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100年前のカワイイは、ただのカワイイだけじゃなかった、上野リチ展。

もし、撮影許可されていたら、たくさんのことを見落としていたかもしれない。そう思うくらいに、ひとつひとつの作品が魅力的で、心に刻みたいストーリーがいっぱいだった。

観に行った人たちは、どんなふうに感じただろう。

仕事柄、ここ10年近く、ニュートラルかモノトーンで、色で主張することの少ない環境に身を置いている。もともと色が好きだったのに、今は色彩感覚が薄れてきたように思う。

そんな「色」に飢えている私にとって、ものすごく刺激的な空間と時間。上野リチは「ファンタジー」という言葉を多用してたけど、まさにファンタジーに溢れていて、明るくて、楽しくて、朗らかで、優しくて、自由だった。

でもきっと、多くの人がこの展覧会場を後にする時には、ただの「カワイイ」ではないと感じたのではと思うのです。

激動の時代を生き抜いた女性

第一次世界大戦、第二次世界大戦を経験し、異国の地で生活をする。それだけでも想像を越える苦難があるはずなのに、どんな時も変わらず、むしろ”変わらない”創作を続けていた。

環境の変化、時代の変化によって作風が変わったり、その時々で気持ちの浮き沈みがあり、作品に反映されることはよく見かけていた。背景を知るとよりその変化に興味が湧き、気持ちを重ね合わせたり、その時代に、その場所を旅するように鑑賞することは多かったように思う。ただ、リチに関しては、ほぼ変わらない。変わっていないように映った。驚くほどに。

きっと、自分に厳しく、芯の強い女性だったんじゃないのかな。どんなに厳しい状況でも自分らしくあることに一途な姿勢に勇気づけられる、そんな作品ばかりだった。

約100年前のウィーンと京都の2拠点生活

リチは、ウィーンの裕福な家庭の4人姉妹の長女として誕生。ウィーン工芸学校でデザインを学んだのち、ウィーン工房で創作活動を始めた。同工房で出会った京都出身の日本人建築家上野伊三郎と結婚。ウィーンと京都の二つの都市を行き来する生活を送る。

ウィーンでは、ウィーン工房での仕事を継続し、京都では、伊三郎とのコラボレーションで住宅や商業施設の内装などを手掛けていた。当時の作品が並行して展示されている。日本の街の風景などを描いたスケッチを見ながら、ウィーン工房での商業用テキスタイルデザインを見ていく。その時々で、自分の居場所に染まりながら自らを解放しているかのよう。どちらが強いわけでもない。どんな時でも「リチらしい」。そのリチらしさに圧倒された。

現存していない空間デザインのスケッチも見ることができた。いくつか「バー」の内装を手掛けていて、そのバーがまたカワイイ。色鮮やかだけど、ポップではない。自然のモチーフからインスピレーションを受け題材にしていることで、上品で可愛らしく、チャーミング。全く色褪せず、むしろ新鮮さがある空間。もし今の時代にあったなら行ってみたい。こんな空間で飲むカクテルってどんな味だろう・・。デートには向いてないのかな、なんて。

さらに、建築家である夫の伊三郎の紹介で、建築家との交流もあったという。村野藤吾とは、旧日生劇場のカフェレストランで協働し、壁から天井までのデザインをリチが手掛けていた。ここでは一部分のみが展示で見ることができた。金箔の地に描かれたフラワーや鳥のモチーフは、大空間に実存していたらものすごい迫力だっただろう。

生涯を通じて、どこにいてもどんなことがあっても使命を果たす

異国の地で大戦を経験し、ウィーンと京都の2拠点生活を送り、途中、群馬や中国でも暮らしている。その間も変わらず創作活動を続けていたリチ。とても100年前の女性の生涯とは思えないほどのしなやかさに、ただひたすらに憧れを抱いてしまう。

リチは晩年、伊三郎とともに、日本の職人文化や技術を産業に発展させるためのインダストリアルデザイン教育と人材育成に勤しんでいた。生涯にわたり、自分の使命を果たし続けた女性。このたくさんのカワイイは、たくさんの困難を乗り越え、信念を貫き、生み出されたのだと知る。

リチデザインのポストカード
一筆箋と、ノート、シール

さて、
今回は、お土産が最高にカワイイ!!!のです。欲しいものばかり。ちなみに、分厚すぎて諦めてしまった図録も、購入する人が7−8割いた印象(みんなすごい!)。撮影、できなかったもんね・・。
写真は、私が購入したものの一部。
ちょっとワクワクしませんか?

「上野リチ展」は、北欧デザインや、ウィリアムモリス、テキスタイルや壁紙なども含めて、「色」が好きな人にはきっとワクワクする展覧会。と同時に、これから何か新しいことを始めようとしている人は、たくさんの勇気がもらえるはず。ちょうど、この情勢で海外赴任をしようとしていた勇気ある友人にもお勧めしました。

途中、子どもたちにも見せられたらと思って観ていました。作品も楽しめるし、こういう今だからこそ、リチの生涯を伝えられたらと。でもやはり、展示物の高さとか考えると難しいですね。。。いつか、子どもたちにも伝える機会を持てたらと思う、心に響く展覧会でした。

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