はさまれる
お婆ちゃんが挟まれた。
なんともギョッとする字面だが、今まさに目の前で起こったことだ。
私はカフェで一つのトイレの順番待ちをしていた。
なかなか出てこない。急いでいないので、店内を見渡したり、鞄を持ち替えたりして待っていた。
「ガチャ」
ドアがゆっくりと開き、隙間からお婆ちゃんの顔が見えた。身長は140センチくらい、お年は80代、いや90歳くらいかもしれない。
そのお婆ちゃんがゆっくりとドアを開き、トイレから出ようとした。だが、ドアを開けながら歩くというのが困難だったのだろう。お婆ちゃんが出ようとするとドアは閉まり、お婆ちゃんが軽く挟まった。
私はトイレから出てくるときに邪魔にならないように一歩下がって待っていた。そのため初動は遅れたが、なんとかお婆ちゃんにドアの重さがかかる前に手を伸ばしてドアを支えた。
(あっぶなー。。)
お婆ちゃんは「あらぁ、ごめんねぇ」と言って席に戻っていった。
私は少しドキドキしたまま用を足した。
そして、トイレに座りながら自分が子どもの頃を思い出した。
おつかいを頼まれて近所の小さなスーパーに行ったとき、帰りに私は自動ドアに挟まれたのだ。
小学校1年生くらいだったので不注意だったのだろう。閉まりかけの自動ドアに突っ込み、バッチーン!と挟まれた。
ものすごい音だったので近くのレジのお姉さんが「大丈夫⁈」と声をかけてくれたが私は恥ずかしくて走って帰ってしまった。
その日の夜、父がスーパーの前を通って帰ったときに自動ドアが半開きで貼り紙がしてあったと聞いた。私が壊してしまったのだろうか。申し訳なさでいっぱいで、でも怖くて誰にも言えなかった。
本当にあのときはごめんなさい。
挟まれることはドキドキする出来事なのだろうと思う。だからできるだけ何かに挟まれることは避けたい。しかし、抜けてる私はいつかまた何かに挟まれるかもしれない。