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【CIID summer school】 Inclusive Designとは?

前回の記事から少し時間が空いてしまいましたが、デンマークのデザインスクールCIIDにてDesign for Inclusionのコースを受けたレポート第二弾です。5日間のコースは以下のような流れでした。こちらの記事で共有するのはDay1の概論部分です。

Day1:  Inclusive Design概論
Day2: ミニワークとリサーチ計画
Day3: リサーチの実行とブレインストーミング
Day4: プロトタイプ
Day5: ストーリーテリング

Inclusive Designの大事なスタンス

まず授業のはじめに、せっかちなオーストラリア人のクラスメイトが「要はInclusive Designって何なの?」という質問をしました。(それは5日間かけて学ぶことなのでは・・)と内心思いましたが、講師の答えは「Design forではなく、Design withという姿勢」というものでした。誰かのためにデザインすることやその成果物自体を指すのではなく、誰かと共につくっていくというデザインプロセス自体が重要なのだと繰り返し強調されていました。

対象ユーザーの違い

Inclusive Designという言葉自体は、UK政府によって以下のように定義されています。

"products, services and environments that include the needs of the widest number of consumers.” 

この"widest number of cunsumers"の中でも、特段Exclusiveな人たちのニーズを重視するという点も大きな特徴です。皆さんは「Exclusiveな人たち」と聞いたときにどんなことを思い浮かべるでしょうか?例えば、ジェンダーやセクシュアリティ、エスニシティ、障がいなどの特性を持つマイノリティな人たちかもしれません。Inclusive Designとは、上述したとおり「Design with」つまり彼らと一緒に多様でよりよい社会のあり方をデザインしていくということなのです。実際にこのコースでは、デンマーク在住の難民の方にご協力を頂きながらサービスを考えプロトタイプを作りました。これはまた次の記事で書きたいと思います。

デンマークの街で見られるInclusive Design

私がデンマーク滞在中にこれこそInclusive Designだ!と感動した事例を一つ紹介したいと思います。コペンハーゲンにはスーパーキーレンという公園があります。この一帯は中心地からは少し離れている比較的家賃の安いエリアで、移民や難民が多く住んでいます。実際に街中を歩くといろんな言語での看板がありました。

多様なバックグラウンドの人たちが暮らすがゆえに争いごとも多く、犯罪が起こったりと治安が悪かったのだそうです。そこで、この地域課題を公園というアプローチで解決するべくスーパーキーレンプロジェクトが発足しました。プロジェクトメンバーは地域住民に地道にヒアリングを行い、時には彼らの祖国に一緒に足を運びながら、「この地域を新たな祖国だと感じてもらうためにはどのような公園があるべきか?」を共に考え、コンセプトや計画をつくっていったのだそうです。結果として、この公園は地域住民の祖国の公園にあった遊具を集めた場となりました。例えばこれはモロッコの噴水です。

遊具のそばには、各国の言葉で説明が書かれたプレートもありました。例えばこれはパレスチナ・ガザのプレート。パレスチナの人々は一時帰国できた際に祖国の土を大事にもちかえる習慣があるのだそうです。そこで、この公園には実際にパレスチナから土を持ち帰って丘を作りました。

異国で暮らす心細さの中、祖国の懐かしいものを感じられる場があるというのはどれだけ心強いでしょうか。実際に日本の遊具もあり、私自身は一観光客ですがそれでも歓迎されているようでとても温かい気持ちになりました。イスラム圏の女性たちが井戸端会議をしていたり、若者が筋トレに励んでいたり、おじいちゃんたちがまったりしていたり、観光客が写真を撮ったりと多様な人々がおのおの楽しんでいる様子をみて、まさしくInclusive Designの事例だと思いました。スーパーキーレンについて詳しくはこの記事が非常にわかりやすかったのでぜひ読んでみてください。 

Inclusive Designで心がけるべきこと

授業の中では、以下の5つのポイントが紹介されていました。私はこの中でも2の「共感」というのが重要だと感じました。

1. Focus on Human Values (人の価値観にフォーカスしよう)
2. Be Vulnerable (弱い立場になってみよう、共感しよう)
3. Baby step. Embrace a growth mindset. (少しずつ変化を起こそう)
4. Design with, not for (一緒にデザインしよう)
5. Consider the opposite (反対する人たちのことを理解しよう)

スーパーキーレンの事例も実際に祖国まで一緒に足を運び、彼らの価値観や大事にしていることに深く共感し共にデザインする「Design with」の姿勢があったからこそうまくいったのではないでしょうか。

以上、Inclusive Designの概論をコペンハーゲンの街中でみつけた事例と共にご紹介しました。次はプロジェクトの詳細を書こうと思います!

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