⑰優しい時
彼も優しかった時はある。
ただし、優しい言動をした直後に、平気でぶち壊すようなことを言う人だった。
私が優しいと感じた彼の言動は、それはそれで本物だったのかもしれない。
でもそれは、私が「めんどくさいことを言わない・しない」前提で成り立っていた。
彼は時々、贈り物をくれた。
最初は変なものだったけど、だんだん、私の好みに寄せた物をくれるようになった。
また、地方への出張の際に現地で彼が気に入った食べ物などもお土産として買ってきてくれた。
いい感じに酔っ払った彼が、
「あなたは本当にかわいいなぁ」
と言ってくれたことも何度かあった。
これも、この瞬間は本当に彼が思った事なんだと思う。
ただし、次の瞬間には、彼の機嫌を損ねてしまい(彼が眠い時に話しかけたせいで)、「お前などただの友達なのに調子に乗るな」と言われた。
「さっきかわいいなって言ってくれたよね?」と言ったら、
「そんなことを言った覚えはない」と言い切った。
「別の男と間違えてないか?」と言われた。
優しい時と、冷たい時の差が激しくて、何度も傷ついて泣いた。
ついていけなかった。
理解できなかった。
思いやりは一切ない人だったんだろうと思う。
私がいなくなっても平気だったんだろうな。
たまに「優しいことみたいなこと」を言ったりするけど、それは愛情からくるものじゃなくて、ただ単にその場の一時的な感情だし、相手は私じゃなくても良かったんだと思う。
ただ、私は付き合いも長く趣味はそこそこ合って、彼独特のユーモアも分かって笑いも共有できたし、ちょっと一緒に飲むには彼にとってとても楽しかったんじゃないかと思う。
私は、彼の言葉を一字一句真に受けて、喜んだり泣いたり、ただ振り回されつづけた。
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