんとネットで調べて、悪性リンパ腫が血液のがんだってことに気付きました。
血液内科の先生はすごく優しく話してくれて、「1番抗がん剤が効きやすいがんだし、どんどん新しい治療法が出てるから大丈夫。」って。ステージ4でしたが、余命宣告などもありませんでした。
先生が治った人はいっぱいいると言ってくれたので、自分は死ぬと思わないままやってこれました。
ただ抗がん剤で髪が抜けるというのが、すごく辛くて。
一生懸命髪を伸ばしていたし、そのとき美容室に行ったばっかりだったんですよね。
病気になって辛い治療をして、見た目まで変わるのかと思って悲しくなりました。
AYA世代のがん治療。妊孕性保存による希望
ーー診断後、すぐに治療を始めたのですか?
いえ、血液内科の先生に説明を受け、妊孕性保存療法(※)を始めました。
※がん治療の前に卵子・精子・受精卵・卵巣組織の凍結保存を行う治療
抗がん剤治療を受けると妊孕性を失う可能性があると言われて、迷わず決断しました。
治療のために、毎日婦人科に行って注射してもらうか、自分でお腹に注射するか選ぶんです。
自己注射の方が楽だけど値段が高いから悩んでいたら、旦那さんが「瞳が頑張るんだから、値段なんか気にしなくていいよ」と言ってくれて嬉しかったです。
旦那さんはすごく明るい人で、脱毛して辛いときも「マルコメちゃん」と頭を撫でたりと普段通りに接してくれました。
実際は国から助成金が出たので、少し安く済みました。
一時金が出るのは一度のみなので、AYA世代の妊孕性保存への補助を拡大してくれることを願います。
受精卵を10個凍結しているので、まだ希望があるかなという感じです。
参考:厚生労働省 小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業
ーー再発されたときのことをお聞かせいただけますか?
復職の2週間後に再発の可能性があると言われて…せっかく復職できたのにって思いましたね。
再発したときには、自家移植になると言われていました。
キイトルーダ(免疫チェックポイント阻害薬)を一生打ち続けるよりは、自家移植の方が良いと思ったんですが…
自家移植のためには、1ヵ月半くらい入院が必要なんです。
そうなるともう休職できないので、退職するしかない。
一生懸命治療を頑張ってきたのに、なんで会社を辞めないとならないのって。
仕事にやりがいを感じていたし、収入がない中で治療費を払い続けるのは辛い。何のために生きてるんだろうって気持ちでした。
ーー自家移植後の体調は安定していますか?
はい、今は定期的に検査を受けているだけです。
ドナー移植ではないので免疫を抑える薬も飲んでいないし、普通に暮らせています。
抗がん剤の影響で早発閉経してしまったので、ホルモンの薬だけ使っています。
閉経して落ち込みましたが、女性ホルモン補充療法をしておくと凍結胚で妊娠できる可能性があるので期待は持てますね。
また社会人として生活したいので、新しく仕事を始めたいと思っています。
患者SNSミライクでの交流。「血液がん」グループへの期待
ーーいつからSNSで病気のことを発信されていたのでしょうか。
初回の治療が終わったあたりで、闘病記をまとめて投稿しました。
リアルタイムで更新していたら、同じ病気の方から情報を得られたかもしれないんですが…
まとめたことによって、同じ境遇の人から「すごく参考になった」と言われて。
気づいたら、自分が誰かの生きる希望になっていたんですね。
「再発して、自家移植して、今は元気」
まとめるとそんな感じなんですが、同じ境遇の人が「瞳ちゃんは生きる希望だから、ありがとう」と言ってくれたのが嬉しくて。
10万人に1人という珍しい病気だし、誰かの希望になるなら発信して良かったと思っています。
ーーミライクで「血液がん」のグループを作成いただいきましたが、どのような交流が理想でしょうか。
ミライクは、闘病中に知りたかったなと思うサービスです。
Instagramは複数キーワードでの検索ができないし、投稿が流れるのも早い。
同じ病気の方や似た治療中の方を見つけるのは結構大変なんですよね。
ミライクや血液がんグループが、闘病中の辛いことなど語り合える場になれば良いなと思います。
ーーミライクへの登録やグループへの参加を検討している方にお伝えしたいことはありますか。
ミライクには今まさに闘病している人の悩みや辛い気持ちを、聞いてくれる人がいます。
同じ病気の方と知り合うと、病気のことだけではなく日々のことも気軽に話せます。
ミライクが、お互いを支え合える繋がりの輪になればと思っています。
登録してみないと中身が見えないので不安もあるかもしれませんが、まずは登録や参加をしてみて欲しいです。
ーー最後に、記事を読んでくださっている方にメッセージをお願いします。
似た境遇の方に伝えたいのは、「無理しないで」ということ。
担当の看護師さんにも言われたんですが、辛いときは「辛い」と言った方が良いです。
抗がん剤の副作用や痛みを我慢している方は多いですが…
辛いとか痛いとか伝えると、別の薬を出してくれたりとか色々解決法が出てくることの方が多いんです。
小さなことでも医療従事者の方にはどんどん伝える方が、QOL(生活の質)は上がると思います。
病院の方と信頼関係も生まれますよ。
もし読んでいる方が患者の周りの人や健常者なら、私のような人には「可哀そう」ではなく、「治ったら一緒にご飯いこうね」など、前向きになれる言葉をかけてくれたり、それまで通り明るく接してくれると嬉しいです。
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気になる方は、ぜひ参加してみてくださいね。
【執筆】
三上小夜香・・・薬剤師。患者SNS「ミライク」note作成や日本初の臨床試験マッチングサイト「SearchMyTrial」投稿を担当。
【編集】
藤澤春菜・・・看護師/保健師。患者SNS「ミライク」note編集やコンシューマー・マーケティングを担当。