コミュニティの力で情報ニーズに応えることにより、患者さんの不安を解消したい
>>インタビュー前編「コミュニティの力で新しい選択肢を。患者SNSアプリ『ミライク』に込めた思い」はこちら
新たな事業を模索する中で、患者さん同士の繋がり合いをつくるサービスを検討
ーどういった経緯でミライクの構想に至ったのでしょうか?
伊藤:2019年まで遡ります。もともと弊社は、治験に参加したい人と治験に参加してほしい人をデジタルでマッチングする事業を進めていました。ペイシェントリクルートメントと言われる被験者募集事業です。国内で公開されている全ての治験情報を登録し、治験参加を希望する人に対してsmtというメディアを通して治験参加の申込みまで出来るサービスです。一方で治験事業は、市場規模が数十億円とニッチな市場ということもあり、新たな事業領域を模索していました。
そのような中、アメリカのPatientsLikeMe(ペイシェンツライクミー)やMY HEALTH TEAMS(マイヘルスチームズ)という同じ病気の人たちをつなぎ共感し合ったり、アドバイスを共有するサービスが社内メンバーの目に留まりました。同時期に治験参加者がモチベーションを維持しながら治験参加ができるように、スタディ・コンシェルジェという患者さん向けサービスの開発を進めていました。そこでスタディ・コンシェルジェと並行して、PatientsLikeMeのモデルを日本国内でも実現できないか検討することになりました。
インタビューを通して、患者さんが不安を解消したり、コミュニティに繋がっていく体験を知る
―これまでどのようにしてサービス開発を進めてきましたか?
伊藤:2020年2月から、具体的な検討を開始しました。最初に対象となる疾患領域について検討したり、ミライクと類似したビジネスモデルの事例についての情報収集を行いました。対象疾患を決定した後は、患者さんの実情を知るためのインタビュー調査を実施しました。患者さんへのインタビューでは、治療状況や診断経緯、生活環境、同じ疾患の患者さんとの交流の経験、情報収集の方法などについてお話を伺いました。その後、患者さんへのインタビュー結果を基に要件定義やUIUX設計を行い、開発に移行しました。
海東:インタビューを通して、患者さんが診断を受けてから、どのように情報収集をして不安を解消していくかが見えてきました。多くの患者さんが、診断を受けた後インターネットで情報収集を行い、その結果について主治医からフィードバックをしてもらいながら、ご自身の不安を解消するという経験をされていました。
一方で患者会やSNSなどの患者さん同士のコミュニティに繋がる経緯は、様々なパターンがあることが分かりました。症状が一番辛い治療の初期は主治医を頼りにしていて、数年経って症状が悪化したタイミングで患者会を頼っていた方もいらっしゃいました。患者さんがコミュニティに繋がるきっかけやタイミングは、そのときの症状、女性の場合だと妊娠・出産といったライフイベントの変化など、人それぞれだと分かりました。
伊藤:その後テスト版のアプリをつかって、1ヶ月間のクローズドテストを実施しました。クローズドテストでは3つの対象疾患に限定して、約100名の患者さんにご協力いただきました。
海東:クローズドテストを通じて、オペレーション上の課題やアプリの改善ポイントが見えてきました。実際に利用していただいた患者さんからのフィードバックを受けて、アプリの導線や使いやすさについて改善を行いました。今後もユーザーからのフィードバックの内容を取り入れながら、より良いアプリにしていけたらと思っています。
医療者や患者会など、ステークホルダーとの連携も視野に
―今後どのようなサービス展開を検討していますか?
伊藤:将来的にはミライクに蓄積した患者さんの状態をデータ化し、医療者の診療に活かすことで、個別化医療の実現に貢献できればと思います。受診時以外の患者さんの状態や気持ちなどを主治医が把握することで、より適正な診断や治療に繋がっていくのではないかと考えています。
海東:個人的にがんや難病の患者会と接点を持っていますが、患者会でもオンラインでのコミュニティを作りたいという声があがっています。患者会や患者支援団体が、Facebookなどを活用して独自でオンラインコミュニティを運営しているケースもありますが、発信する情報が限定的になったり、治験のように専門的な情報は発信が難しいといった状況もあります。また、有志のメンバーによりボランティアで運営されている患者会も多く、資金面の課題によって活動を継続することが難しいといった声もあがっています。
そこで、患者会としての情報発信やメンバー同士のコミュニケーションをサポートできる環境も、ミライクで提供できるのではないかと考えています。
―どのようなメンバーでミライクの立上げを行っていますか?
伊藤:社長の猪川を含めて、6名のメンバーで立上げを行っています。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーが、それぞれの経験を活かした役割を担っています。
コミュニティを活性化させるためのサービス設計を行うメンバーや、モニタリング体制を充実させていくための専門スタッフもいます。モニタリングは、個人情報保護法や関連する法規制に基づき体制を構築していますが、安全・安心なコミュニティを運営していくために重要な役割となります。ミライクに集まった患者さんの声を分析して、新しい企画を立案して事業化したり、新機能開発に繋げていく役割を担うメンバーもいます。また、海東は自身でアプリ開発を行いつつ、システム開発チームとミライク事業部の橋渡し役を担っています。
―最後にミライクのサービス開始を待たれている方へのメッセージをお願いします。
伊藤:他の方がどのようにしているか、どのように考えているかなど、患者さんやご家族にとって本当に必要な情報を知ることができるアプリにしていきたい思っています。当面は対象疾患を限定しながらの展開していく予定ですが、一人でも多くの患者さんやご家族にご利用いただくために、一日も早く対象の疾患領域を広げていけるよう努めてまいります。
海東:病気にかかってしまうと、将来どうなるのか、症状や治療がどうなるのか、不安なことや分からないことだらけだと思います。そういったときにミライクをご利用いただき、今まで経験してきた方の対処方法を参考に一歩踏み出していただいたり、皆さまの不安を解消できるサービスにしていきたいと思います。
※(2022年10月17日追記)現在は下記募集を終了しています。
ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。