大学と企業の研究の違い
どうも、みほーくです。修士卒から企業で現在1年間、研究者として働いております。研究の分野としては基盤研究と応用研究の間です。臨床試験のようなものも担当します。
そんな私が大学と企業での研究の違いについて感じたことを以下にまとめました。
1. 結果を出すことの重要性
2. 何のための研究かの深い考察
3. テーマは複数が当たり前
4. 研究そのもの以外にも時間を要する
5. 研究資金が潤沢
1. 結果を出すことの重要性
私が企業に入って一番最初に感じた点です。商品や特許などが関わってくるため、欲しい結果を出しに行く試験というものがあります(特にお金のかかる臨床試験)。
例えば、薬や機能性食品の有効性検証試験がこれにあたるでしょう。薬の場合は、最終試験までに億単位の金額が使用されていることも珍しくないので企業側も必死に結果を出そうとしてきます。
(とはいえ、無理くり結果を出そうとするのはどうだろうと私は思います... )
それくらい結果に対してシビアな時というのがあります。また、研究プロジェクトとして期限が設けられているものもあるので、そういった時間的なプレッシャーを背負うこともあります。
基盤系の研究では時間的制約を感じにくいですが、商品開発に近い応用研究だと感じることが多いような気がします。
2. 何のための研究かの深い考察
「その研究をすることで解決できる課題は何なのか」、それを明確に説明できることが必要です。
大学の研究では、「先行研究ではAが分かっていなかったから新しくやる研究でAについて解明/検討してみた」みたいなパターンもありますが、企業では、圧倒的に研究によって解決できる課題や獲得した知見・技術によってどういったメリットが企業・世界が得られるのかに重点を置きます。
また、その研究により生まれる技術は、他社とは競合するのか、競合したとき勝てるのかを最初から考える場合もあります。
(最近は技術のみを自分の企業で作ってしまって、それを安定的に生産できる他企業に売るという方法もあるようですが...)
大学よりも研究にビジネスの視点が必要になります。個人的にはココが企業で研究をするメリットだと思っています。ビジネス視点を学びながら、研究が出来るなんて最高。
また、博士課程の人は違うかもしれませんが、修士卒の私にとっては「大学の時よりも遥かに、研究によって価値を創造するプロ意識が必要なんだな」と感じました。
3. テーマは複数が当たり前
利益を追求する企業にとって、基盤の段階の当たるか分からない研究テーマを数少なく取り掛かるということはリスクが高いです。そのため、多くの人が複数のテーマを抱えています。
大学では修士までだと、1つのテーマを深く取り組む人も多いのではないでしょうか。企業では優先度を考えながら、「この結果はいつまでに欲しいから、Aのテーマを優先、Bのテーマは今は文献調査」といった臨機応変さが必要です。
4. 研究そのもの以外にも時間を要する
企業の面倒くさいところの1つだと思います。大事な点ですが....
他企業や大学との契約、備品の購入手続き(大学よりも複雑)、固定資産税の計算などなど。
会社の制度がコロコロ変わるとそれに対応しなければならないので、ストレスに関じる人もいます。
5. 研究資金が潤沢
これは大きいメリットの1つです。特に大企業の場合は資金が潤沢で、「論文では読んだことあるけど、大学には置けなかった」という機器を買うことが出来たり、十分なN数、群数の動物試験・臨床試験を行うこともできます。
「資金的にこの試験は出来ないな」ということは、企業の場合、だいぶ減ると思います。もちろん、共同研究という形で特定の大学にしか設置されていない機器・ノックアウトマウスなんかも使用できます。共同研究にもお金がかかりますが、それも資金が解決してくれたりします。
まとめ
いかがだったしょうか。
ここで述べたことは、ほんの一部でしたが、ビジネス視点を学びながら研究ができるという点で企業研究職はとても魅力的だと思います。
また、ここでは詳しく述べませんでしたが、生産系、マーケティング系の部門と共同して仕事を進めていくことができるというのも、大学と企業の違いです。
研究をする上で新しい知見をもらえたり、こういったものなら作りやすい、消費者にウケルといったことも勉強できます。
ネガティブなことも書きましたが、企業の研究者というのは、あくまで「面白いキャリア」の1つだと私は思います。
その辺についても今後記事を書けたらなと思います。