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10年ぶりのゲランのフレグランスコンサルテーション

自分のための備忘録でもあるけれど、フレグランスコンサルテーション(フレコン)に興味のある人に、「カウンセリング受けるの楽しいよ!」とお伝えできればと思い記しておく。

香水沼から抜け出して約10年。新しいボトルは年に1,2本増えるかとどうかくらいの平穏な日々を送っていた私が、ブランク(?)を取り戻し、好きな香りをとことん追求すべくフレコンを受けに行った話。

1. フレコンを受けに行ったきっかけ

妊娠したら大好きなファッションが思うように決まらなくなった!ファッションが生きがいなので由々しき大問題。しばらくは外での装いや自己表現よりも、自分のなかの秘めた愉しみ(フレグランスやジュエリー)へと重心をシフトしたいと思ったのがきっかけ。

ここ10年、自分のなかでのスタメンフレグランスは3本くらいに絞られていたけれど、これから家で過ごすことが多くなることを考えて、日常に緩急をつけてくれるような新入りフレグランスをお迎えしたいと思った。

ニッチフレグランスも大好きだけど、10年前に受けたシャネルとゲランのカウンセリングがずば抜けて素晴らしかったのを思い出し、まずはどちらかのコンサルテーションに行くべし!と意気込んだ。

双方のコンサルテーションを思いだすと、シャネルはファッションのメゾンらしく、代表するファブリックのストーリーを聞きながら、好き/嫌いを判別。ファッションの傾向などを聞きながら、ライフスタイルや目指す人物像に寄り添う香りを導く(このときの提案は、Les Exclusifs de CHANEL限定だった)。

ゲランは老舗パフューマーらしく、香料や香りのジャンル、クライアントの幼少期の香りの記憶から、ベースとなるエッセンスを抽出し条件に当てはまる香りをビスポークのごとく提案する。レパートリーが多いからこそ為せる業。

どちらも内容の濃いコンサルテーションだったのに、なぜか写真もテキストも私の手元にはもう残っていない。形に残さなかったこと後悔しながら今回のレポートを書き残している。

2. 予約するまで

シャネルも気になるけど、より内省的な香りならゲランかなと思い、早速G6(GINA SIX)カウンターに電話。運よく翌週の、その月最後の実施日を予約できた。

ちなみに私はというと、最後の購入から1年をすぎて購入履歴を抹消された not「顧客」。それでも電話一本であっさり予約できた。懐の深さがありがたい。東京では現在G6と新宿伊勢丹でレギュラー開催している模様。

3. 香りの記憶と好みを追求するコンサルテーション

当日は、1. フレグランスをつけていかないこと、2. 付き添いがいる場合は本来の自分の好みを引き出せない可能性があること(自分が人からどう思われいかなどの雑念が入ってしまうためかな?)、など注意事項を教えてもらってG6へ。

いよいよ当日!カウンターに到着するとフレグランススペシャリストの方が暖かく出迎えてくれて期待と興奮が高まる。

コンサルテーションの流れは10年前と変わらずざっとこんな感じ。

1.イメージから選ぶ好きな香りのジャンル


まずは、イメージを見ながら、4つのユニバース(フレッシュ、フローラル、オリエンタル、ウッド)の中から好き嫌いを伝える。「フレッシュだったら、例えばさわやかな柑橘類や雨に濡れた芝生…」とスペシャリストさんの具体的な説明がとても分かりやすい。

それぞれこんな感じ(記憶のみが頼りなので間違っていたらごめんなさい)

1: Fresh
シトラス、ラベンダーなどのアロマ、芝生などのグリーン、スズランとかの可憐なお花、アクアなど
女性像:アクティブ、ナチュラル、アウトドア

2: Floral
バラやピオニーなど大輪のお花、ベリー系果実、メテオリットのようなパウダー、アイリス、スミレ
女性像:おしとやか、清楚・可憐、内に秘めたる情熱

3: Oriental
バニラ、チョコレート、ジャスミンなどの香り豊かな白いお花、スパイス
女性像:グラマラス、二面性、センシュアル

4: Wood/Cypre
木々の乾いた香り、苔、薪、森林
女性像:個性的、自立してて芯がある、カリスマ

フローラルが最優先で、追加要素にオリエンタルが必要なタイプと、思いこんでいたけれど違った。バニラと白いホワイトフラワーが大好きなので、むしろオリエンタルがベースということが、お話するなかではっきりと見えてきた(白いお花もフローラルかと思っていたけれどオリエンタルの分類らしい)。

次に好きなのもこれまた意外で、アロマ/グリーンなどのフレッシュ。フローラルはニュートラルに好きで入っているのが当たり前という感覚だったけど、2つのグループより偏愛度が低いことに気づく。

2.香料ごとに好きor苦手を選別

白い陶器のベルの内側に吹き付けられた香りのエッセンスを2つずつ比べて、好き/嫌いに分けるのが次のステップ。全部で10~12種類くらいあったかな?

結果は前項の印象と完全に一致。断トツ良かったのがオリエンタルとホワイトフラワーで、やはりベースがオリエンタルグループなのが明らか。次点でグリーンっぽいアロマやシトラスなどフレッシュグループが続く。苦手なのも案の定シプレとウッド。

試香用の陶器にははエッセンスの名のラベルがついているので、見ようと思えば見えるけど、先入観を取り除くためにブランドでテストするのが吉。なんのエッセンスかは考えずに、感覚で答えてもちろんまったく問題なし。

結果を受けて、スペシャリストさんが「これは必ず入れて・・こっちはマストではないから優先度下げよう」などとある程度方向性を定めてくれる。あたかもパーソナライズされた香りを調合するみたいでわくわくする。

3.パーソナルな香りの記憶

ここで記憶を紐解いていく。まずは幼いころ(10歳くらいまで)の記憶に残る良い香りを教えてください、と問われる。

私の場合、

  • 幸せな幼少期の香り:パンケーキの匂い全部。溶けるバター、小麦粉、メープルシロップや蜂蜜

  • 家族で団らん、旅先の香り:休みに訪れるヨーロッパを想起するもの。ホテルのロビーなど密室に充満するパウダリーな香り。ゲラン/シャネルの香水そのものが旅の始まりのわくわく感と結びつく

といったようなことを答えた。結論ありきな回答(香りのエッセンスに結びつきやすい)によりすぎている気もするが真っ先に思い浮かんだのがこれ。以前受けたときは「幼少期に住んでいた中東を想起するもの。インセンスや食欲をそそるスパイス」と答えた記憶があるが、今日はスパイスって気分でもなかったので割愛。

次に、食べ物はどんな味付けが好き?といった質問も

  • 基本的には素材を生かような薄味

  • 和食で砂糖をキャラメリゼするのが好き

  • やはりパンケーキ(笑)。バター/小麦/メープルシロップの中毒

  • ニンニクなどのスパイス

「わかりやすい!いいですね!」と褒めて(?)くれるスペシャリストさん。話してておなかがすいてきた。

4.香りを使用したい場面

今回の選ぶフレグランスをどんな場面や目的で使用したいか?という質問に対しては

  • 人に与える印象というのは気にしていないこと

  • 拡散するような外交的な香りではなく、自分だけの愉しみのために使いたい

  • しばらく子どもと二人きりになるので家でくんくん嗅いで癒されたい

  • ドラマチックな香りの変遷が楽しめると嬉しい

といったことをお伝え。

5. 愛用の香り

長年使っているフレグランスはどんなものがあるか具体的に教えてください、と尋ねられる。

セレクトに共通点があるのを自覚していたのでここは丁寧に伝えた。もちろん無理してひねり出すことはないけれど、スペシャリストさんは他ブランドに及ぶほど知識が豊富なので、なるべく具体的な商品名を出すのが良いと思う。

私の場合、10年以上使っているものはParfum de Nicolaiのとあるフレグランス2つ(これについては後日書きたい)、次いで比較的長く愛用しているものだと、CHANELのBois des IlesSerge LutenseのFéminité du Bois、そしてGuerlainのAprès l'Ondéeがあることをお伝えした。

  • 百合・イランイラン・チュベローズなど香りが豊なフローラルから始まってバニラで終わるものが鉄板

  • フローラルのみのシングルノートだと、どうも芳香剤やルームフレグランスのような感じがして肌になじまない

  • 基本的にドラマティックな香りの変化を楽しめるものが好き

というのも補足。

スペシャリストさんは、挙げたすべてのプロダクトをご存じのようで話していてとても楽しい。ゲランだけでもアーカイブ含め膨大な種類があるのに、この膨大な知識量には舌を巻く。

余談だけど、Nicolaiはゲラン一族に生まれた女性ながら、女性という理由(本当かな?)でゲランの調香師になれなかったお方、という話でひとしきり盛り上がる。

挙げた香りすべて、くぐもった暗さがある点でゲランの特性と一致しているとのこと。たしかに!

6.最後に香りの提案

スペシャリストさんがいよいよ5種の香りをセレクト。ディスプレイされているフレグランスからムエットに吹き付けてくれている。見ようと思えば何の香りか見えそうだけど、次のステップはブラインドで香り立ちを試すことなので、敢えて目をそらす。

ムエットと肌(腕に5箇所ものせてくれた!)での印象はかなり違うとのこと。ムエットだとラストノートはやはり出にくいみたい。つけたて、10分後、20分後と、話ながら肌の上で香りだちを念入りにチェックしてくれるのが嬉しい。肌質(水分量かな?)や体温によってきれいに出やすいのとそうでない香りがあるらしい。

「レジェンダリーシリーズもを入れるか迷ったけれど、テーマがひとつの方向に定まってしまうため、エッセンスがミックスされて複雑性の高いL'Art et la Matière(ラールエラマティエール)を中心に選んだ」とお話してくださった。

私が説明する間でもないのだけれけど、ラールエラマティエールはその名の通り芸術性(art)と素材(material)を追求したゲランの高級ライン。置いてある店舗も限られている。最後にフレコンを受けたときは、このラインはまだなかったような気がするので実は提案を期待していた(当時、ドゥーブルバニーユとクルーエルガーデニアがとても人気だったのは覚えているけれど、少なくとも今ほどのバリエーションはなかった)。

ラールエラマティエールでは、それぞれの香りをビジュアライズするようなアート作品が割り当てられているのが面白い(その作品を着想源に香りをクリエーションしたわけではなさそう)。

出てきたのはこの5つ!事前にこのラインをちょっとだけ予習していて、最後の提案で出てくるであろうと予想(期待)していたのもあったし、全く予想していなかったのもあった。楽しい。

セレクト1: Joyeuse Tubereuse(ジョワイユーズチュベローズ)

  • 青さのあるグリーンから始まるチュベローズ。ベースにはバチバーやサンダルウッドにバニラ。

  • イメージは光に満ちた印象派。モネの作品

  • 最初のグリーンの香り立ちが私の肌の上では少しきつく、トップノートにちょっと尻込み。スペシャリストさんもその点同意。

  • 時間が経つとチュベローズとバニラが出てきてクリーミーな印象

  • (ここからは帰宅後の話)5時間後:つんとした(芳香剤っぽい?)グリーンがまだ残っている。バニラもほのかに感じる

  • 7時間後:白いお花のグリーン味がいい感じに柔らかくなった。バニラとサンダルウッドがうっすら

「好きな組み合わせだと思うけど、最初のグリーンに耐えられるかと、最後に出てくるベチバーのウッディさが気に入るかどうかという問題がありますね」とスペシャリストさん。

セレクト2:  Jasimin Bonheur(ジャスミンボヌール)

  • 影のない軽やかなジャスミンをベースにフルーティな要素とパウダリーなアイリスをプラスした作品

  • 色彩にあふれたアンリ・マティスの作品のイメージ(そういえばマティス展が始まる)

  • 最初から一貫してきれいにジャスミンが出ていると褒められる(?)

  • 最後はアイリスを感じるパウダリーフローラルになるとのこと。確かにゲランらしいパウダリーを感じるのはそこはかとない安心感。

  • 5時間後:いちばん香り立ち弱いかも。クリーミーなジャスミンが継続

  • 7時間後:うっすらとしか香らないけど意外にもジャスミンが残っている。アイリスのパウダリーさはそれほど感じない

「間違いなく最初から最後まできれいに香るであろう安心のセレクト。さすが好きなだけあって、白い花の香りがきれいに出る肌質。自覚してますね!」と持ち上げていただきまんざらでもない気分になる(笑)。「間違いない一方、白いお花の香水が多いので似てないものを敢えて選ぶのもありですね」と。

セレクト3: Angelique Noir(アンジェリクノワール)

  • ハーバルなアンジェリカ+バニラ。ビター&スウィートの二面性

  • グリーンから始まってバニラへと移行する意外性のある作品

  • イメージはチャイコフスキーの「白鳥の湖」。黒鳥と白鳥の二面性

  • 5時間後:甘ったるさがないバニラの香り。アンジェリカのほのかなグリーン味。好きぃ。

  • 7時間後:やや清涼感と苦味のあるバニラが残る。変わらず好きな印象

「アンジェリカの香りからバニラまで、肌の上できれいに香りが出ていて相性が良いです」と言ってくださり嬉しい。お花の要素があまりないのが意外だったけどゲランのバニラにはひたすら弱く、ラストノートにはひれ伏すしかない。

セレクト4: Mon Guerlain(モンゲラン)

  • 5種の中で唯一のnot ラールエラマティエール。もしかして気を使って価格にバリエーション持たせてくれたのかも!?(ラールが高いから)

  • ラベンダー、ジャスミン、バニラ、サンダルウッドのすべての要素がバランスよく調香された華やかな香り

  • なんでもアメリカマーケットを狙ったようで、香りの変化が少ないとか(アメリカ人はtopからlastまで変化のない香りを好む傾向、ヨーロッパはイギリス以外はその逆だとか)

  • 第一印象、拡散力がいちばん高いのとその華やかさにたじろぎちょっとピンとこない。パワーがないと乗りこなせないタイプ?その旨をお伝え

  • 5時間後:やっぱりちょっと苦手。バニラも感じるけどサンダルウッドを強く感じるのが苦手の原因かも

  • 7時間後:5種のなかでいちばんロングラスティング。主にバニラとサンダルウッドの存在感。ラストノートのほうが好き。

セレクト5: Cuir Béluga(キュイールベルーガ)

  • 肌馴染みのよいホワイトスエードに、イモーテルとバニラを加えた作品

  • スペシャリストさん曰く、「ちょっと挑戦のセレクトです!」とのこと。実は私はレザーが苦手なので "Cuir"という単語を見ると固まる(笑)。でも自分では出てこない提案してくれるの大好きだよ!もっとやって!

  • イモーテルの香りが強さを和らげてる印象

  • 男性的なレザーではなく、女性的なスエードのイメージ。スエードをまとって街を颯爽と歩くパリジェンヌ

  • 5時間後:意外にもとても心地良い香り。バニラが強い。でもAngelique Noirとは違ってもっとくぐもっているバニラ

  • 7時間後:こちらも長持ち。スエードとバニラの存在。シャワーを浴びると急にレザーが主張してきた

「これもきれいに肌の上で香りが出ていますよ」とスペシャリストさん。レザーの効果なのか肌なじみが抜群に良いのを私も感じる。比較的早くバニラを感じられるのも嬉しい。


まずはラールエラマティエールの4つに絞る

「これも素敵、あれも意外だけどうっとり」などと言いながら、最終的には、肌との相性が格別良いジャスミンとアンジェリカの2択に。甲乙つけがたく悩んでいたところ「ジャスミンは安心安定で間違いない。より守りに入るならこちら。強いていうなら、白いお花のフレグランスはたくさん持っていることが気にかかる。アンジェリカはより香りの変化を楽しめる。手持ちにないタイプだから新鮮な気持ちで楽しめそう。グリーンから始まるバニラだから意外と暑い季節も楽しめますよ」と。

このころにはもうスペシャリストのIさんに全幅の信頼を寄せていた私。助言に納得してアンジェリークノワールに決定!やったー!

たいてい使いきれないので、一番小さい50mlタイプをセレクト。ボトルをカスタマイズしたり名前の刻印を入れてもらったりしてお持ち帰り。中身がなくなったら8割くらいの価格でリフィル(ボトルを工場にもっていくので1か月ほどかかるとのこと)ができるそう。購入履歴があれば大丈夫だけど、保証書があったほうがスムーズなので保管しておいてくださいねとのこと。フレグランスに保証書とはね!さすがゲランである。

プレートだけハマーゴールドにしてみた
裏には刻印を

発売したばかりのジャスミンボヌールのサンプルも運よくストックがあったためありがたくいただく。

クラシカルな名香を揃えたレジェンダリーシリーズも気になっていたことを伝えると、「レジェンダリーの中なら、Jardin de BagatelleかJicky(Parfum)かなと思っていました」とムエットをくださった。JickyのPなんて…憧れである。

アンジェリークノワール以外の有力候補3つ

4. 感想と余談

香りの達人だったら、何度も受けるものじゃないのかもしれない。でも都度自分の好みや気分を見直したい私にとって、フレコンはやはり良いプログラム。「秋冬はパフューム選びたいですね♪」なんて話ながら、「秋に入るころにまた受けてもいいですか?」「ぜひ受けにいらしてください」などと会話して、1時間半に渡るの楽しい時間が終了。産後の楽しみがひとつ増えた。

5.帰宅後

7時間経って5種類の香りを比べるとどれも悪くない。帰宅して夫にもくんくんしてもらう。

「ラストノートって結局すべて柔らかい香りだからあまり嫌いってことないよね。トップノートの強い香りが好き/嫌いがその香水を気に入るかどうかの試金石じゃない?」と。フレグランスなんてほぼつけない夫が的確なことを言って悔しいけれどうなずく。いまの私のようにラストのサンダルウッドがちょっと苦手というパターンもあるけれどな。

でもたしかに、わずかな時間とはいえトップノートが肌の上でやたらキンキンでちゃうものは無理して選ばなくて良いのだね。思い返すと、それほど好みでないトップノートを堪えしのんで使っているフレグランスも若いころにはあった。体調いまいちなときには酔ってしまい、結局出番が少なくなるのがオチ。

そういった点でも今回選んだアンジェリークノワールは大大大満足。スペシャリストのIさん、ありがとうございました。ラールエラマティエールの沼にはまりませんように(笑)。早くも2本目を画策し始めて危険。

フレコンに興味があるみなさん、思い立ったが吉日ですよ!カウンターに電話してみましょう。

最後まで読んでいただきありがとございました。

※後ほど加筆・修正、画像の追加などするかもしれません。

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