prologue
昔からよく泣かされた。それも数学に。
小学生で泣いたのは
1以下で割ると元の数よりも大きくなるのが
理解できなかったから。
中学生で泣いたのは
マイナスとマイナスをかけると
プラスになることに
どうしても納得できなかったから。
高校生で泣いたのは
みんなの前で問題が解けなくて、
交代させられたから。
今思えばなんてかわいい悩みだろうと
慰めたくなるけれど
少なくともあの時のわたしは世界の定理と必死に戦っていたのだ。
挑んで、解けなくて、机に向かって泣く。
ひとしきり泣いたあとは、もう一度同じ問題に挑む。
悔しさは原動力だった。
生きることが上手になったのだろうか。
よく泣くのに代わりはないが、
最近泣いた理由は嬉しかったからだ。満たされていたのだ。
作り上げたわたし用の空間は優しかった。
悔しくて泣いたのは、本当に久しぶりだ。
発散できないエネルギーが渋滞するような感覚は嫌だけど
どうしようもなく悔しくなってしまう自分は
やっぱり好きだなと思う。
そういえば、卒業する頃には
数学が好きになり、いちばんの得意科目になった。
わたしはまだ、強くなれる。
お気持ちとっても嬉しいです!