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米国はサステナブル先進国なのか?

地球環境を守るために私達に残された時間は7年強。
9月21~27日に開催されているNYのClimate week(気候変動週間)は、その事を広く多くの人に認識してもらい、行動を起こすための強化週間だ。

生活者のサステナビリティマインド

Climate Weekのような環境に関するイベントや活動、サステナビリティがブランドパーパスになっているブランドや、リサイクル商品などが多く存在する米国。また、あるサーベイでは3分の2の生活者がサステナビリティのためなら商品が類似商品と比較して25%値段が高くても構わないと答えている米国。そんな情報を日本から眺めていたので、さぞかし人々の生活の隅々にサステナビリティが染み渡っているんだろうなぁ、と期待していた。

実際にこちらに来て思った事。(あくまで、米国東海岸の一部NYでの現状)
環境の事を本当に考えて行動している人達はほんの一部だけ(の様に見える)。

例えば、スーパーでの野菜も個別包装をされているのは少ないが、顧客が店に置いてあるビニール袋にオレンジやらブロッコリーやら、何でも個別に包んでいく。パッケージフリーのスーパーなどは主流ではない。食べ物で言うと、プラントベースのお肉や、牛乳の代替品などは浸透しているが、理由としては牛の飼育を削減して二酸化炭素の排出を削減するために選択しているというより、健康的な食生活のために選択している方が多いだろう。また、飲料もJUST WATERのような紙包装が増えているのかと想像していたが、そんな事はない。マイボトルを持ち歩いている人もそれ程見かけないし、スタバで自分のカップにコーヒーを注いで欲しいとお願いしている姿もまだ見ていない。

そもそも米国の人口は日本と比べるとざっくり3倍弱だし、ほんの一部の生活者がサステナビリティなマインドで購買行動や生活をしているだけでも総人数が多いので、イベントやブランドもそれなりに盛り上がるのだろう。

もしくは、私が住んでいない西海岸の方は、歴史的な山火事など気候変動の影響をより受けているので、サステナビリティマインドが人々の生活に染み渡っているのかもしれない。

企業のサステナビリティ活動

企業のサステナビリティに関する対策は、日本と比較するとかなりアグレッシブに目標が設定され、実行されているので、最近の事例をいくつか紹介したい。

例えば、Amazon。
どの企業よりも二酸化炭素の排出量が多いので、その罪滅ぼしとの批判もあるが、下記の様な事を行っている。
1. 2040年までに二酸化炭素排出量を(ネット)ゼロにする事を目指し、2025年までに全て再生可能エネルギーでオペレーションが出来るように、全世界で90を超える太陽光発電や風力発電のプロジェクトが進行しており(発電所を購入)、現在68万世帯分の電力を賄えるくらいの発電力を持っている。
2. アマゾンのサイトでサステナブルな商品約2万5千点に印や詳細を付け、生活者に選択を促す。
3. 創業者のジェフベゾスが1.1兆円を投じて、「地球の未来を守る」ための環境基金を設立した。

次に、ジョンソン&ジョンソン。
2030年までに、約840億円を投資して地球と人の健康を改善する事を発表した。全てのブランドのパッケージを100%リサイクル、再利用もしくは生分解性の物にする事や、原料の透明性を100%にする事が含まれる。下記のブランドに関しては、それぞれの現状と何をどうするか、細分して目標が立てられて、その一部としては100%リサイクルされたプラスチックボトルにする事が含まれる。Aveeno®, Johnson's®, Listerine®, Neutrogena® and OGX®。

続いて、Tiffanyの事例。
最近は買収関係で話題に上がる事が多いが、2025年までのサステナブルゴールを発表している。サステナビリティにおける3PであるPeople, Product, Planet(人、商品、地球)のそれぞれのハイライトとしては、下記の様なもの。
<PRODUCT>(透明性が低く児童労働なども問題視されてきたダイヤモンドについて)鉱山の開示など100%のトレーサビリティーを目指す。
<PEOPLE>米国での経営層の人種分配を、全従業員の人種比率とほぼ同等とする。
<PLANET>温室効果ガスの排出をネットでゼロにする。


個人の活動

自分がどれくらいの二酸化炭素排出をしているかを簡単に確認できるサイトがある。例えばこちら。私も実際に計算してみたが、年間14.4トンを排出しているらしい。排出量だけ聞くと全くイメージが湧かないが、この量の二酸化炭素をオフセット(吸収)するために206本の木が必要という事らしい。本質的な解決方法ではないが、この排出量を吸収するためにお金を払いませんか?という二酸化炭素排出の売買が個人単位で気軽にオンラインから実施できるのも面白い。

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また、別の機会に書こうと思うが、私自身は今秋からFIT(ファッション工科大学)でサステナビリティファッションに関する講義をいくつか受け始めた。ファッション企業で10年以上勤務しているが、今迄にない変化の波を感じているし、常にファッションに対する後ろめたさや社会貢献的な要素を増やしていくべきと感じていたからだ。この授業を通して、米国のサステナビリティファッションの現状や理解を深め、個人の生活の中での改善だけでなく、よりインパクトが大きい事が出来ないかと模索中である。


生活者のマインドがサステナブルな方向に急速にシフトしないのであれば、積極的な企業側の努力によって、生活者が知らないうちに購入していた商品が地球環境に負担の少ないものだった、という状態になるしかない。米国企業の活動を見ていると、そちらの実現の方が個人のマインドセットを変えていくより早いのではないか?とも思えてくる。

ただ、地球の温度が1.5度上がってしまうまでに残された時間はあと少し。個人も企業も、米国も日本も、エネルギー業界もファッション業界も、全ての垣根を越えて今本当に動かなければ、自分達や子供達にこの素晴らしい地球で快適に生活していく未来はない。






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